七話 VS プテラ・サブラ
「こっ…此れは…間違いなくあの時と同じ輝きだわっっ!!!」
ミコトの身体が激しく光り輝きまるで金剛石のような硬さと美しさを兼ね備えたあまりにも神々しい肉体へと変質していった。
◇◇◇
突然だけど此処でワタシが簡単にミコトに与えた「神々の恩恵」について説明しておくわ。
ミコトに授けた能力名は「倍化」という能力よ。
美と豊饒の女神であるこの私の神性を現すうえで特に豊饒に由来する神々の恩恵で、実際の能力的には非常に単純明快。
あ、もう一度言うけどワタシは
では話を戻すわ。
その能力は文字通り「倍」にすることが出来る力なの。
本来の使い方は、例えば一つの林檎を手に取ると二つに、二つの林檎を手に取ると四つに、手に持った(触れた)物量が望む形で倍になるというもの。
鍛え上げれば手に伝うものに対して効果を連鎖的かつ一定量促せる「連鎖倍化」や一つの対象の一部を倍加させる「部分倍化」などの能力に昇華したり追加付与したりできるわ。
あくまで
他にもレベルや魔法効果などパラメーターや効力の一時的な倍化が可能で、戦闘面では主に仲間を「倍化」の能力でブーストさせて援護するバフ系のサポーターとしての力を発揮できるけど、単純な「倍化」では対象の大本の能力値が高すぎると「倍化」の倍率も格段に下がってしまうの。
一は二になるけど、あまりにも多い数、例えば千が二千、一万が二万になることは
其処等辺の倍率は術者のモチベーションや信頼度に大きく影響されてしまうの。
そしてこの「倍化」の力を最大限に高め昇華させた力こそが「
ワタシってホントは結構スゴイ、いや自分で言うのもなんだけどかなりスゴイ女神なのよ。
因みに単純な能力面のみの「倍化」の能力であれば初級魔法の「
言ってしまうと単純な「倍化」の能力は其の二つの魔法の上位互換のようなスキルな訳よ。
というかなんでワタシが解説やらなきゃいけないわけっ!?
この説明ももっと早くに説明すべきだったんじゃないの!?
二話か三話くらいのもっと早い段階で説明してよねっ!
ナレーション、アンタちゃんと仕事しなさいよねっ!?
『………』
いや、なんとか言いなさいよっ!!
『…いや設定とか説明とか…メンドゥー臭いジャン。』
なんだお前っ!?喧嘩売ってんの!?
『………』
だからなんとか言いなさいってばっ!!!
『…ナウ本編に…戻ればイィージャンッッッ!!』
◇◇◇
「でも只の「倍化」で此処まで凄まじい力は絶対に出せない筈…はっ!?まさか…」
そういえば「神々の恩恵」を与える際、少しでも何かの力になればとワタシの至宝「創生の聖剣」の力の一部を一緒に混ぜ込んだのを思い出した。
「いやいや、そんなまさかね…違う理がそんな簡単に、こんな直ぐに混ざり合うなんて奇跡、そうそう無い事だし…」
嫌な予感がする考えはどこかに捨てておこう。
ワタシは今までそうやって「成るようになるさ」の精神で神として生きてきたのだ。
今は只、目の前の光り輝く変態筋肉戦車の活躍を見届けることにしよう。
「ちょっとミコトっ!アンタホントに一人で大丈夫なのっ!?」
「ふ、任せておけ。今の俺にコイツ程度、
わなわなと震えあがる巨大なプテラ・サブラが両手の鋭い爪を突き立て、ミコトに向けて一直線に振り下ろした。
「ミコト危ないっ!」
「糞ッッッッッッ!!!!!!!!」
振り下ろされる巨大な白い爪を左右に上げたままの光輝く両手で掴み取り、まるで大地に根を張っているかのように不動の体勢をとり続けるミコト。
「GYAOッッッ!?」
「どうした?貴様の上腕三頭筋はこの程度の力しか発揮できないのか?」
捕まれた腕を必死に振りほど解くている。
「さぁ!楽しい楽しいメィリーゴーランドの時間だっっ!!!!」
掴んだ爪を素早く両脇に挟み、両足を大きく開き、腰を稼働限界まで捻じり込んだ。
「唸れっ!俺の
その言葉と共に巨大なプテラ・サブラの体躯が左にグラついたかと思うとそのままミコトを中心に宙を浮きながら大きく回転を始めた。
「GOAAAAAAAッッッ!?GYAOOOOOO!!!!」
「はっはっはっ!お前も楽しいのかっ!そうかそうかっ!!そうら、もっと
強い風が吹き荒れ、周囲の砂塵だけでなく岩をも吹き飛ばしながらミコトとプテラ・サブラの上空に風の渦が発生していく。
「あははははっははははっははははっははははは…」
ミコトの得も言われぬような笑い声とも掛け声ともとれる声が風切り音に紛れて聴こえてくる。
「何アレっ!何の風魔法!?」
上空に発生した竜巻が周囲の樹々を巻き上げ、凄まじい勢いで引き摺り込み竜巻の中で揉みくちゃにされていく。
勢いをつけた独楽のように超高速で回転するミコトと巨大なプテラ・サブラ。
辛うじてプテラ・サブラの体躯は視認できるが、ミコトに至っては高速回転しすぎて最早光り輝く肌色の塊にしか見えない。
「そうらそうら、
高速で振り回されたプテラ・サブラは竜巻に向かってまるで燕が低空から垂直に突き上がるように放り投げられ、上空の竜巻の中でバラバラとなった丸太や大岩と共にもみくちゃにされていく。
「GYAAAAAAAAAA!!!!」
「腑ーーーーーーーっっ!!!!!」
蹲りながら拳を押し付けるように地面に突いて回転の速度を落としたミコトがやがて制止し、体中から神々しい光を放ったまま両手を大きく広げて天を仰いだ。
「
先程まで僅かに存在していた雲が竜巻によって霧散し雲一つなく晴れ渡る晴天の中、上空に巻き上げられた巨大なプテラ・サブラが勢いの弱まった台風をその体躯で吹き飛ばしながら落下してくる。
「GYAっ…GAO…」
「糞っっっ!!!!!」
掠れた鳴き声を上げて完全に気絶した、赤児のようでありながらも、巨大な、それはもうあまりにも巨大なプテラ・サブラを、優しく包み込むようにキャッチし、慈愛の眼で見つめるミコトの姿が其処には在った。
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