第4話 願いをさえずる鳥のうた : 彼の話

 窓の外から響く鳴き声に、彼女が耳を澄ませている。なんとなくそうだなとわかりやすいそのしぐさに、笑みがこぼれるのを自覚した。

「ホッホウ ホッホウ」と鳴く声は、彼の家にいるときよりも、彼女の部屋に来たときに聞くことが多い。跳んでくるばかりで彼女の部屋から外に出たことがほとんどないのでよく知らないのだが、恐らく近所の緑地か何かに住まう鳥の声だろう、といつか調べた情報を思い起こす。

 初めて跳んだ日こそ呼ばれて跳んできたものだが、実のところ、呼ばれたかどうかはあまり関係なく、跳べるものらしい。突然できた半日のオフに、まっさきに思い浮かべたのはこの部屋で、一息つく間もなく跳んでいた。平日の昼間に、会社勤めの彼女がいるはずもないのに。

 せっかく来たならばと拝借した台所で、彼はいま、後片づけをしている。どうにもこうにも、彼女が疲れているように見えてしまったので。

(またうっかり踏み込んでくれないかな)

 そうすれば、こちらも踏み込むきっかけができるのに。

 窓の外の声を真似てみれば、ベッドにもたれた彼女がひっそりと笑う声が聞こえた。

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