第20話 陰謀とコカトリス その5
死んだコカトリスを、冒険者達と協力して解体する。
そうしながら、このモンスターの構造について説明した。
「ね? 目の大きさが大きいということは、それだけ視覚に頼ってるんだ。だからまずは視力を潰すこと。ただ、この時聴覚も潰したら、さっきみたいなでたらめな動きになる。狭いダンジョンの中で暴走させて、範囲魔法で仕留めるならいいけど……こういう広いところだと、不規則に動かれたら厄介だね」
「なるほどお……」
「勉強になります」
みんな、俺の説明をおとなしく聞いてくれる。
冒険者というのは、実力を見せると従ってくれる傾向がある。
俺のは実力と言うよりは、知識と工夫と応用みたいなもので、そんな大したものじゃないんだけどな。
「や、やっぱりすごい人でしたセンセエ! あと、クルミのかつやく見ましたか! バーンて! バーンて石をなげたら、ピカピカーって!」
「うん、クルミのスリングの腕前、かなりのものだね。あれは天性の才能もあると見た。あれだけ危険な戦闘の中で、きちんと俺の指示通りに投擲してくれるんだから」
「えへへ。でもセンセエ、あんまり危険じゃなかったです? なんか、びっくりするくらい、センセエの思うとおりにおわったみたいな」
「そうだね。危険は危険だったよ。でも、知識と、情報と、準備。その全てが整っていて、クルミという優秀な射手がいた。これだけ揃えば負けることはないね」
「むふふ、てれちゃうです」
クルミが頬を赤くしてニヤニヤしている。
彼女の様子は、他の冒険者達にも好意的に映ったようだった。
「ほんと、すごいぜおちびちゃん!」
「リス尻尾の子、スリングすごい腕前だったねえ。どこで習ったの?」
「もしかしてオースさんのお弟子さん? いやあ、さすがだなあ……」
クルミだけでなく、俺も褒められているような?
いやいや、俺はそこまででは。
『わふん』
「ブラン、謙遜も過ぎると嫌味になるって、難しい言葉知ってるなあ……」
『わふわふ』
「活躍の場が無かったって……たかがBランクモンスターに君が出てくることないだろ? この後、もっとえげつないのが出てくるから。バジリスクは任せちゃっていい?」
『わん!』
頼もしいお返事をいただいた。
SSランクモンスター、マーナガルム。
できれば彼の力を使わないで済む事態っていうのが理想なんだけど……。
Bランクのコカトリスで、ドワーフの村がこれだけの危機的状況になっていた。
他はもっと洒落にならない状況になっているだろう。
「次の仕事の準備もしなくちゃ。次は死の視線を使う、カトブレパス、と。死の呪い対策は、この間ブランが取ってきてくれたマンドラゴラで対処できるな。助かるなあ……。マンドラゴラ高いからなあ……」
今後の計画を頭の中で練りつつ、必要な道具と準備を指折り数えていく。
よし、どうにかなりそうだ。
ブランにまたがり、クルミを後ろに載せ、すぐさま旅立つ俺達、モフ・ライダーズなのだ。
「すぐ行くんですか!? ちょっと休んでいけばいいのに」
「いや、困ってる人がまだまだいるからね。今日はあとひとつ、カトブレパスを片付けてから休むことにするよ。幸い、みんなからの情報のお陰でコカトリスは苦労なく倒せたから。これも君達のお陰だよ」
「あれを苦労してないとか……」
「本物のSランクだこの人……」
大げさだなみんな。
彼らが石化したのは、彼らが未熟だったからではない。
ダンジョン外のコカトリスに対する情報が不足していたせいだ。
俺と同じだけの情報を得ていたら、さほど苦戦はするまい。
だが、褒めてくれるのはありがたい。
モフ・ライダーズはできたばかりの小規模パーティだから、評判が上がれば指名での仕事も受けられるようになるはずだ。
「ありがとう! みんなも気をつけて帰ってくれ! それから、俺の伝えた知識は、できるだけみんなに伝えて欲しい! よし、行くぞクルミ、しっかり掴まってて!」
「はいです!」
クルミが後ろにピッタリとくっつく感触がする。
では出発!
ブランは一声吠えると、猛烈な勢いで走り出したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます