第2話 物好きな女帝を

「やっほー♪」

「おはようございます、閣下。お相手は如何されましょう?」

「貴方はそこの扉の前に立ってて♪私のお相手は……多分、天井裏に居るんじゃないかな?それとも……そこのソファの裏とか?場所は分からないけど、匂いで分かるわよ。ちゃ~んと一対一で相手してあげる。さっさと出てらっしゃい、暗殺者さん♪」


 やっぱりばれていたらしい。匂い……と言う事は、恐らく獣系かもしくはドラゴン系の種族だろうと当たりを付けながらストンっとシャンデリアから床に降りる。


「おー。こんなに殺意も敵意も隠れている上に私が場所を割り出せなかったなんて、初めてよ。……フフ♪何処までやれるのか、楽しみね♪」

「……陛下。」

「貴方はそこで見ていなさい。私が許可するまで、一切の行動と発言を禁じる。」


 階級の高そうな騎士は黙り、大扉の前に立ち、しっかりと此方を見据えている。

 ……嗚呼、確かに物好きな女帝陛下だな。


「さて、貴方はどんな戦闘スタイルが良いのかな?最近、よく暗殺を企てられて、襲われもするんだけど、皆弱くてね……。本当に楽しくない。どうか……楽しませて?そうねぇ……私に1撃だけでも当てる事が出来たらせめて安らかに殺してあげる♪そうでなければ、見せしめに苦しめて、かつ芸術的な作品にしてその動画を本国に送ってあげるわ♪」


 深呼吸をし、1歩で相手の懐に入り込んで挨拶代わりに大型のナイフを振り払い、勿論避けられる。


「ンフフ♪足の筋肉、かなり凄いわね。これは拷問のし甲斐がありそう♪」


 そのまま回し蹴りを繰り出すと共に銃口を向けて8発発砲する。少しでも消耗させる為に殺傷能力の高い棘だらけの散弾を打ち込むと8発中5発が命中し、女帝の両腕に中くらいの傷を作る。


「陛下!!」

「……フフ……ンフフフ♪貴方、本当に良い腕ね♪でも……あんまり時間を掛けると怒られちゃうの。ごめんね?」


 女帝の両腕に赤黒い鱗が生え、右手が鳩尾。

 そして此方は予想していなかった、鱗で硬くなっている左膝が左の肋骨に直撃する。


「ッっ……!!?」

「約束通り、安らかに一撃で殺してあげる。もしこの国で生まれていればもっと楽しめたのに残念ね♪」


 そのまま片手で壁に投げつけられる。

 18年間生きてきてこれまでの痛みを初めて感じた。

 見た事のない量の血が口から零れ、肋骨と背骨、それと床に落ちた時に右足の骨が折れ、恐らく肋骨が刺さった所為か息が上手く出来ない。


「あーあ、本当に惜しい。」


 女帝が近付いてくるのがフード越しに伝わってくる。

 せめて、せめてもう1撃。


「せめてお顔見せて頂戴……ッ!!?」


 女帝が私のフードを取ったその瞬間、仕掛けておいた毒ガスが女帝目掛けて放たれ、驚きながらも傷付いた腕で顔を庇い、2歩程後退した女帝に向かって位置すら確認せずに勘だけで両手拳銃を向けて意地だけで弾が尽きるまで撃ち放し、その反動で折れた肋骨が更に突き刺さってくるのも気にせずにコートの中に隠してあったサバイバルナイフを全て思いっきり投げ飛ばす。


「陛下!!」


 焦った声と女帝の呻き声を聞いて満足した私はそのまま大量出血と激痛で意識を失った。

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