パーティからメンバーを追い出した結果

ヘイ

第1話

「このパーティを抜けてくれ」

「……分かった」

「理由は聞かないのか?」

「別に聞いたところで変わらないだろ……」

「まあ、金はやるよ。そんな急かすつもりはないけど今週中に荷物まとめて出て行ってくれ。それと装備は、一番良いのだけ持っていってくれ、後のやつは売り払う」

「…………」

「それだけだ。悪かったな」

 絶望の表情を浮かべる彼に、俺は申し訳ないと思いながらも言うべきことは全て伝えた。

 間違ってないはずだ。彼はこのパーティには必要がない。

 実力があったとしても、それを隠したり発揮しないような奴が信頼できるわけがない。

 俺が強すぎて、お前らの為にならないと思ったからなんて考えているなら、きっと殴り飛ばしていた。

 なんだかんだ、素直なやつで助かった。

 簡単に了承してくれたのだから、こちらとしてもそこまでの後腐れがなくていい。

 

 

 

 俺はアホだったかも知れない。

 このパーティを成り立たせるにはアイツが必要だったのだろう。

 今なら、俺に信頼を寄せる奴もいるはずだと思っていたのだが、どうやら俺のよくない思い込みだったようだ。彼は俺が想像していた以上に人気があるらしい。

 まあ、俺が全面的に悪かったと謝ると、慰謝料だのを要求してきたが、アイツにはもう渡してあると話せば足りないのだと言われ、朝、目を覚ませばパーティの資金全てを持っていかれた。抵抗も何も、資金管理をする奴が抜けてしまったのだから、最悪だ。

 残った二人に事情を説明したが、金がないと言うことで見限られた。

「ああ、何でこうなってんだよ……」

 幸いにも、装備は残っていたのでそれで雑魚狩りや、一人でできることをし続けているが生活が厳しい。

「パーティリーダーとかもうやらねー……」

 今更な話だが、俺の価値観は彼らには合わなかったようだ。

「久しぶりだな」

 そう言って、前に見た時と変わらない装備で、俺がパーティから追い出した彼が話しかけてきた。

「おう。お前の方は……」

 見れば、獣人の剣士の少女、エルフの槍使いの少女や、魔法使いの少女、重鎧を着込んだ騎士の美人が彼の後ろに立っている。

 その目はまるで俺を敵対視しているようだ。何とも話すのが気まずい。

「上手くやってるみたいだな……」

「お陰様でな」

 皮肉だろう。

 ただ、何というか殴りつけたい。こっちの苦労も、気持ちも知らずに人をからかう余裕があるなんて、なんて奴だ。

「ちっ……」

 思わず舌打ちをしてしまった。

 ただ、耳ざといのか獣人とエルフの少女は俺に、武器の鋒を向けてくる。

 俺は突然のことに驚いて思わず後ずさってしまう。

「アラタに文句があるのか?」

 さらに獣人の少女は鋭く俺を睨みつけて首に刃を近づける。

 ヤベェ。こいつ、その気になったら何の躊躇いもなく俺を殺す奴だ。

「いや、ありません。ごめんなさい、はい」

 どれだけ焦っていたのか、俺は口早にそう告げて逃げ出すかのように、そこから走り去る。

 後ろから笑い声が聞こえるが気のせいだろう。

「一回ぶん殴ってやる!」

 俺が少し離れた所でそう叫べば、突然に俺の立っている場所が爆ぜた。

「どわああ!!!!」

 まあ、彼の仲間の魔法使いの少女だろう。発言の自由とか、思想の自由とかは認められないのだろうか。

 それとも、俺が殴るって考えてるのが悪いのか。

 当分は関わらないようにしよう。

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パーティからメンバーを追い出した結果 ヘイ @Hei767

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