閑話
俺の名前は池面 太郎(いけめん たろう)。
自分で言うのも何だが俺はイケメンの部類に入ると思っている。
今まで何人にも告白されたし、バレンタインなんて何十個もチョコやお菓子をもらった。
だが、今まで好きな人も出来ることがなかったので、誰かと付き合いたいと思ったことがない。
しかし、この高校の入学式の時に見た女子生徒に一目惚れした。
その女子生徒の名前は音無 楓さんといい、誰が見ても美少女と言うであろう美貌を兼ね備えている。
音無さんのことはすぐに学校に広まり、何人も告白したらしいが、全員玉砕している。
断るときの理由は決まって、
『好きな人がいるから』
と、言って断るらしい。
その好きな人がもしかしたら俺なんじゃないかと思ったが、そうではないかもしれない。
俺はいつも通り、となりのクラスの音無さんを眺めていると、いつも通り奴がやって来た。
「…何か言われた?」
「少し寝てただけなのに説教されたよ…」
「…ドンマイ」
この男子生徒の名前は、人無 零人という
名前で音無さんの好きな人なんじゃないかと思っている男子生徒でもある。
詳しく調べてみたが、勉強も運動も特別出来るわけでもなく、顔も俺のほうが良い。
彼には普通という印象しか持てなかった。
だが音無さんは人無としゃべる時だけ楽しそうにしている。
彼女ほど美少女だと、あっちから寄ってくることもないと思い、入学早々話しかけたが冷たくあしらわれ、しまいには無視された。
どうやら神様は俺に試練を与えたらしい。
今日も俺は彼女を射止めるため、授業の時間よりも頭を使うのだった。
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「おい、人無」
「ん?」
トイレで用を足し、出たところで後ろから声をかけられる。
そこには名前は分からないが、物凄いイケメンが立っていた。
「えっと……誰?」
「ぐっ!これが選ばれたものの余裕か!」
何かショックを受けているようだけど気にしない気にしない。
「俺の名前は池面 太郎。お前のライバルだ」
「な、何の?僕部活入ってないんだけど…」
「恋のライバルだ!」
「こ、恋?」
な、何だろう。猛烈に嫌な予感が……
「俺の好きな人はお前がいつも行動している
音無さんだ!」
「か、楓さんが好きなの?」
「な、名前呼びだと!?」
また何かショックを受けている。情緒不安定な人だな。
「そ、それがどうかしたの?」
「今も言った通り俺は音無さんが好きだ。
だが彼女はお前以外の男子とは一切関わって
いない。そして好きになったのなら最後は
付き合いたいものだ」
「そ、そうだね。なら告白したら?」
「振られると分かっているのに突撃するほど
馬鹿ではない。だから」
「手伝って、とか言うなら断るよ」
「な、なにッ!」
図星だったか。前の僕なら手伝ったかもしれないけど、前みたいなことにはなりたくない。
「す、少しだけで良いんだ!頼む!」
「嫌だ。手伝わないよ。それに」
「そ、それに?」
「僕は楓さんが好きだ。誰に何て言われようと
この思いは変わらない」
後ろで誰かが走っていった音が聞こえたが気にしない。
「用がないなら僕は戻るよ」
「ま、待ってくれ!」
僕は教室に戻って歩き出す。
…ちょ、ちょっと言い過ぎたかもしれない。
反省しなきゃと思いながら改めて
教室に戻るのだった。
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「楓さん、顔が赤いけどどうしたの?」
「…う、うるさい!あんなこと言われたらこう
もなる!」
「あんなこと?」
「…も、もういいから!」
零人が中々戻って来ないから探しにいったら
好きとか言ってたなんて……。
そ、その一言で顔が赤くなったなんて、
い、言えない……。
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