四話 スパンキング・シェイプから生まれる愛もある

「あーーーーーんっっ!!ロヴンっっ!!ワタシ汚されたっ!汚されちゃったよーーーーっっ!!!」


走り去ったワタシはロヴンを求めて少し離れた管轄の女神の間に声を荒げながら飛び込んだ。


「急にこんなところまで来てどうしたの?大丈夫、大丈夫、アンタは既に汚れてるから。」


「うっ…ううっ……ロヴンのヴァカーーーーーーーっっ!!!!!」


「ハイハイ…アンタがこんなに泣き叫ぶなんて余程怖い目に遭ったんだね。一体何があったの?」


いじめるような言葉を掛けながらも優しく抱き上げてくれるロヴンはやっぱりワタシの大事な親友だ。


今度の神コンの時には一番いい男神を一人譲ってあげよう。


「うぅ…ぐすっ…あのね…全裸の召喚者にアレを…男のアレを向けられたの…」


「はぁ?一体どんな状況でそんな事になったんだか…アンタが妄りに誘ったりしたんじゃないの?」


『………み………ど…………め………』


「違うっ!違うもんっ!!アイツは最初から全裸だったんだよっっ!!!」


『……がみー……ど…だぁ…めが……』


「ねぇ…其れってまさかあの土煙を上げて向かってくるあの変態の事かい?」


「いやあぁぁぁぁぁぁあぁっぁぁぁぁっっっ!!!!!」


必死にロヴンにしがみ付いて泣き叫ぶフレイヤ。


抱きしめるロヴンの力が強まりロヴンに緊張が走った。あぁ…やっぱりロヴンはワタシの親友だ。


あ、ロヴンのいい匂いがする。


『めーがみーっ!!!此処かぁぁぁぁ!!!!!』


「其処の変態っ!止まりな!」


腰のレイピアを引き抜き空いた片手でフレイヤの肩をがっちりと掴んでレイピアを前に突き出すロヴン。


見た目も中身も私以上におしとやかで優しさに溢れる女神なのにこういう時は男前になるなんて…このギャップ差がもう…逆に可愛すぎるっ!!!!


向かい来る全裸の男はそのままの勢いで高らかに跳躍し三日月の様に身体を仰け反らせて弧を描きながら宙を舞った。


「なっ!?なんて美しい反り返りっ…きゃあっ!!!」


男が着陸すると周囲に土煙が舞い上がり、ゆっくりと一人の男が立ち上がった。


「ぎゃゃあぁぁぁぁ!!!!おそ、おそっ、襲われるぅぅぅぅっっ!!!!」


「おいフレイヤ、アレだっ!アレを見てみろっ!」


「へ?あれって…」


「よく見るんだっ!彼の僧帽筋が…輝いている!!」


あ、不味い。いやこれホントにマズい奴だ。


「彼は一体何者だっ!!!あの肉体…完全に仕上がっているっっ!!!!」


ミコトに目を向けるロヴンの顔がまるで初恋の少女の様に初々しく頬を赤く染め上げ鼻息を荒立てている。


「いやいや、あれは流石にロヴンの趣味からは遠く離れて…って何それキモっっ!!!!!」


其処にはミコトの頭だけを首に乗せたあまりにも巨大な筋肉の塊が左腕を反り返して蹲っていた。


「あ、アンタ…ホントにさっきのミコトなの?」


「何を言っている。何処をどう見ても俺だろうが。」


「全然違ぇよっっ!!!??」


何処をどう見たら同じだと思えるのか。


その姿は先程のミコトの約二倍近くの体格差があり、膨れ上がった胸板、丸太の様に太い両腕は千切れんばかりに血管の筋が肌に浮かんでいる。


太腿回りの筋肉は完全に割れており、脹脛ふくらはぎに至ってはまるで岩を詰め込んだかのように筋肉が盛り上がっている。


ミコトの象徴は…あれは最早凶器と言っていいだろう。


「此処に来る道中、新たな力を色々と試していたからな。」


「まさかあの力を使った結果がその大岩のような肉体なのっ!?」


「…どうやらフレイヤは最高の召喚者パートナーと巡り会えたようですね。」


「ですね。」?なんだろう…ロヴンがすごく御淑やかな振る舞いでミコトに近づいていく。まさか…


「貴方様のそのダイヤモンドのような煌めく筋肉…ああ…触れる度に貴方様の猛々しい内面的美力と神々の大いなる祝福が感じられる。」


ゆっくりと指先を伸ばし撫でまわすようにミコトの胸元を指先でなぞるロヴン。


「あぁ…なんて美しい肉体美っ!はぁ…はぁ…此れこそ正に神々の奇跡…」


あぁっ!そんな自然な流れで頬擦りまでして…ロヴンの口から涎が垂れていた。


そう、実はこのロヴン、極度の筋肉フェチなのだ。


しかも只筋肉の付いた男性が好みなだけではなく、ワタシが見る限り筋肉とは無縁の男でも偶に同じように目の色を変えている。正直彼女の趣味はどこが良いのかの線引きが曖昧過ぎてよく分からない。


「貴様…いや、貴方からは俺と同じ匂いを感じる。そして…なんて美しい尻だっ!!」


「そんな…ワタシなんて…」


急に後ろに振り向きクネクネと腰を動かしてミコトに対して尻を突き出すロヴン…


「その強調されたウエストとヒップの黄金比が生み出す曲線美カーヴィシャスが織りなす妖艶なクビレ、何より素晴らしいのは程よい肉付きが魅ているだけで弾ける様な柔らかさと瑞々しさを感じさせ噛り付きたくなる程の見事な桃尻。引き締まった大殿筋によって見事に重力に逆らうヒップアップする様は生命の美しくも猛々しい蠱惑的な生の育みを想起させる。この二つの外肛門括約筋が阻む谷間など…更に先へと続く最奥へ男としての性欲と本能が無意識に吸い込まれていくようだ…」


近いっ!アンタ、何処に鼻先突っ込めようとしてるの!?


それ以上はジャンルが変わるからホント止めてっ!


「おっと…すまない。しかし男の本能を剥き出しにさせる其れ程までに女体として完成された美尻は今まで見た事がない。最高の仕上がりだっ!!」


「そんなっ!!恐れ多い…貴方様の其の幾星霜の時を経て積み重なった最硬度の地層のように厚い大胸筋、そして遥か昔神々が目指した天空の丘のように雄大な僧帽筋、他にも言葉を幾ら重ねても讃え切ることのできない部位の数々…それに比べれば私のこのか細く華奢な尻などまだまだ…修行不足です…」


「そう謙遜するな。しかし既に完成された奇跡の美尻ではあるが確かにまだ肉体改良ボディビルによって新たな境地を見出せる余地はあるかもしれない。よし、貴方の其の奥床しさと更なる頂に挑戦しようとする勇姿に俺も全身全霊で応えよう。」


ミコトは腰を低く落とし両足を大きく広げて右手を、限界まで後ろに引き伸ばして構えた。


大臀筋だいでんきんに力を籠めろっ!!」


パァンッッッ!!!


「はあぁぁぁっっ!!!」


小気味よい破裂音と共にロヴンの甘い声が響き渡る。


「ちょっ!?アンタ!!!私の親友の尻を叩くんじゃないわよっ!!」


身体を乗り出して抗議するフレイヤに対し、待ったとばかりに手を突きだし笑いながら震えるロヴン。


「いいんだフレイヤッッッ!!!!!親友ならば…黙って其処で見守っていてくれないか…」


掠れるような甘い吐息を漏らしながらフレイヤを制止させるロヴン。


あー…駄目だこりゃ。二人とも完全にスイッチが入っている。


「そうだっ!もっと…もっと引き締めろッ!大臀筋だいでんきんだけでなく中臀筋ちゅうでんきんにも意識を集中コンセントレイトするんだっ!!」


「あぁっっ!こうですかっ!?こうですかっっっ!!」


パァンッッッ!!!


「もっとっっ!そうもっとだっ!いいぞっ!締めろっ!もっと締めるんだっ!良し、ナイスシェイプっ!」


パァンッッッ!!!


「あふっ!?どうですかっ!私、キレてますかっ!!」


「いいぞっ!!いいぞっ!!ハハハっ!大腿二頭筋と半腱様筋はんけんようきんがキレていやがるっっ!!!」


パァンッッッ!!!


「ワッ私…キッキレてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!!!!!!!!!!」


その瞬間、ロヴンの身体が激しく光輝き、白光が辺り一帯を包み込んだ。


「なっ!?何っ!?一体何が起こったのっ!?」


パァンッッッ!!!「あふっ!?」


「って、まだやってんのかいっ!今はそれどころじゃ…」


やがて光が収まりゆく中でワタシは、見てはいけない、いえ、これは絶対に映像化してはならない、あまりにも凄まじい光景が視界の中に写り込んだ。


パァンッッッ!!!「ひぐっ!?」


其処には、真剣な面持ちで腕を鞭のように撓らせて平手打ちする、


パァンッッッ!!!「んふっ!?」


「踵を上げろぉぉっ!!!」


光り輝く全裸の召喚者と


パァンッッッ!!!「んぐっ!?」


「そのまま尻を突き出して腰を落とせぇっ!」


同じ光を放つ太腿と赤く染まる尻を突き出した


パァンッッッ!!!「イっ!?」


「背筋を伸ばせっ!広背筋に意識を集中コンセントレイトッッ!!!」


耐え忍ぶ親友の全裸姿が…ってなんでアンタ迄裸っ!?


パァンッッッ!!!「ああぁっ!?」


「いいぞ!その調子だっ!」


其処に在った。


何度も鳴り響く破裂音とロヴンの喘ぎ声を聞きながら只々その光景を呆然と眺めていた。


此れは一体何のプレイ?余りにも特殊過ぎてワタシの知識では最早追い付いていけないよ。


「…はっ!ちょっとロヴンっ!?脱げてるっ!!アンタ今全てを曝け出してるからっ!!!」


意識を吹き返したワタシは咄嗟にボクシングのセコンドさながらの動きで肩に羽織ったローブを投げつけ、あられもない姿になって女座りでへたり込むロヴンの肢体を覆い隠した。


「此れからは脹脛周りにも力を入れると良い。スクワットだ。スクワットが貴方を更なる高みへと導くだろう。しかし驚きのナイスカットだった。良く頑張ったな…」


「いや、驚くとこ他にもっとあるでしょっ!?」


周囲には無残に散り散りになったロヴンの衣服の端切れが散乱している。


只お尻叩いてただけよねっ!?何がどーなったらこんな惨状になるのっ!?


「はぁ…はぁ…ご指導ご鞭…撻、誠に…あぁっ…ありがとう…んっ…ございました…」


「貴方こそ…惚れ惚れする程のナイスシェイプ&ナイスカットだった!」


その言葉と同時にミコトの身体が徐々に元の大きさに戻っていく。


「なっ…そのお姿は…一体何が…」


「どうやら力の効果がバンプ切れてしまったタイムアップのようだ。」


元の姿に戻ったミコトを見てロヴンがわなわなと震えだす。


そりゃそうよね。目の前に理想の男が現れたと思ったら、其れが実はまやかしだったなんて。


「そんな…まさか…そんな…」


両手で口を塞ぎながら顔を真っ赤にしている。


そりゃロヴンも怒るに決まっているよ。


「此れはもう…覚悟を極めるしかありませんね。」


そうそう…覚悟を決めてこの変態を怒鳴り散らしてって…覚悟?極める?は?一体何の事?


「祈願と称賛の女神ロヴンが我が理と権限を以て命じます。貴方と私が永遠に結ばれる事を許可ロヴします。」


許可ロヴします。って何でっ!?アンタ馬鹿じゃないの!?そもそも神と人との恋愛は基本御法度なのよ!!!」


「恋に障害は付き物。何により私の理の本質は禁断の愛の成就「禁じられた者同士の婚儀の許可ロヴ」です。如何に大神オーディンであろうとこの理は打ち崩せません。」


「まぁあの神は其処等辺かなり緩いけど…相手は只の全裸男なのよっ!?」


「何を勝手に話を進めているんだ。俺は今からこの僧帽筋で世界を救いに行くんだ。そうだろう?」


既に纏わりつくように抱きつくロヴンのおかげで大事なところが隠れているミコト。


「そんなっ…では私も力を貸しましょうっ!!!!一瞬で世界ごと滅ぼして私達の新たな門出を祝福するのですっ!!!」


まるで劇でもしているかのように腕を大出に振って天を仰ぐロヴン。


「ダメよロヴン!その前に隠さなきゃいけないところはちゃんと隠して!それに管轄外の世界に許可なく手を出したら其れこそワタシ達、この神々の世界アースガルズから追放されるわよっ!!!お願いだから落ち着いてっ!ねっ!ホントに落ち着いてっ!そしてちゃんと隠して!!!」


下乳が丸見えだからっ!今にも零れ落ちそうだからっ!


「そうだ。何事も常に優雅に!冷静に!だ。貴方の望みは一考しておいてやるから俺が世界を救うまで大人しくここで肉体改良ボディビルに励んでおくんだな。」


「そんな…あぁ貞淑な妻が夫の無事を祈りながら待ち続ける勇者プレイですか。いいでしょう。このロヴン、貴方様が彼の世界の魔王を討ち果たすまでこの地で貴方様を想い、待ち続けましょう。」

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