よく跳ねるボールのような、手で触れられそうな言葉のきらめき。

「右斜め45°の斜向かいから左に36.6°」という、詩集のタイトルがまずいいですね(屈折しすぎてどこに向かうのかよくわからなくなってしまっている、よく跳ねるボールのような言葉のイメージが浮かびます)。収録の「第1話 前置き」 はこの詩集全体のイメージを膨らませるような作品。美しいような空恐ろしいような言葉のきらめきが物質的に捉えられていて、ひねった瞬間に宝石が溢れ出す蛇口のイメージが鮮烈です。

全19話(2022年1月現在)からなる詩集ですが、とくに読みごたえがあるのは前半、現実と地続きの白昼夢のような「第2話 アルカシリカ」や、身体感覚をつぶさに捉えた「第8話 動揺症」あたりでしょうか。こうして詩集としてまとめられた作品は、個別の詩を読んだ印象と、詩集として通読したときの印象が変化するのも面白いところです。カクヨムは目次が一目瞭然なので、気になるタイトルから気軽に読み始められるのもいいですね。


(「自由に補助線を引いて愉しむ、詩の特集」4選/文=大崎清夏)

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