怖いかどうかは分からないんだけど。

 私のお婆ちゃんがさ、オレオレ詐欺?アレに騙されてさ。

 凄い金持ちって訳じゃないんだけど老後に困らない位お金はあったのね。

 ちょっとボケてきてて。まあ見事に引っかかった訳。それで通帳からお金なんて壱円も残しませって勢いでお金取られちゃって。私も家族っていうか親戚はお婆ちゃんしか残ってないからそりゃムカついた。

 でも、お婆ちゃんは私に「大丈夫かい、お金は平気だったかい?」なんて言うから婆ちゃん騙されたんだよ何て言えないじゃん。まあでも貯金なくなって無一文になったんじゃなくて助かったんだけどね。婆ちゃんは古い人でさお付き合いがあるからっていろんな銀行とか郵便局に口座を何個も分けて持ってたのよ。

 そんである日、土日出勤の後で平日に振替休日があったの。ばあちゃんはその日定期的に行く健診で病院に送ってから家でお昼食べてぼーっとしてたら電話が鳴ったの。ところで知ってる?YouTubeとかでさ防犯対策メッセージみたいなの、警察が公開してるのね。この電話は防犯対策のために留守電にしております、みたいな感じでさ。じゃあ、逆は?

 自分でも笑うくらい声を弱々しく電話に出てさ。相手の言う事にうんうん返事してみたの。そしたら今から人がいるから通帳渡せっていうの。来た奴の後つけてけば犯人見つかるんじゃないかな?って思ったの。まあ見つけて金返せ何て言っても返してはくれないんだろうけど。でもムカつくじゃん、どんな奴なんだよって思うじゃん。

 とりあえず着替えて、普段は被らない帽子をかぶって伊達眼鏡をして家の前が良く見える所にこっそり隠れた。そしたら知らないスーツ姿の若い男が家の呼び鈴鳴らしてるわけよ何度も何度も鳴らして誰も出ないと玄関のドアを蹴って立ち去ったのよ。

 玄関のドア蹴られてそりゃムカついてるけどチャンスじゃん。尾行なんてしたことないけど。まあ行ける所まで行くかって思ってたらスーツが厚いのか着慣れてないのか、まあ後者っぽいんだけど上着脱いで大声で電話しながら歩いてったのね。

 チャンスじゃん。ジャケット片手で持ってるのも含めて分かりやすいよね?ラッキーと思ってついてったの。今から一度戻りますとか大声で言ってるの。詐欺師集団の本拠地わかるじゃんラッキーって思って。

 いや何がラッキーか分かんないわ。まあでもその時はそう思って、上野の汚い雑居ビルをまで着いて行けたのよ。

 エレベーターで階数を確認する所まででその日は終わったんだけどね。だって婆ちゃん迎えに行かなきゃいけないし。でも、その日以降は留守電に速攻で切り替わるようにした。

 それから何となく仕事でその近くを通ったりすると何となく様子を伺ってたんだけど気付いたことがあって平日は人の出入りが多いのに土日はいつも一人しかいないのね、なんか派手目で良さげな服を着たおっさん。朝来て、電車が無くなる前に出ていく。途中で一人派手な格好の女の人が来るんだけど、これは後でデリヘルを呼んでたって分かった。だからデリヘルの人の振りをしたら入れるんじゃね?って思って準備をした。似合わないなー、と思いながら派手目な服を上野のABABで買って用意した。上野って他の物を揃えるのも割と簡単で便利だなーって思った。

 で、今日っていうか時間的には昨日かな。そいつんとこ行ったの。なんでかなって思ったんだけど婆ちゃんは騙された事に気付かないで私のお金の心配をしてくれるし。そんな婆ちゃんに本当のことは言えないし、婆ちゃんをそんな風に騙したのも気に入らないし婆ちゃんの心配はありがたいんだけどでも婆ちゃん騙されてるんだよって気持ちもなくなってくれないしスッキリしないしイライラするんだけどそれは婆ちゃんにぶつけるもんじゃないからスゲエ汚い笑いを浮かべて男がドアを開けて先導する形で私の前を歩き出したから説明書にはやっちゃ駄目って書いてあったけど首筋にスタンガンを当てて電気を流したらバターンって倒れた。小太りで重いおっさんだったんだけど頑張って引きずってズリズリ引きずってズリズリ引きずりながら何度か頭とか足とか腕とか色んなところにぶつかったけど目を覚まさないから安心して買ってきて手錠で手と足が動かないように拘束してたら目を覚ましてナンダオマエハナニシテヤガルサッサトハナセバカオンナとか大声を出すからテーブルに乗ってたノートパソコンでぶん殴ったら良い感じに当たったのか頬から血が出て口からも血を吐いてた、多分舌が切れたんじゃないかな。

 静かにしないともう一発殴るからって言ってオレオレ詐欺の金はどうしてんのとか色々聞いた。舌が切れてるっぽくて上手く話せなくなってたんで聞き出すのに苦労はしたけど、まあそりゃ貯金できるようなお金ではないので事務所の金庫にあるらしいし鍵を取り出したいから手錠を外せってバカなこと言うからもう一発ノートパソコンで殴って鍵の場所を聞いた。

 鍵を取るためにポケットをまさぐってる時にノートパソコンの画面が目に入ってらエクセルで電話番号集とか掛け子の割り振りとかマメに作ってあって、お婆ちゃんの名前が済に入ってた事に気付いた瞬間バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバキッて音がしてノートパソコンが壊れるまで顔面を殴ってた。

 おっさんが呻き声しか上げないからこれで電話の被害が減るかなって思ったんだけど思えばパソコン使ってリストを作ってるじゃんまだ駄目だなと思って小指から人差し指まで全部ハンマーでガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン殴って最後はグニュっとした気持ち悪い感触で吐きそうだったんだけど指が動いたらこいつは絶対悪いことするって思ってグニャグニャした指になるまで叩いた。

 おっさんが動かなくなってホッとしてその場を離れてなんも考えてなかったけど現金ばらまいてから逃げ出して通報しよう何て考えながらでっかい金庫から無造作に金を放り投げていると呻き声が聞こえたんで慌てておっさんの方に行くと芋虫みたいに這って逃げようとしてたんで腕も足も壊さないとって思ってハンマーをふるってたら事務所の電話が鳴った。事務所の電話が鳴るなんて私は知らなかったので道具を拭けるだけ拭いてバッグに詰めて事務所を飛び出した。

 とりあえず事務所を突き止めた時に使った真向いの雑居ビルの屋上に登って110番しようとしたらなんか見たことのある男が雑居ビルの前を走ってきたんだよね。あ、服装全然違うけど家に来た奴じゃん?と思って様子を見てたらおっさんの部屋に入ってったわけ。

 これなら通報は要らないかなって思ったんだけど、暫くしてそいつ部屋から出て来たの。何処に合ったのか私には分からないんだけどやたらとでかいリュック、なんていうの?登山に使うみたいな?あれを背負って出てきたの。やたら重そうにして。だから私も慌てて駆け下りて行って急に土砂降りの中を着いて行って同じネカフェに入ったの。

 念のためドリンクバーの所とかうろうろしてそいつが出てきたの見てリュックの中見たら案の定お金がぎっしり詰まってた。

 っていう話。

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