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ギリシャ神話は昔から伝えられている物語であることは言うまでもない。ただ、その昔にギリシャ人の教養だと言われると、私は素直に受け入れることができなかった。今日の教養といえば、数学、理科、社会、などなど学校で習いそうな科学知識を私は想像するからだ。物語が教養になるとは思えないのだ。これが私の抱いた疑問である。国語で習う物語も教養だと言う人もあろうが、それとは趣が若干異なる気がするのだ。ギリシャ神話は物語としてではなく、一つの科学として受け入れられていた気がする。

今日の教養である科学知識はどのようなもななのだろうか。そもそも科学というものは現象の理由を解明し、それを体系付けたものである。つまるとこと、未知の現象を謎解いたものと言えるであろう。雷が落ちるのは、空と地面の間に電位差ができるからであるし、波が発生するのは、月の重力が海に影響しているからだ。謎を解明しようとした人が初めからそんな結論を導き出していたかと言うと、そうではないだろう。雷が落ちるのは神の怒りに触れてしまったからだと思っていたかもしれないし、鬼が太鼓を叩いて回ったからだと思っていたかもしれない。波に関しても同様で、何かしらの神様が、海と綱引きをしていたと思っていたからかもしれない。

私たちからしてみればこれらは作り話だろう。しかし、同様に私たちが導き出し、今も正しいとされている科学知識が完全に正しいと言えるだろうか。百年後の未来では完全な作り話だとして一笑にふされている可能性だって否定できない。それは古代ギリシャ人にとってのギリシャ神話と現代を生きる我々の科学が時代と、内容が違うだけの同じものだと言えるのではないだろうか。

ここでギリシャ神話に出てくるオリンポス十二神を並べてみようと思う。これらの神々はギリシア神話を代表する神々であるから、ギリシャ神話を考えるためにはちょうどいいだろう。

ゼウス、ヘラ、アテナ、アポロン、アフロディテ、アレス、アルテミス、デルメル、ヘパイストス、ヘルメス、ポセイドン、ヘスティア、ディオニュソスである。

これらは何の神であるかというと、順に、雷、婚姻、戦略、芸術、愛、戦争、狩猟、農耕、炎、旅人、海、かまど、豊穣。である。

これらは当時の人々の生活の基盤となっていたものばかりだ。当時のギリシャ人はこれらのことばかりに執心していただろう。だから、当然疑問を抱くこともこれらに収斂されるのだ。「なぜ我々は戦争に負けたのだろうか」「なぜ彼と結婚できなかったのか」「なぜ今年は不作なのか」

これらの現象の答えとなったのがギリシャ神話の神々だったのである。例えば雷が落ちたせいで不作であったのなら、ゼウスがディオニュソスを攻撃した。と解釈されるのである。現象の解釈という点で、我々の科学と同じであると言えるだろう。

残る疑問はなぜ神が存在するだけではなく、物語が事細かに綴られていたのだろうということだ。

しかし、それについても私たちの科学と照らし合わせればわかろうというものだ。ニュートンの万有引力を説明する時に必ず話題に上がることがないだろうか。ニュートンが万有引力を発見したのは木から落ちるリンゴを見たからだ、というと話だ。これはあたかも真実かのように伝えられているが、嘘である可能性が高いらしい。ようは万有引力を説明しやすいように作った話なのである。私はニュートンが在籍していたというケンブリッジ大学に行ったことがある。その時に「これがリンゴの木だ」と向こうの学生が紹介してくれたが、「あの有名なリンゴの木か?」と聞くとお茶を濁された。

これと、ギリシャ神話が神話であることと同じなのではないだろうか。ギリシャ神話の神々には人間味人間味、つまりキャラクターがあり、物語がある。不倫したり、子供を作ったり、恋をしたり、戦ったり。これらは現象を理解しやすくするためのニュートンのリンゴの木なのだ。

よって、ギリシャ神話が当時の教養であることはなにも不自然ではなく、我々の科学と酷似していることがわかった。数百年後の未来には、科学が教養だったことを疑問に思った学生がそのことについてレポートを書いているのかもしれない。

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