キス×アイドル×幼馴染×時給アップ交渉ラブコメ

 最近、気になることがある。


 幼馴染の太郎と大親友の明奈のこと。いや、キスのこと。


 2人は付き合っている。何を隠そう、私が仲をもった。


 太郎からも明奈からも、ファーストキスの報告があったばかり。


 気になり出したのは、それから。




 最初は、のろけやがってこのヤロー! 程度にしか思ってなかった。


 でも、今では2人のいうキスというものに興味が湧いて仕方がない。




 のろけといえば、キスのときより初手繋ぎの方が生々しかった。


 2人の恋愛はリアルなテンプレートといった感じ。


 順番に少しずつ2人の距離が縮まるのが分かった。


 双方からの報告で。




 あまあまな生活を送る2人を見てると、ラブコメを読まなくなった。


 だから最近は専ら現代ファンタジーやら、現代ドラマを物色中。


 あっ、これはWeb小説のはなし。




「さて、明日に備えて、あと1作品!」


 そのとき、私が検索したのは、『キス』だった。


 引っかかったのは、ラブコメだった。




 キスって、そんなに良いもの?


 カレシいない歴=年齢の私には分からない。


 けど、もしも2人が言うように良いものなら、味わってみたい。


 その前にカレシを作んなきゃだけど。




 翌日。よく晴れた。私は朝からデートした。


 お相手は明奈。2人して買い物。楽しい1日になるはずだった。


「明奈、最近べっぴんさんになったよね!」


「そんなことないよ! 桜子の方がかわいいじゃん」


 明奈のこの気立ての良さ。たまらない。


 太郎が好きになるのもうなずける。私とは大違いだもの。


 ま、ぶっちゃけ見た目はタメ張れると思う。




 でも、明奈の最大の魅力は、天使なところ。


 男心も女心もくすぐる立ち居振る舞いと言動の数々。


 くぅーっ! カレシがうらやましい限りだよ!




 明奈とのデートは順調だった。あの男が声をかけてくるまでは。


「あっ、そこの君。アイドルにならない?」


 スカウトだ。現実にいたんだ! 思わず写メっとこうかと思った。


「はい、なります!」


 えっ? 明奈、即答じゃん。そういう活動に憧れがあったんだ。


「じゃあ君だけ、こっちにおいで!」


 こうして、2人は何処かへと消えていった。




 なっ、何事かよっ! 明奈がアイドルだって?


 いやいや、めでたい!




 本当か? 本当にめでたいか?


 明奈がアイドルになることが、本当にめでたいか?


 よくよく考えたら嫉妬しかない!


 私だって、かわいいじゃん。


 なのに何故、幼馴染にもスカウトにも選ばれないんだ!


 不公平だ! ぜってー負けたくない!




 そのときにふと思った。


 昨夜出会ったWeb小説。ラブコメ。サブタイトルが『キスからはじまる……』。


 キスだ。明奈が急にかわいくなったのは、太郎とキスをしたからに違いない。


 そう思うと、私はいてもたってもいられなくなった。


 そして、気付いたときには太郎を呼び出していた。




 太郎のやつ、のんびり来やがった。


「おーい。バカ太郎ーっ! よだれ出てるぞーっ!」


 言うと太郎は慌てて口周りを拭った。


 見えるわけないじゃん。バーカ!




「あれ? 明奈は一緒じゃないのか?」


 ちょっと、殴ってやりたい。こんにちはくらい言え!


「大丈夫よっ、大丈夫、大丈夫!」


 私は猫パンチを喰らわせた。太郎も応戦し、相討ちとなった。




「一緒じゃなかったのか?」


「うん。途中から別行動」


 明奈は、アイドルになったの。恋愛禁止の!


 まぁ、そのはなしは本人から聞けばいい。


「で、どうすんだよ。これから?」


 決まってんじゃん。やることといえば1つだけ。


 太郎、お前はそのために召喚されたんだぞ!




「……ねぇ、バカ太郎。キス、しない?」




 そう。キスすれば私だってかわいく変身するはず。


「ははーん。さては人肌恋しくなったな、桜子くん!」


「バーカ。そんなんじゃないわよっ!」


「じゃあ、何で俺なんだよ?」


 あれ? なんでだっけ? なんでキスなんだ? の答えならあるのに。


 なんで、太郎なんだ? 分からない。私は悩んだ。




 私は、キスがしたかっただけ。山吹るためにね。


 それで太郎を呼び出した。太郎の立場だったら、なんでーってなるか。


 でも、どうしよう。答えなんて考えてないよ。


「しょっ、しょうがないでしょう。他に頼める人なんていないんだから」


 何とか、切り抜けた。何も考えてなかったとは思うまい。




 太郎の言葉には、面白味がない。まじめかっ! って言いたい。


 まぁ、そこが太郎のいいところだけどね。


「でも、俺には明奈という天使がいるんだが!」


 そうか。明奈がアイドルになるってこと、まだ知らないんだっ。


 かわいそうに。やっこさん、恋愛禁止中だよっ!


「大丈夫よ! 明奈のことは、大丈夫だから……。」


 本当のことは言えないけど、それとなく太郎に伝えた。


 これだけ言えば、分かんだろっ!




 あれ、分かんなかったの?


 太郎のバーカ!


「おっ俺、明奈に嫌われたのかぁ?」


「そんなことないよ。今日も満足度☆☆☆って言ってたわ!」


 ま、5点満点だってことは伏せておこう。


 でも明奈、どんなメール送ったのかしら。


 知りたい。キスの味と同じくらい知りたい。




 そう、キス!




「で、どうするの? して、くれないの?」


「何を!」


「だから、キス……。」


 伝わんないな。私と太郎、いつのまにこんなに離れてしまったの。


 取り戻さなきゃ。




「桜子。キス、するぞ!」


 太郎が言った。


 私はお気に召していないわよ。


 なに、その俺様な言い方。いいじゃない……。いただきます。


「待って……。」


 焦らしたつもりはないけど、太郎には効いているみたい。




「……はい、これ。これは、ビジネスキスだから。一応、渡しておくわ!」


 ビジネスキス! Web小説では無償だったけど。まぁ、何でもいい。


「毎度っ!」


「おおきにっ!」


 えっ? そこは断れよ!


 太郎はいつもああやってお金を取る。




 私は太郎に5千円札を取られた。くっ、帰りは完全徒歩。辛い……。


 いや、太郎に奢らせるか!


「じゃあ、すんぞっ!」


「おうっ!」


 私たちは向かい合い、キスをした。


 私にとってはこれがファーストキス。


 そのお味は、報告通りのいちご味。


 太郎ん家のおばさんの手作りジャムの味とそっくり。


 リップの感触がたまらない。もう、病み付き!


 私は、キスが終わったら山吹るんだという自覚を忘れていた。




 リップ同士が離れたそのとき、私のおっぱいがブアァァーンってなった。


 同時に、太郎が視界から消えた。


 えっ? どこ? 太郎はどこへ行ったの? おーい!




 いない。忽然と姿を消すってこのことね。


 どうしよう。このままじゃ、私、帰れない。


 私は、太郎を探す旅に出た。


 帰りの電車賃を得るために!




 原宿の街へ出た。違和感しかない。


 先ずは、みなぎるパワー! 


 まるで、柔道部の主将を投げ飛ばした山吹さくらのよう。


 それから、おっぱい。


 まるで、Iカップの山吹さくらのよう。


 さらに感じるのが、男の視線。


 まるで、周りが放っておかない存在感のある山吹さくらのよう。


 男だけでなく、女の視線も。


 まるで、ほとんど全ての人を奴隷化する山吹さくらのよう。




 つまり今の私、山吹っている。


 確変突入している。無双してる。


 でもおかしい。作中では、山吹れるのはキスした時間と同じだったはず。


 なのに私のこの感じ、一向に止む気配がない。


 あの小説、嘘だったのかしら。


 世界三大⬜︎⬜︎って、嘘つきね! 改名すべきよ。世界七十三億大⬜︎⬜︎にね。




 でもこの山吹ってる感じのこの力。


 誰かの役に立てたい。


 だから、困ってそうな人に声をかけた。


 それが、私の運命を変えた。


 こんなの、あの小説にはなかったこと。


 つまり、これのこと↓↓


https://kakuyomu.jp/works/1177354054896587067

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