第5話男の子

「あんた何してんの?」

「…」


3人組の真ん中のショートヘアーの女の子が、腕組み姿勢で僕を見下ろしていた。

この3人組は、学校でなにかといつも目立っている、知らない人はいないんじゃないかと言っても過言じゃない、確か…


「明日香、こののび太くんがどうかしたの?」

そう、沢流明日香さんだ。

「僕ちゃんボロボロだね。メガネ割れてるよ」

しゃがみこんで、まるで捨て犬にでも話しかけているような、パンツが丸見えのこのハーフ顔は…


「カレン、パンツ見えてるよ」


そうだ、坐忘カレンさんだ。

そして、もうひとりは鬼塚真希さん。

この三人は、学校のカーストトップ3。

なぜ僕なんかに話しかけるんだ?


「さっきさ、なんでやり返さなかったの?」

「う…」

なんと言う直球。

この沢流さんは多分、直球以外に持ち合わせていない。そういった目をしている。


「メガネちゃんはさ、やり返すとか以前に、やり返そうと言う気なんか、微塵もなかったよね」

「う…」なぜわかるんだ


「だってこの僕ちゃん、どうぞお好きにしてください。って感じだったもんね」

さっきからこの人は、僕の事僕ちゃんて、いや、同い年にはまるで見えないし、それにこの人が言うと、なんだか心地良い…


「あんた名前は?」

「あ、はい。守川茂です」

「私明日香。沢流明日香」

知ってる。

「あ、あの…僕に何かご用意ですか…」


「別に…」


そう言うと、明日香さん達は何も言わず、後ろを振り返り歩きだした。

そういや、明日香さん以外の二人は名前を言ってくれなかったな…


そんなことを考えていたら、突然土手の風が横殴りに吹いて、明日香さんのスカートがめくれ上がり、猫がピースした模様が入ったパンツが見えてしまった。

明日香さんは、直ぐに手でスカートを押さえ、後ろを振り向き僕の方を睨んだ。


「今見た!見えたの?」

そう強く言ったかと思うと、僕の前にまた駆け足で戻ってきた。


「い、いえ…」


他の二人が後ろでキョトンとした顔で見てるなか、明日香さんは、真剣な目をして僕に顔を近づけてきた。


「しょーじきに言って。み、え、た?」


「あ、はい。すいません、つい…」

この人にはウソはつけない。

この人の目を見ると、心臓を掴まれたような気になる。


「あはは、明日香、なにパンツでむきになってんの?」

「て言うか、僕ちゃん謝りすぎ(笑)」

「しー」

明日香さんは、なぜか後ろの二人に静かにして、と言ったゼスチャーをした。


「で、どうだったの?」


「は、はい?な、なにがですか?」


「今日の柄、どうだったの?」

さっきより強めに凄まれて、飲まれてしまった僕は、思った事を正直に言う事にした。


「ね、猫柄で可愛かったです」


「本当?」


「はい、本当です」


「良かったー」

なぜこの人は胸を撫で下ろしているのか、さっぱり僕には分からなかった。

そのやり取りを見て、後ろの二人は大笑いをしていた。


「あ、茂」

「はい」

もう呼び捨てですか?

「正直に言ったから、助けてあげる」

「え?」

この人は本当に、何を言っているのか、なにがなんだか本当にわからない。


ただこの時、明日香さんが後ろを振り向きイタズラな顔で言ったこの一言は、この日の僕の胸を少しだけ熱くさせていた。

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