SUMMER FALL #13
ヘッドスライディングの要領で前方に飛び込みながら発砲し、地面に
「平井! 吉成を確保! それと救急車!」
甲山は跳ね起きながら大声で平井に指示を飛ばすと、チーフスペシャルをホルスターに納めて蓑部に駆け寄った。
「蓑部! しっかりしろ!」
草加が声をかけながら支えている蓑部の正面に回った甲山の目が、
蓑部の腹部、正中線より左側に吉成が突き出した包丁が半分程刺さっていた。着ているTシャツが鮮血を吸って色を変えていた。
「オイ! 蓑部!」
甲山が顔を近づけてがなると、蓑部は
「け、刑事、さん、この、中のどっかに、あいつの、ば、売春の、証拠」
そこまで言って、蓑部は意識を失った。甲山は草加と顔を見合わせてから、蓑部が差し出したスマートフォンを取った。その直後、平井の後ろから鴨居達が走って来て、それを追いかける様に救急車のサイレンが聞こえて来た。
蓑部は救急車で搬送され、吉成は黒パトで病院に送り、脚の
「何で蓑部が田辺美和さんを殺したと判った?」
甲山が訊いた途端、それまで
「あいつが美和のスマホで俺に電話して来たんだ! どんな馬鹿でも判るだろうがそれくらい!」
甲山は吉成の
「何であそこで蓑部と会った?」
「あいつが指定したんだ! 俺の悪行を暴くとか、妹の
横合いから、鴨居が口を挟んだ。
「訳判んない事無いだろ? アンタが自分の所に
吉成は横目で鴨居を睨みつけて言い返した。
「表の仕事で使い物にならないのを、違う形で役立てただけだ、それにそいつ等にも手当はやってたんだ、文句ねぇだろ」
「何だとこの――」
掴みかかりそうになった鴨居を制してから、甲山が吉成の胸倉を掴んで引き寄せた。
「いいか! モデル達はお前の道具じゃねぇ! 立派な人間だ! お前なんかに人を
甲山と吉成が互いに顔を
「自分の所のモデルをそんな風に扱ったり、キャバクラのホステスを犯したりする様なお前が、何で田辺美和さんにだけはそんなに真剣なんだ!?」
すると、それまで興奮して眉間に皺を寄せていた吉成の表情が一変し、
「お、俺は、み、美和、美和に」
消え入りそうな声で呟いたと思うと、吉成は突如宙を見上げて叫んだ。
「俺は初めてひと目惚れしたんだぁ!」
甲山のみならず、署内に居た全員が瞠目して吉成を見た。
数秒訪れた沈黙を、目黒のデスクの電話が破った。我に返って受話器を取った目黒が、ふた言三言喋って受話器を置き、甲山に告げた。
「蓑部の手術が終わったそうだ」
甲山は目黒を見て頷くと、鴨居に「後頼む」と告げて署を出た。
《続く》
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