救世主なんて存在しない
仲仁へび(旧:離久)
01
世界が滅亡に瀕した時に、さっそうと現れる救世主。
光り輝く伝説の剣を持って、魔物たちを切り裂き、魔王を倒して、この世界に平和をもたらしてくれる。
この世界には、そんなおとぎ話があった。
古くから伝わる言い伝えだけれど、多くの予言士が救世主の到来を告げていたので、この世界の人の大半は信じていたのだろう。
しかし、実際にそんな都合の良い事が起こるわけなかった。
救世主なんて絵空事だ。最後まで現れるはずがない。
魔物に蹂躙される町や村、多くの人々。
魔王によって、討伐軍は壊滅。
人間はまたたくまにその数を減らしていった。
今になって思えば、あの話はただの幻想だったのだろうと思う。
人々を喜ばせたいがために考えた、絵空事。
国の偉い人達や王様が、作り出したファンタジー。
だって、これほど耳に心地いい物はなかった。
物語のように異界から勇者様が降りたって、兄弟な力でさっそうと私達を助けてくれる。
だなんて。
先の事が分かるはずの本物の占い師でさえそうだった。
彼等だって、人間だ。
自分から不幸な未来を語りたがるわけがない。
それを聞く人間も、同じく。
不幸な未来を、言いひろげたくない。
そうしてこの世界の人達は、優しい優しい救世主の話をうのみにして、絶滅していくのだろう。
幻想にすがり、現実に目を背け、優しい夢物語の中で生きる。
きっといつか、いつか救ってくれる人が現れる。
「占い師様、きっと大丈夫ですよね。今が苦しくても、救世主様が現れて救ってくださいますよね」
「ええ、そうです。信じましょう。信じる事が力になるのです」
そう信じながら、人という種は絶えていくのだ。
救世主なんて存在しない 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます