第136話 反政府組織7
☆
そんなことがあって、一週間が経った頃。
中央区では、さらに二人の人間が姿を消した。それなのに、まったくなんの手掛かり掴めないままで、アンドレイは困ったよと嘆いていた。
「ニコラス氏が私を名指しで犯人だと言い出したんだ。たまらないよ。こっちはこうして、夜な夜な君と探偵ごっこをしているというのに」
「俺は遊んでねぇ。むしろ邪魔だっての」
深夜の官庁街で、俺は無邪気なアンドレイと紙カップのホットコーヒーを啜っていた。街中にポツポツと設置されたベンチのひとつに腰掛けて、絶えず魔力による感知を行う俺の隣で、アンドレイはどうやら遊びのつもりらしい。
「そう?でも君、真剣に取り組んでるようには見えないよ?」
「はぁ?」
そんなことないはずだ。俺は、過去のどんな任務より真面目にやってる。と、思う。
「まず、合流してから一度も君はこの場所から動いていない。かれこれ三時間ほども。毎日場所を変えているだけて、君が何かしているようには見えない。それに君は、とてもつまらなそうな顔をしている」
俺はアンドレイを睨みつけた。
「俺がなんもしてないわけないだろ。これだから一般人は困る。魔術師の基本は、一に忍耐、ニにも忍耐、三にも忍耐だ。テストにでるぞ」
「ほう。なら、君は今何をしているのかな?」
「索敵に次ぐ索敵だ」
「どうやって?」
「俺の魔力を大量に垂れ流して、中央区全体に行き渡らせてるんだ。言っておくが非常に繊細で緻密な魔力コントロールが必要なんだぞ。本来なら、横槍を入れた人間は殴って黙らせてやりたいほど集中力がいる。ま、俺には簡単だが」
と、答えてから、はたと気付いた。なぜならアンドレイが、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて俺を見ていたからだ。
「それだよ、レオンハルト君!我々一般人は、魔術に触れる機会も無ければ、魔術師と話す機会も無いに等しい。対話こそ重要であるはずなのに。近年軍部に増えている苦情の内容を知っているかい?一般人からの通報でもっとも多いものが、『怪しい人物を街中で見かけた』だ。そう、まさに今君がしているように、三時間も無言でベンチに座っている人がいれば、誰だって怪しいと思うものさ」
ニヤリと笑うアンドレイ。俺は逆に、盛大にため息を吐き出した。
つまりアンドレイは、一般人と魔術師の交流の無さが、お互いを脅かしているといいたいらしい。
確かに俺たちは、魔力を持たない人からの理解を得るのは難しい。何か得体の知れない技を持ってるんじゃないかと、常におっかなびっくりされている。
一昔前には、目を合わせたら殺されるだの、口を出したら石にされるなど、まるで怪物のように扱われていたことも事実だ。
「君が私に協力して、共に新政府立ち上げに関わってくれたのなら、そう言った誤解を減らすことができると私は確信している」
「俺にマスコットになれって?金獅子ぬいぐるみでも売るつもりか?」
「君がそうしろというのなら、そういった宣伝もしようと思う」
「冗談じゃねぇ」
俺は吐き捨てるように言って、アンドレイの方へと向き直った。相変わらず自信に満ち溢れた顔をしているアンドレイは、冬の寒さをものともしない、真の強さを感じる。
もうひとりの候補者であるニコラスを、残念ながら俺は見たことないが、この瞳の輝きを超えることはないだろう。それはまるで、繁殖期のドラゴンのように、苛烈で情熱的だ。そして、攻撃性も兼ね備えている。
「何度でも言うが、断る。俺はこの国の未来に関わる気はない」
アイリーンは俺に、魔術師のために世界を変えろと言った。現に今、このナターリアはどこの国よりも魔術師に寛容だ。
俺の役割は、魔術師が魔族に負けないようにすることだ。ジェレシスをなんとしても止め、ほかの貴族たちが動けないほどの打撃を与えることを望んでいる。ただそれだけだ。
「諦めの悪いアンドレイに、ひとつリスクの話をしてやろう」
そう言うと、アンドレイは興味深そうな顔をした。
「ある集団の話だ。その集団はそれぞれに個性を持っていて、皆が皆の意見を聞ける協調性のある集団だった。誰の意見も尊重しあい、年長者を敬い、年下を気遣うことのできる、ある意味理想的な集団だ」
話しながら、俺はただ、記憶を反芻する。
「だが、その中にも特に秀でた力を持つ者がいた。最年少にも関わらず、誰よりも優れていた」
アンドレイの眉がピクリと動く。俺は目を離さず、淡々と話し続けた。
「ある時、その集団は決断を迫られた。たった一人の言葉を信じてしまった。普段なら熟考の後に意見を言い合うはずのところ、ただひとりの力を持つ者の言葉を鵜呑みにした。理由は簡単。お前がそう言うならそうしよう、とな」
結果はもう分かりきっている。
「その結末はあんたも知っている通りだ。言い出しっぺがひとり生き残り、ほかの子どもたちは死んだ。最後に散々怨みつらみを吐いてな。人は自分で決められないことを、自分よりも強い者に任せようとする。それも盲目的に従う事で責任から逃れようとする。もし俺がめちゃくちゃなことを言ったとして、誰がそれを止める?ナターリア国民は、俺が死ねと言えば死ぬぜ」
例えば魔族と戦うことになったとして、俺が先陣を切って叫ぶのだ。「俺と共に戦ってくれるか?」と。東部前線拠点でやったように、簡易的なエンチャントでもかけてやるとなお効果抜群だ。
『金獅子の魔術師』を盲目的に信じている人たちが、はたして何人いるのかは知らない。だけど、隣の人間が従うと、それは連鎖のように広まって、やがては国中の人々が俺の言うことを聞きはじめる。
ただの人間である政府ではなく、圧倒的な力を持つ俺に従う。
「あんたはそんなリスクを抱えて、国を納めようと思うか?やめといた方がいいぜ。俺だって、もう二度と誰かに恨言を言われて生きるなんてごめんだ」
感情がないとはいえ、過去の出来事は消せない。記憶にある限りそれは俺を苦しめる。
「君は、本当はまだちゃんと感情があるんじゃないか?」
アンドレイの言葉は優しかった。本当に俺を気遣っているようにも思えた。利害関係ではなく、対等な人として。
「さあな」
しかし俺には、ただそう答えることしかできなかった。
☆
それから二日後の深夜、俺たちは探していた『蠢く闇』と遭遇した。
その日は比較的いつもより寒さはマシで、でもその代わり雪になりきれなかった雫が雨となって降り注いでいた。
中央区西寄りのとある路地から、慌ただしく走る人の気配を感じた。
俺たちは雨を避けるように、官庁街に不似合いな花屋の軒先に佇んでいたのだが、俺は即座にその気配に気付いた。
「誰か走り回ってるな」
もちろん魔力による索敵に、音まで拾う能力はない。これは単に、二足歩行の人間(魔族なら魔力でわかる。同時に魔術師でないことも明らかだ)が、ふらふらと走っている姿がイメージとして浮かんだだけだ。
「ふう、やっと本命に出会えるのかな?」
「多分な。しかし、一体何から逃げてるんだ…?」
俺の魔力には、その人間以外の異物は感知されていない。シトシトとふる雨の細かな礫も感知できるのだ、例えば犬なら犬だとわかるはず(街中にいる四足歩行は大抵犬だ)だし、じゃあそいつは一体何から逃げているんだと思った。
「行くか」
「フフ、楽しみだ」
「あんたなぁ…あんまり不謹慎なこと言ってると、痛い目見るぞ」
「歴戦の魔術師の言葉は重みが違うね」
あくまで楽しそうなアンドレイは、はたして国家元首にしていいものなのか疑問だが、とりあえず急いで現場へと向かう。
俺の発動した〈転移〉は、ちょうどのところに俺たちを運んだ。円環が消えると同時に、路地から飛び出してきた男がアンドレイに飛びついた。
「た、たた、助けて、くださ…っ、アンドレイ議員!?」
そいつは綺麗なスーツを着込んだ、ひょろ長い体躯の男だった。涙目で顎をガクガク震わせて、アンドレイに縋りついた。
「どうしたのかな?」
「あ、ああ、あ、なんか、黒い影が…追いかけてきて……」
「黒い影?」
アンドレイが不思議な顔をして、路地の奥を覗き込んだ。興味があるのは大変結構だが、危機察知能力は皆無なようだ。
「〈空絶〉」
路地を塞ぐように展開した風の防壁。そこに、ドチュ、ヌチュ、ベチャと、粘着質な黒いタールのようなものが張り付いた。
「うひぃい!?」
「なっ!?」
思い思いの声を上げる二人の前に立ち、俺は路地の向こうに目を向ける。
闇が動いた。ドロリドロリと、それは確実にこちらへと迫ってくる。
「〈雷撃〉」
風の防壁を解き、向い来る漆黒の荒波へと足を踏み出す。そのまま速力をはやめ、空中へ舞い上がると同時に放った雷の魔術は、鮮やかな閃光を描いて黒い液体へと直撃する。
が、その液体は、俺の魔術を吸収して方向を変えた。アンドレイたちの方ではなく、空中で落下中の俺の方へと鋭く軌跡を描く。
「〈黒雷〉!」
ベチョと嫌な音をさせ、現れた黒い刃でもってそれらを弾く。そのまま体を捻って地面へ着地すると、足元に液体が迫ってきた。
「クッ!」
すかさず後退して避ける。粘着質な液体だが、その動きは獲物を追う猛禽ほども速い。
「アンドレイ、出来るだけここから離れろ!お前等まで巻き込んでしまいそうだ!」
「わかったよ」
仕方ないなぁとでも言いたげだが、アンドレイは男を連れてすぐにその場を離れる。黒い液体がすぐにその後を追うがそれを〈空絶〉で阻む。
「さて…テメェの正体、じっくり暴いてやるぜ!」
〈黒雷〉を構え、改めてその不気味な液体を観察する。事前情報は極めて少ない。人が飲み込まれたことや、魔術を吸収すること、そして、今わかったことは、割と動きが速く、形状も自由自在ということだ。
アンドレイたちを追うことを諦めた液体が、ヌルリと一箇所に集まった。そして、競り上がるようにドロドロと固まり、なんとも不気味な人型を形成する。背丈は俺と同じくらいだ。だが、その両腕は、腕というよりも鋭い刃の形をしている。
そいつがニタリと笑った気がした、次の瞬間。
「ゥグッ!?」
ガキィィイインと、高音質な音が響いた。そいつの腕と俺の剣が打ち合わさった音だった。速かった。この俺が一瞬、見えないほどに。
最速で放たれた剣戟を咄嗟に防げたのは、ただの勘と経験則に他ならない。
目の前の黒い人型が、またニタリと笑った気がした。
「〈強化〉」
魔術名のみで補助を受けつつ、身体強化を行う。相手が速いのならこちらもその分速くなればいい。今の俺ならば、たとえ打ち合いの合間だったとしても、何度だって魔術を行使することができる。
黒い人型が一度後退、すかさず追いすがり、間合いを詰める。辺り一面に雷の粒子が舞う。魔力を直接変換することで、ここを自分の効果範囲として魔術を使いやすくするためだ。
もし一般人が近付けば、濃密な魔力に卒倒するだろうが、今は深夜だ。そう人など来ないだろうと判断しての危険な行為だ。
「チッ、速いな」
何度か振り抜いた魔剣は、しかし黒い人型には当たらず、悠々と躱されてしまう。もしくは、倍の速さと重さで受け止められる。
「〈雷縛〉」
バチチと、辺り一体の地面が弾ける。ひとつわかったことは、この黒いやつは、液体の時でないと魔術を吸い込むことはできないらしい。
俺の〈雷縛〉は、見事にヤツを地に縫い付けた。
とっさに間合いを詰め、懐へと踏み込んで魔剣を突き刺す。ズブズブと、若干の弾力性を見せつつ、魔剣は深く黒い人型へ突き刺さる。
すかさず魔力を上乗せして魔剣の力を発揮しようとした。が、そう上手くはいかなかった。
目の前の黒い人型の形状が変わる。
「〈紫電、〉ガハッ!?」
剣を握る右腕が、黒いタールのような人型の腹へズブズブと引き込まれていく。逆に突き放すように、腹や肩に鋭く形状を変えたトゲのようなものが突き刺さる。
思わず、込み上げてきた血液を吐き散らし、後退を心みるも、囚われたままの右腕が抜けない。
「クソッ!」
このままでは引き込まれてしまう。さて、どうしたものか。
「レオンハルト君、大丈夫かい!?」
その時、路地の入り口に、あろうことかひょっこりとアンドレイが顔を出した。
「アンドレイ!来るな!!」
俺が叫ぶとほぼ同時に、黒い人型がアンドレイの方へ目を向ける。いや、目は見当たらないから、そんな雰囲気がしたというのが正しい。
迷っている暇はないようだ。
「チッ、〈雷刃〉!」
咄嗟に左手に風の刃を形成。それを振り上げて、人型に取り込まれた右腕に突き立てた。
ザシュっと、いっそ小気味良い音を立てて、鋭い風の刃が腕を両断する。痛いというよりも、熱い。
そのまま後方へ退避。身体の至る所に付き立っていたトゲから逃れると、ぶしゅ、と血が噴き出る音がした。
だんだんと強くなる雨脚の中に、鉄臭い血の匂いが広がる。
「レオ君!!」
アンドレイが慌てて声を上げた。そりゃ目の前で自分の腕を切り落とすヤツがいれば慌てもするか。
「問題ない。それより下がってくれ」
黒い人型から目を離さずに言う。アンドレイは数歩後ずさった。
雨のせいで出血が止まらない。長期戦は不利だと判断する。
さてどうしたものかと、一時思考を巡らせていると、背後にスタッと軽い足音がした。
「君ねぇ、自分の体をなんだと思ってる?取り外し可能な人形じゃないんだよ?」
シエルだ。どうやら小言を言いに来たらしい。
「うるせぇな。俺のものを俺がどうしようが俺の勝手だろ」
「それを逐一治してやっている僕の身にもなってよ」
「そりゃあどうもありがとうございますぅ」
「心が籠ってない」
「こめてほしかったらこうなる前に助けろよ」
などといつもの如く言い合っていると、黒い人型が痺れを切らせたようで、再び剣の形にした両腕を構えて距離を詰めてくる。
シエルがうへぇと声を上げた。
「あいつ…見たことがあるぞ」
「は?」
「以前に僕が倒した魔族の能力に似ている」
倒した?
どういうことだ?と、疑問をぶつけるのは後だ。
シエルが特大の火球を生み出し、ニンマリと口角を歪ませる。
「お、おい、それを投げるつもりじゃないだろうな?」
「投げる以外にどうしろって?」
魔族であるシエルの、おそらくフルパワーの火球は、あたりの雨粒をじゅうじゅうと蒸発させている。そんなものをこの街中で投げようなんて、さすが魔族の考えることは大胆で無茶苦茶だ。
「以前はこれで蒸発させたんだ。もし同じヤツなら、これで殺せるはずだ」
「はずだ、じゃなくて、お前!場所を考えろよ!あっ!!」
ひょい、とまるで子どもがボール遊びをしているかのように。
小さな太陽のように熱を放つ火球を投げるシエル。
「んのおおおおおっ」
俺は慌てて魔力を練り上げ、路地全体に〈空絶〉を展開する。広大な円環が構築され、その範囲内の建物を囲う。ついで、火球と黒い人型が衝突する辺りに狙いを定めて、別の円環を構築。魔力でもって空間に干渉し、〈転移〉を発動した。
「うおおおおおっ!!」
広域展開した〈空絶〉と、出来るだけ遠くへの(もはや場所なんて気にしていられなかった)〈転移〉の同時発動に、ゴッソリと魔力を持っていかれる。
それも固有による無詠唱の発動だ。詠唱有りよりも、倍以上の魔力を失った。が、発動は最短だ。
「おお、相変わらず器用なことをするね」
火球の熱は、建物を傷つけることなく、そして火球と黒い人型は忽然と姿を消した。
「う、うるさいっ!さ、さすがに、キッツ!!」
「アハハ!キツイのは出血の所為だよ」
「俺の腕が……」
「それより僕の魔剣が……」
「お前は!少しは!俺の!心配も!しろ!!」
「あんまりはしゃぐと気絶するよ?」
シエルが言う通り、出血の所為で視界がブレる。切断した腕からは止めどなく血がこぼれ落ち、穴の空いた体も、ジクジクとした痛みを訴えている。
「レオンハルト君!大丈夫…ではなさそうだな」
近付いてきたアンドレイが俺の姿を見て顔を歪めた。
「問題ないって。言っておくが特級魔術師なんてこんなもんだ」
「レオは特に、だろ。まったく、全然自分の事は顧みないんだから」
はぁ、とため息を吐きつつ、でもいつものように止血してくれる。シエル様様だ。
俺の腕に手を当て、魔力を流し込むシエルを、アンドレイが複雑な表情で見ていた。
俺と殆ど外見的な年齢は変わらない。漆黒の髪も、上品な白い礼服も、フェリルではさして珍しいものでもない。
ただ、シエルの瞳は薄い灰色だ。これは魔族にしか現れない特徴だ。
「レオンハルト君、そちらの方は……」
当然、国の重役として見過ごせるはずがない。
「コイツは俺の友人で、」
「シエル・ブランケンハイムです。お察しの通り、魔族ですよ」
魔力を流しながらも、シエルはいつもと変わらぬ涼しい顔で言った。
何年か前は、わざわざ辺境の地で待ち合わせして、コソコソ連絡を取り合っていたのに、最近やけに大胆だ。
フェリルに魔族が住み着いているなど、一般人が知ったらエライことになる。ルイーゼの件があったのだから尚更だ。
「私が思っているよりも、この国の闇は深いね。でもまあ、それでも私は君とこの国を治めていきたいと思っているよ」
アンドレイは相変わらず内心の読めない笑顔を浮かべていた。歴代最強の魔術師が魔族と懇意にしている事実を知ってもなお、そしてその事実がもし世間に知れたらというリスクを背負っても、この俺を仲間にしたいらしい。
「何度も言うが、イヤなものはイヤだ。それよりシエル、さっきのヤツは本当に死んだのか?」
今この場での優先事項は、政治家失踪事件の方だ。先ほどシエルが焼き殺そうとした黒い人型は、多分だけど……
「ふむ。生きているな」
「だよな」
シエルは涼しい顔で頷く。
「もし倒せていたのなら、取り込まれた僕の魔剣も消失したはずだ。でもそんな気配もないし」
「俺の腕も無事って事だな」
「本体から離れた事が無事というなら、無事なんじゃない?」
目玉が戻ってきたのだから、腕も無事だろう。
「取り込まれた人間も生きている可能性があるね」
「シエルはアイツを知っているみたいだが、その辺も詳しく知りたい」
「そうだね。一度ザルサスの屋敷へもどろうか……レオも限界だろうし」
シエルがそう言ったのと同時に、俺の体力が限界を迎えた。
がくりと膝から力が抜けた。その場に崩れ落ちる寸前で、シエルの細いけれど力強い腕が支えてくれる。
「悪いな」
「今更だろう」
そんな俺たちのことを、アンドレイは興味深く見ていた。のちにその理由を知ることになるのだが、それはまた別の話だ。
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