第83話 真夏の夜、月の下で③


 そういう経緯があり、夜。


 夏休み期間は基本的に学院宿舎に門限はない。


「レオ様あああああっ、ピニョも行きたいですううううっ」

「うるっさいなっこのっ離れろっ!!」

「嫌ですううううっ」


 俺の腰のあたりをギリギリと締め付けるように腕を回したピニョが全力で叫ぶ。


「ウッ、お、おい、そろそろ離さないと…吐いちゃうっ」

「ピニョも行くですううううっ」

「ウップ…ちょ、本当に内臓ごと口からリバースしそうなんだって!!」


 腹膜を押しつぶさんとするピニョの締め付ける攻撃。


 ピニョは本来ドラゴンだから、めちゃくちゃ力が強い。


「オエッ…」

「ピニョも行くですううううっ」


 ヤベェマジで出る。全部出る。


「レオ…何やってんだ?」


 俺の部屋へとやって来たユイトが、怪訝な顔で動きを止めた。


「た、たすけ、オエッ」


 伸ばした手はギリギリユイトに届かない。


 もうムリ。マジムリ。


「わかった…わかったから離せ!」

「やったああああああっ!!!!」


 フッとピニョの腕が解かれる。ストンと内臓が元の位置に戻った。


「死ぬかと思った……」


 普段から色々死にそうな目にはあっているが、ペット兼下僕のピニョにヤられるなんて情けないことは避けたい。


 そんな俺の胸中など知りもせず、ピニョはキャッキャと喜びの舞を踊っている。幼女だからいいが、なかなかにシュールな動きだ。


「ついてくるのはいいが、他のクラスメイトもいるんだ。あまり変なことすんなよ」

「はいですっ!!任せてください!!」


 腰に手を当てて、フンスと鼻を鳴らすピニョ。


「あー、みんなもう集まってるけど」


 満を辞してユイトが声を上げた。


「わかった」


 俺はひとつ頷いて、ユイトとピニョと部屋を出た。


 学院正門前で一度集まると、案の定ピニョに全視線が注がれた。


 ピニョは俺の後ろにモジモジとしながら隠れた。ので、俺はそのおさげを引っ張って前に押し出す。


「こいつは俺の下僕だ。気にするな」


 一瞬の沈黙。


「いやいやいやいや、気にするなって無理に決まってるだろ!?」

「そうだよ!え、なに?下僕って?」

「……レオってクズなのは知ってたけど、まさか犯罪者だとは思わなかった」


 ほら見ろ!!!!


 こうなる事はわかってたんだよ!!!!


「ピニョは下僕です。レオ様の様々なお世話をさせっぷぎゅう!?」

「わざとか!?俺を陥れようとしてんのか!?」


 慌ててピニョの口を封じる。


 なんて言い方してくれちゃってんの?この子アホなのか?


「ゴホン。今のは気にするな。それ以上突っ込んでくるなら、近いうちに頭に雷が落ちるからな」


 そう言うとみんな黙った。良かった。


「レオちんのクズ具合はおいといて、行こっか」


 エナが俺と目を合わせないようにして言う。全員が微妙な空気で頷いて、そのまま歩き出す。


 とりあえず、まあいいや。


 俺たちが向かったのは、北側の住宅地だった。


 昔、ナターリアが王政だった頃の名残で、その区域は未だにデカイ屋敷が立ち並んでいる。元々貴族の邸宅が多い地区だったからだが、東の近代的な金持ちの家とまた違った、趣のある旧家が多い。


 学院から歩く事30分ほどで、その区域にたどり着いた。広い庭にドンと鎮座する旧家は、結構人気の物件が多く、やたらと高値で売り買いされている。


 必然的に金持ちが多く住んでいる。


 特級魔術師連中も、この区域に家を持っている。金だけは持ってるからな、あいつら。


「あ、あれだ!」


 ゼノンが突然叫んだ。指を指す先には、これまた立派な洋館が建っていた。


 周りの屋敷は明かりがついていて、ちゃんと人が住んでいる気配がするのに、その洋館だけは暗くうらびれている。


 他と同じ広い庭はまったく手入れされず、道側の窓は割られていて、ポッカリ開いた穴のようだ。その穴を避けるように、植物のツタが外壁を血管みたいに覆っていた。


 建物自体は頑丈なようで、風化の影響はあれどまだ住むことはできそう。


「雰囲気あるね」


 エリアスがポツリと溢す。全員が、思った以上の異様な雰囲気に生唾を飲み込んだ。


 もちろん俺とピニョとユイト以外だが。


「入るんなら行こうぜ」


 誰も最初の一歩が踏み出せないみたいなので、親切な俺が先に洋館の敷地に入る。


 ゴミがそこら中に落ちてるから、確かに興味本位のヒマな人間が訪れているのだろうが……


 今日に限っては俺たちだけのようだ。


 これなら来なきゃ良かったぜ。


「ちょ、レオちん!待って待って」

「なんだ?」


 恐る恐る後に続くみんなは、団子みたいに集まっていて面白い。


「怖くないの?」

「は?どこに怖い要素があるんだよ?」


 ただの無人の洋館に、荒れ放題の庭。


 それだけだ。


「でもここ、幽霊が、」

「幽霊よか魔族の方が余程恐ろしいぜ」

「え?」


 平気で人の腕を引きちぎったりするような奴がいるからな。


「ともかく、俺は幽霊がいてもいなくてもどうでもいい。さっさと終わらせて帰ろうぜ」


 ピニョは不思議生物ドラゴンなので、そもそもどうでも良さそうだし、ユイトはもともと信じてもいなさそうだった。


 洋館の正面には両開きの扉があり、左側が少し開いたままになっていた。


「お邪魔しますです」


 ピニョがまるで友達の家にでも遊びに来たみたいにドアを開けた。


 ギィッと、錆びた蝶番が悲鳴をあげ、できた隙間にピニョがちっせぇ身体を滑り込ませる。


「おい、あんま勝手に行くなよ。迷子になったら置いて帰るからな」

「ヒドイですレオ様!」


 プンプンするピニョの後に続いて、俺も中へ足を踏み入れた。


 その後ろにはユイトが続き、ビクビクしながらほかの奴らも入ってきた。


「暗いな」


 ユイトが呟く声がしたから、俺は親切に灯りを出してやる。


 指をひとつパチンとならせば、適当な大きさの火球が空中に現れ、いい感じに足元を照らす。


「ひゃっ!?」

「び、ビックリした!」


 その火球にすら驚くクラスメイトたちは、俺が固有魔術を使ったことに気付きもしない。


 玄関を入ってすぐは広間になっていて、剥がれた壁紙や、毛羽立った絨毯の上には割れた花瓶やら吹き込んだ枯れ葉が散らばっていた。


 それぞれ灯りを頼りに、うろうろと歩き回る。


「その指ならすの、シエルもやってた」


 俺の後ろをついて歩いていたユイトが、小さな声で言った。


「ああ、そりゃこれは昔あいつと練習したからな」

「練習?」

「そ。指パッチンカッコよくね?とかいう、今思えばアホみたいな理由で」


 どっちが言い出したかは忘れたが、何故か指パッチンブームが到来し、俺たちは魔術を使うたびに指を鳴らして遊んでいた。


 ガキって思ったそこのお前。今日頭に雷が落ちます。


「だからあまり意味はないが、強いて言えば魔力を放つタイミング合わせだな」

「シエルも同じ事言ってた」


 ああそうですか。


「レオ様、ここには誰も住んでいないのです?」


 コソコソお喋りをしていた所に、キョトンとした目でピニョが言った。


「そのはずだが、どうした?」

「おかしいです…あそこのドア、今勝手に閉まりましたです」

「風だろ、多分」

「はいです」


 怪奇現象?んなの俺だってできるし。


 などと思っていたんだが、ここから不思議現象が立て続けに起きた。


 ギィィイイイ


 どこかのドアが、不気味な音を立てた。


「きゃっ!?」

「な、なに?今の?」


 少し離れた所にいたクラスメイトたちが、驚いて声を上げる。


 その時俺とユイトとピニョがいたのは、広間を入って左側の、通路へと続く廊下の前だった。


 反対側も同じような作りになっていて、女子四人がそっちに居たのは把握していたが、男子二人の姿が見えないことに気付いた。


「あれ?ゼノンとエリアスはどこいった?」


 女子四人に向かって聞いてみる。


 四人とも無言で首を左右に振る。


「ったく、置いて帰るぞ、マジで」


 女子どもは役に立ちそうにないし、仕方ないから探しに行ってやるか。


「ユイトは此処にいろ。俺が探してくる」

「わかった。くれぐれも、」


 と、心配そうな顔をするので、途中で遮った。


「わかってんよ!どうせ魔術あんま使うなとか、見えないんだから足元を気を付けろよとか言うんだろ?お前は俺の親かよ」

「……わかってんならいい」


 不思議な話だが、俺の周りには俺をガキ扱いする奴が一定数存在する。とっても不愉快だ。


「んじゃ頼んだからな」

「おう」


 ピニョのおさげを引っ張って、広間の中央にあるボロい階段を登った。


 左右の廊下は一応人がいたから、もし二人が消えたなら二階だと思ったからだ。


 階段は足を置くたびにギシギシ嫌な音を立てるが、抜けたりはしなさそうだ。手摺りは危ないかもしれない。


「レオ様?やっぱり変です」

「何がだ?」


 二階の廊下に出ると、こっちも左右に廊下が伸びていた。正面には窓が並び、どれも窓ガラスが割れている。歩くとガラス片が音を立て、もし転んだら確実に怪我しそうだ。


「誰かいますです」

「はあ?」

「ピニョのドラゴン的感覚がそういってますです!!」


 ドラゴン的感覚とは?


「まあいいや。いざとなれば魔術でぶっ殺しゃいい」

「物騒ですよレオ様……」


 などと言いながら、とりあえず左の廊下を進む。


 ……ポロン、とピアノの音がした。


「誰だよこんなところでピアノなんか弾きやがってヒマか?」

「レオ様、もしかして幽霊なんじゃないですか」


 だったら驚きだ。どうやってピアノ弾いてんだ?


 またポロンポロンと鍵盤を鳴らす音がした。


 俺には魔術以外に取り柄はないが、その音がだいぶ変なのはわかった。


 音がしているのは一番奥の部屋で、俺とピニョは迷いなくその部屋に向かう。


「ったく、まともに弾けねぇ奴がピアノなんかさわんじゃねぇよ」


 魔術も同じで、下手くそなのは見ていられない。


 そう思いながらドアを開けた。


「あ?」


 その部屋は、明るい陽光が差し込む、穏やかな空気が満ちていた。部屋の中央にはグランドピアノが置いてあり、今さっき狂った音を出していたものとは到底思えない、新品みたいなピアノだ。


 開け放たれた窓から入る風は夏の乾いたもので、揺れるカーテンの影が床に踊っている。


「……どういうことだ?」


 と、振り返ると、そこにピニョはいなかった。


 そのかわり、黒い長い髪の白いサマードレスを着た女がいた。


 少しだけ….黒い髪と知的で好奇心旺盛な大きな瞳が、アイリーンに似ているなと思った。


「魔術師様、今日は遅かったですね。待ちくたびれてしまいました」


 女はムスッとした表情で、でも隠しきれない喜びをたたえて言い、そのまま俺の腕に飛び込んできた。


 わけもわからず、反射的に抱き留める。


「もう会いに来ていただけないのかもと思うと、とても悲しかったのですよ」


 女は俺の胸に頬を押し付け、本当に悲しげに言った。


「な、何これ?誰?」


 自分でも、自分が結構動揺している事に驚きつつ、とりあえずその女が割と綺麗な女で悪い気はしない。


「魔術師様、今日はどんな魔術を見せてくださるのかしら?私、とても楽しみにしていましたの。あっ、それとも、この間の続きでもしましょうか?この間は急に帰られてしまったので……その、私は貴方様になら……」


 と、潤んだ瞳で顔を真っ赤にして俺を見上げてくる。


 ちょ、ちょっと待てよ?


 俺に何を期待しているんだこの女は?


「いや…そもそもお前は誰だ?」


 無理矢理女を引き剥がし、マジマジとその顔を見た。


 もしかして酔っ払って声をかけて忘れている、なんて事があるかも知れない。


 いや、俺は出会った女の顔は忘れない。


 特に美人は。


 ……いややっぱ知らんぞ、こんな女!!


「どうしたのです?もしかして、忘れたフリをしてからかっているのですか?」


 もう!と、可愛らしく頬を膨らませ、それからイタズラを思いついたように、ニコリと微笑んだ。


「こうすれば思い出してくださいますか」

「は?」


 と、次の瞬間、女は少し背伸びをすると、俺の唇を唇で塞いだ。柔らかく暖かい感触が、女が本当に人間だと主張してくる。


 軽く触れるだけのそれは、徐々に深く、熱を帯びたものになる。


 俺の経験上、突然キスしてくる女はヤバい。それもフレンチな奴じゃ無くてガチな奴をしてくる女は、後々面倒な事になる。


 なんでかって言うと、押しが強い女は感情的になりやすく、こっちもおんなじ思いでいると勘違いしているからだ。


「ちょっと一旦落ち着け!」


 女を突き飛ばす勢いで押し、数歩後ずさる。


「お前は誰だ?何をした?」


 さっきまでオンボロだったはずの洋館が、ビックリするくらい綺麗になり、突然現れたこの女のが何かしら関わっていることは明白だ。


 魔力感知でわかるのは、この洋館全体が魔術的な何かに覆われていると言うことだけで、何がなにやらようわからん。


 足を踏み入れた当初は、全く感じなかったのに。


「酷い……魔術師様は、どうしてしまったのですか」


 それは低く怨嗟の念がこもった声だった。


 背筋がゾワリと粟立つ。


「私、ずっと待っていたのに……」


 俯く女の顔は、長い髪で見えない。


「悪いが人違いだ。俺はお前なんて知らん」


 それが何かの引き金になったようだった。


 今まで明るい日差しが差し込んでいた室内が、暗く重苦しい空気となり、鮮やかな絨毯は色褪せ、長い年月を得たそれへと変わる。真ん中のピアノは、傷だらけで、周囲に鍵盤が散らばった。


「酷い…どうして?」


 女は、それまでと違い感情の無い声で呟く。


「魔術師様は…私を置いていってしまったの?」


 バッと顔を上げる。長い髪が覆う隙間から、見開いた大きな眼が見える。


 赤く血走った黒い眼。肌は陶器のような、病的な白さで、薄い皮膚に青い血管が浮いている。


「おわっ、キモ!」


 おっと、女性に対して失礼な事を言ってしまった。


「魔術師様ああああっ」

「うわああああっ」


 反射的にドーンと突き飛ばす。別に怖いとかじゃない。ヤバい顔の女に迫られたら、さすがの俺も全力で拒否する。


 突き飛ばしたついでに、サッと横を通って部屋から転がり出ると、ピニョと激突した。


「いひゃああああ!?」

「邪魔だ、どけっ!ヤバい女がいるんだ!お前ちょっと俺の代わりに囮になれ!!」

「イヒッ、レオ様酷いですううううう」


 ドアの向こうを同時に振り返り、佇む女を確認して俺たちは駆け出した。


 途中でピニョの足を引っ掛けたが、こういう時に限って上手くいかない。


「オラッ下僕の分際で、俺より先を走るな!!」

「そんなぁっ!レオ様っ、クズすぎて涙が出ますっ!!でもカッコいいです!!」


 ドタバタと足音を立てて階段を駆け下りる。


「〈空絶うううう〉!!!!」


 二階の廊下を塞ぐように、勢いだけの魔術で魔力を大放出してしまった。


 この際封魔の影響とか気にしない。俺がちょっと我慢すりゃいい!!


「どうしたんだよ!?」


 階段下でゼェゼェと息を吐く俺とピニョに、ユイトが血相を変えて駆け寄ってくる。


「ヤバい女がいた!!」

「ピニョも見ましたです!!」


 はあ?と、現実主義な冷たいユイトの顔が俺をみおろしていた。


「ホントだって!俺、俺……あ」

「?」


 そういえば。


 あんな奴だったとは知らずに、結構ガチめなキスをしてしまったんだった。


「オエッ、ピニョ、俺はもうダメかも知れん。あれがゾンビなら俺は濃厚接触者だ」

「ふぁ?ど、どういう意味ですっ!?」


 嫌だもう死にたい。


「ね、ねぇ…その女の人ってさ…白い服の髪の長い…?」


 相変わらず端に固まっていたエナたちが、震える声で言った。


「そう、髪の毛がこう、ダラーンと前に垂れた、」

「レオ…後ろ……」


 俺とピニョとユイトが、エナの指を刺す方を振り返る。


 どうやって移動したのか、玄関から向かって左の通路に、その不気味な女が立っていた。


「イヒイイイイイッ!!!!」


 叫んだのはピニョだった。


 俺は咄嗟に立ち上がり、全力で来た道を戻る。その後ろをユイトが慌てて追いかけてくる。


 女子四人がまた別の方向へ走って逃げるのが見えた。


「な、なななな!?なんだよ、あいつ!!」


 二階へと舞い戻った俺は、今度は右の通路へと進む。後ろでユイトがなんか言っているが聞いてる暇はない。


「レオ様ああああっ」

「あっ、お前ズルいだろ!」


 頭上をドラゴンの姿のピニョが飛んでいく。


 ぎゃあぎゃあ喚きながら、とりあえず奥の部屋へと逃げ込んだ。


「はぁ、はぁ…なんだよもう」

「幽霊って、本当にいるんだな」

「ピニョも初めて見ましたです」


 月並みな感想だが、この世のものとかそういうのではなく。


 普通に怖い。


 飲み屋のねーちゃんダブルブッキングして、刺されそうになった時くらい怖い。


「よ…よし、とりあえずここから出よう」


 少し落ち着いた所で、そうだ出ればいいんだと思った。どうして気付かなかったんだ?


「レオ様、窓ガラスは全て割れていますです」


 ピニョがそう言って、パタパタと飛んで窓へ向かう。ガラスのない窓枠から、外へ飛び出そうとした。


 が、


「ふぎゅっ!?レ、レオ様、結界で出れませんです!!」

「マジかよ」


 まあでも、あたり一面魔力が漂っているから、きっと何か魔術的に隔離された空間なんだろう。


 ということは、この魔力を供給している元をどうにかしなければならない。


「〈解術〉とかで、なんとかならないのか?」


 ユイトがピニョと並んでガラスのない窓に触れながら言った。その指は何もない空間に触れると、それ以上外へはいけないようだった。


「無理に解いてもいいが……」


 今の体調でどうにか出来るかわからない。


 それに、空間自体を相手が都合の良いようにいじっているから、どれだけの魔力量を持っているか把握しきれていない。


 レリシアの時のように、力任せに上回ろうとするのは危険だ。


 悩む俺の顔を見て、ユイトは不可能な提案だったと気付いたようだった。


「あの女が魔術を使ってるのか?」

「いや…あれは多分、この空間系魔術の現象のひとつだと思う。魔力供給を行っているのは別のなにかだ」


 ここに魔力が充満しているのだから、これは何かの魔術であると考えられる。効果範囲はこの洋館全域で、現象としては空間改変。部屋の視覚情報を変化させたり、怪奇現象を起こしたり、ヤバい女が出現したりというやつだ。

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