第3話 よく掴めない夢の中で

 女帝を襲撃し、命と引き換えに両腕と右頬に傷を作った。とても硬かったけど、やっぱり私が壁に背を付けて血を吐いている間は油断していたのだろう。「何だ、寝込みを狙えば殺せそうだったのに」と意識を失う瞬間に思ってしまった。

 ふと意識が回復して目を開けると真っ暗な空間が広がっていた。何も見えないと思いきや自身の体だけは少し発光しているようにも見える。体を動かす事は出来ても早くは動けないし何処か重たい。水の中に居るような、ユラユラとした感じ。まるで自分の体じゃないような、そんな不思議だけど何故か落ち着いていて、少し気持ち悪い。

 あれから、目を覚ましてからかなりの時間が経ったのだろう。目を開けると今度は明るかった。とても、明るかった。

 一面白と水色。頭上から注がれる光に反射して地面となっている白砂や周りを泳ぐ白いシルエットのような魚達が虹色に輝く。生まれて初めて見たその景色はすっごく綺麗だった。私が知らないだけで、こんなに綺麗な物が沢山あるのかと、心の底から感動した。

 私は……どうして、暗殺者として生まれてしまったんだろう。

 普通の一般家庭に生まれて、両親にも恵まれて、こういう風景を見るのを目的に世界旅行とかに行けたら……どれだけ良いのだろうか。

 どうしてもそんな世界が欲しくて水面に手を伸ばした。

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