第4話

「なぁ、人無」

「ん?」

僕が廊下を歩いていると、いきなり見知らぬ男子生徒に話しかけられた。

「どうしたの?」

「いやー、その……」

何故かいきなりもじもじし出した。

何か言いづらいことでもあるのか?

と、自己完結しようとしたところで、

「お前と音無って付き合ってるのか?」

「へ?」

やばい、いきなりの事だったから声が上擦った。

「い、いや付き合ってないけど」

「ほ、本当か?!いつも一緒にいる

 じゃないか!」

「い、いやぁー、あれはちょっと仲良くさせて

 もらってるだけだから」

「じ、じゃあ俺も希望があるのか!」

「希望?」

「ああ、俺音無の事が好きなんだ」

「へ、へぇー」

まずいぞ。この男子生徒の見た目は坊主で、切れ長の目をしていてクールな印象を受ける。

例え両方公認の両想いだとしても楓さんの思いが変わるかもしれない。

「だから応援してくれないか?どうせお前は

 音無の事好きじゃないんだろ?」

「い、いやでも」

「頼んだぞ!」

「あ、おーい」

僕に頼むとすぐに走っていってしまった。

去り際に連絡アプリの番号を渡されたからこれでアドバイスをしろと言うことだろう。

はて、どうしたものか。




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「楓さんってさ、クールな人ってどう思う?」

「…いきなりどうしたの?」

僕は結局、断る勇気が無かったため一応のアドバイスをすることにした。

「い、いやー何となく?」

「…怪しい。何か隠してるの?」

「ソ、ソンナワケナイデスヨ?」

「…何故にカタコト?」

何かいつもより楓さんが鋭い。

発言に気を付けねば。

「…要するに私の好きなタイプを言えばいいっ

 ていうこと?」

「そうそう」

「零人」

「ん?」

「だから零人」

「はい?」

「れ・い・と!」

「ぼ、僕?!」

「そう。零人も知ってるでしょ」

「そこで頷いたらナルシストにならない?」

い、いきなりこういう発言はやめてほしい!

心臓に悪い!

顔が熱くなってきた……

「じ、じゃあクールな人は?」

「…零人がクールな人は人なら好きだと思う」

「ぼ、僕基準なんだ」

「…当たり前。私が零人以外を好きになること

 ないよ」

「そ、そう」

ここで楓さんだけに言わせたら駄目だよな。

よ、よし!ヘタレなりに頑張るぞ!

ドン引きされても知るか~~!

「ぼ、僕も楓さん以外を好きには…

 な、ならないよ?」

「………そう」

楓さんは僕の発言にそっけなく返してきた。

や、やっぱり引かれた~!い、言わなきゃ良かった~!!

顔を反らした楓さんの耳が真っ赤だったのは、

ただの見間違いだろう。




____________________________________________




「ど、どうだった?聞いてみたか?」

「う、うん。一先ず離れようか」

授業が終わるとすぐにやってきた。

これなら連絡先交換した意味が

ないじゃないか。

「君みたいなタイプの人は特に嫌ってはいなか

 ったよ」

「そ、そうか!よかったよかった!

 ありがとう!」

「ど、どういたしまして」

「な、なぁ音無ってモテるよな?」

「まぁ誰から見ても美少女だからね」

「そうだよな。…今日告白しようかな」

「は、早いね」

「ああ。あまりグズグズしてられないからな」

「そ、そうなんだ。頑張って……」

「出来れば着いてきてほしいんだが」

「ええっ!」

「最後まで見届けて欲しい」

「わ、分かったよ」

りょ、了承してしまった。

「じゃあ放課後でな!」

「う、うん。また後で」

面倒くさいことになったな。

まぁいいや。後で考えよう。

僕は授業が始まりそうだったので席に戻ることにした。




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「…私をここに読んだのは君?」

「あ、ああ。来てくれてありがとう」

「…別に」

今は誰もいなくなった教室にいる。

放課後ということもあり、僕達しかおらず、

静まり返っている。

僕は机の影に隠れている。

「…用件は?」

「あ、ああ。…俺は音無の事が好きだ!」

「…ごめん」

「…やっぱり好きな奴がいるのか」

「…うん」

どうやら告白は失敗に終わったらしい。

僕は二人が帰った後に帰ろうと考えていると、

「…そこにいる人」

「えっ」

「!」

楓さんがいきなり僕のいる場所に指を指してきた。

ま、まさか最初から気づいていた?

「…早く出てきて」

「…分かったよ」

僕は観念し、隠れるのをやめ出ることにした。

するといきなり、

「は、はあ?そいつの事が好きなのかよ」

「…そうだよ」

「はっ。つまんねえ野郎だな。せっかく俺が

 告白してやったのに」

いきなり性格が変わった。

いや、変わったというより元々こっちの性格だったのか。

男は楓さんに向かって暴言を吐き出した。

「ていうか、可愛いからって調子乗んなよ!

 俺も可愛いって少し思っただけだから告白

 してやってんのに」

「…」

「ていうか男の趣味悪すぎんだろ。それとも

 その男も遊びか?」

矛先が僕に向いた。これならもう楓さんが悪く言われることはないだろう。

だがそこで、

「こんな冴えねえ男、どこが良いん」

「黙って」

「は?」

「黙って、と言ったの」

「は?調子乗んな」

「それ以上零人の事悪く言ったら……」



「殺すよ?」

「ひっ!」

こ、こわっ!楓さんがとてつもないオーラを出している。

男はびびったのかすぐに走って逃げていった。

「か、楓さん?大丈夫?」

「…私は大丈夫」

口ではそう言っているが、心なしか元気がない。

「楓さん?どうしたの?」

「………私、怖かったよね?」

「え?」

「幻滅、したよね」

楓さんが今にも泣き出しそうになっている。

「私、普段はあまり口調は悪くしないように

 してるのに今はああ言っちゃったから、

 怖かったよね…」

どうやら、楓さんは僕がさっきのことで楓さんの事を嫌いになったと思っているらしい。

僕はそんな楓さんの事を、

「いたっ!」

軽くチョップした。

「楓さんって時々バカになるよね」

「ば、バカって何よ!こっちは嫌いになられる

 のが怖いのに!」

「僕が楓さんの事を嫌いになるわけないでし

 ょ」

「…」

「楓さんが僕のそばにいてくれる限り、僕が楓

 さんの事を嫌いになることはないよ。

 これでいい?」

「…うん。ありがと」

「いえいえ。じゃあ早く行こ?」

「…うん!」

楓さんは見惚れるほど美しい笑顔でそういった。

やっぱり楓さんは笑顔の方が似合うな、と再確認出来た一日だった。




____________________________________________

今回も読んで頂きありがとうございました!

皆様のおかげで、ラブコメ日間27位になることが出来ました!

皆様には本当に感謝してもしきれません!

今回は二人の関係がほんのちょっとだけ進むお話でした。

あまり甘くできなかったので、次は甘々にしたいなぁと思います。

この物語は幼馴染みの方が行き詰まって、息抜き程度に書いた物語なのですが、まさかここまで読んでいただけるとは思って揉みませんでした!

これからも投稿していくので何卒よろしくお願いします!


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