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第11話 新パーティ結成 その1
冒険者の街アドポリス。
いわゆる、都市国家というものだ。
この街一つが街であり、国でもある。
ということで当然、入国審査があるわけで。
「うわあ君でっかい犬だなあ」
検問担当の兵士が、ブランを見てびっくりした。
犬ではなくて、SSランクモンスターのマーナガルムなのだけど……。
見た目がまんまでっかいサモエドだもんな。
極めて強力なモンスターなのに、あまり警戒心を抱かれない外見というのは凄い。
「それに君、ショーナウンウインドのメンバーだったよね」
「ああ、そうです。俺はオース。ちょっとパーティを出まして、今はこのブランとクルミで新パーティを」
「ああ、なるほど。独立したってわけだね。こっちにはまだそのパーティが登録されてないけど」
「これから申請なんで、帰ってきたんです」
「あー、なるほど。そっちの子は獣人? 尻尾がモフモフしてて可愛いねえ」
「ダメです! クルミの尻尾を触っていいのは未来の旦那様だけです!」
「おお、そうなのかい! それじゃあ仕方ないなあ」
兵士はニコニコした。
ブランもクルミも、モフモフしていて警戒心を抱かせないからかな?
なんだか妙にフレンドリーだ。
これがモフモフ効果……。
「では入国を許可します。出国と次の入国は、パーティ証を持ってきてね」
「はい、ありがとうございます」
無事に、アドポリスへ入ることができた。
「センセエ、パーティ証ってなんですか?」
「冒険者パーティのメンバーとランクが記録されたカードのことだよ。パーティリーダーが持つものなんだ」
「へえー。じゃあ、クルミは冒険者になるですか?」
「一応ね。俺もせっかくだから、あちこち旅してみたいし」
『わんわふん』
ブランも同じ気持ちらしい。
テイムされたのをきっかけに、暗黒の森を出て世界を見て回りたいそうだ。
クルミとブランは、街の中が初めて。
見るもの、聞くもの何もかもが珍しい。
『わふー』
「強いにおいがするって? ああ、それはね、屋台がやってるんだよ。今は昼時だから、みんな外に出てきて、屋台やお店で昼食をとるんだ」
街中ともなれば、ブランに乗っているのはとても目立つ。
俺は彼から降りて、クルミとともに歩いていた。
「俺達もお昼はまだだったから、ちょっと食べていこうか?」
「賛成です! クルミ、おなかぺこぺこです!」
決まりだ。
屋台の中には、ペット用の食事を買えるところもある。
さて、どこで食べようかな。
手持ちはそう多くないけれど、バジリスクの粉を売れば結構なお金になる。
節約する必要はないな。
「よーし、じゃあ肉サンドにしよう。ブランには焼いてない肉を買ってあげるよ」
『わおん!』
ブランがぶんぶん尻尾を振った。
彼からすると、肉なんか狩りをして幾らでも手に入れられるものだ。
だが、俺がそれを与えるということが特別らしい。
「クルミは肉は大丈夫?」
「だいじょうぶです! ゼロ族、リスに似てるですけどお肉も野菜も木の実も食べるですから!」
そうだったそうだった。
あくまでリスに似た獣人というだけで、厳密には人間に近い。
だから食べられるものも似ているのだ。
屋台に寄ると、そこの主人がブランを見て目を丸くした。
「でっかい犬だなあー……!」
「でしょう。モンスターにだって負けないんですよ」
「そりゃあ凄いなあ……」
ご主人はポカーンと口を開けながら、パンで肉を挟んだものを作ってくれた。
申し訳程度に、葉野菜が挟み込まれている。
これに甘辛いソースを掛けて食べるのだ。
「これこれ!」
「す、すごくいいにおいがするですよ! 食べていいですかセンセエ!」
「もちろん!」
「はむっ!! ん、ん、んまあああいですうう!」
クルミが興奮して飛び跳ねた。
ここまで喜んでくれるなんて、ご馳走した甲斐があったっというものだ。
ブランも、肉の塊にかぶりついている。
『わふん』
「野生動物よりも肉が柔らかいだろ」
『わふふん』
「え? なんか食べやすすぎて堕落してしまいそうだって? 変なことを気にするなあ」
そんな心配をしながらも、ブランは肉をあっという間に平らげた。
彼曰く、ブランほどのレベルのモンスターともなれば、魔力を吸収するだけで生きていけるのだそうだ。つまり、食事は必須ではない。
趣味で物を食べているようなものだ。
食事を終え、食後のお茶を飲み、英気は十分養った。
さあ、冒険者ギルドへ。
「パーティ証を作ってもらいに行こう!」
俺は二人を率いて歩き出した。
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