第5話
「…零人、もうすぐ何あるか分かる?」
「ははは、何を言っているんですか楓さん。
まさか忘れるとでも?」
「…ふ~ん。じゃあ何?」
「夏休みですよね分かります」
「…はぁ」
「何その哀れみの目は?!どうせテストとか
言うんでしょ?!」
「…ん。分かってるじゃん」
「…で、それがどうかした?」
「…勉強してる?」
「………今日は先に帰らせてもらいます」
「…逃がさないよ」
「は、離してくれ楓さん!僕は家に帰って
二次元の世界に飛び立つんだ!」
「…いいから。勉強会するよ」
「………はい?」
ということで勉強会が決まった。
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今は学校の図書室にいる。
流石にテスト前だけあって、図書室にはまばらに生徒がいる。
「で、何しに来たんだっけ」
「…勉強。勉強そっちのけで本読もうとしてな
いよね?」
「ナ、ナンノコトカワカラナイデスネー」
「…バレてるから。いいからやるよ」
「はい………」
逃げることは出来なかった。
好きな人と勉強とか憧れる人はいるかもしれないけど、本当に自分の身に起きてみればただただ緊張する。
「?行くよ?」
「う、うん」
そして勉強会が始まった。
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「…ここはこの公式を使うの」
「ちょ、ちょっと休憩させてもらえんですかね
……」
勉強会を初めて早一時間。楓さんが近くにいたり良い匂いがしたり、勉強をして頭を使っているので疲労が凄い。
「…普段勉強をしてないでしょ?」
「するわけないじゃん…。テスト前でもちょっとやるぐらいなのに」
何故テストはあるのだろうか。
いやテストがあるのは構わない。だけど、
順位を出すのはおかしいと思う。人間は競うべきではなく助け合うべきだ。
勉強が出来るからなんだって言うんだ。確かに良い大学に行けたり社会に出た時に役立つかもしれないけど、そんなことを言っていたら青春を楽しめないじゃないか。
と、下らないことを考えていると、
「…今回は頑張ろう?一回目のテストだし」
「ていってもなぁ」
「…が、頑張ったらご褒美あげるから」
「そ、それはどういうものですか?」
「…な、何でも言うこと聞く」
「是非やらせてもらいます」
「…早」
そりゃそうでしょうよ、楓さんが何でもやってくれるんだったら一位だってとれる気がする。だが、俺だけでは不公平では?
「楓さん中学の時何位くらいだった?」
「…一位」
「ん?僕の耳がおかしくなければ一位と聞こえ
た気がするんだけど?」
「…そう言った」
「……えっ!」
図書室なのに大きい声を出してしまった。
勉強している人達に睨まれた。
「…零人うるさい」
「そ、そりゃびっくりするでしょ。たまに
ポンコツになる楓さんが一位だとか」
「…何か言った?」
「いえ何も言ってません」
やばい、今のは殺意がこもってた。
「今回一位とれそう?」
「…分かんない。もしかしたらとれるかも
しれない」
「じゃあもし一位取れたら、僕もご褒美あげる
よ。だから頑張って?」
「…ほどほどに頑張る」
「ところで僕のご褒美の基準は?」
「…う~ん、中学校のとき何位だった?」
「七十位くらいかな」
「…学校に何人いた?200人くらい?」
「あはは、楓さんそんなわけないじゃん。
今は少子化なのに」
「…じゃあ何人?」
「百人だよ」
「…」
楓さんが呆然とこちらを見つめている。
し、しょうがないじゃないか!中学の時も勉強しなかったんだし!
「…じゃあ……五十位以上で」
「わ、わかった」
僕達の学校は百人くらいなので打倒だろう。
そして僕達は、お互いに発破をかけてテストに望むのだった。
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次回甘くします。
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