第13話 純楽しみだけで
静かに目を開け、辺りを見回したりして現状解析する。始めは気付かなかったがどうやらわざとカーテンを開けたままにしているらしい。枕の少し手前にまで伸びてきている月明かりは青白く仄かな光と共にダイヤモンドダストのようにキラキラとかなり濃度の高い魔力を含んでいる。
相当、空気が綺麗なんだな。……いや、そういえば空に不自然な魔法陣の結界が……。……もしかして、対攻撃用術式じゃなくて大気浄化用術式……?
額に手をやれば冷えている上に瑞々しいハンドタオルが置いてある。熱があったらしい。
だが、もう体の暑さは感じられないのでタオルを傍にある桶に戻し、念の為に音と気配を消してリビングへ―――
「やっぱり起きてきたわね。」
ビクッ。
居ないと思っていたのに、扉を開けてドアノブを握っていたはずなのにいつの間にか抱え上げられてしまっている事に驚きを隠せないまま固まってしまう。女帝は気にする事なく歩いていくが。
「じゃ、ご飯作るからソファで大人しくしててね。それと、ソファの隣にある本棚に幾つか本を仕入れといたから好きに読んでね。テーブルの引き出しにノートPCも入れてあるから。」
有無を言わせないままソファに降ろされ、そそくさとキッチンへ消えてしまう。
よく考えれば、国のトップが何でここまで私にこだわるんだろう……。殺しと破壊以外に……脳のない私に。
考えても考えても分からなかったそれに終止符を打ち、ソファの脇にある本棚に手を伸ばせば最初に取れたのはファンタジー物の小説で、黙々と読み始める。
純楽しみだけで字を見るのは……久し振り。
カタッ。
「時雨ちゃん、ご飯出来たよ。そんなに気に入ったの?」
「え?あ、う、うん。」
また、気付けなかった。
「じゃあ持っていって良いから先にご飯食べよっか。」
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