不思議な縁と関係の話。

 

「でもそれと俺に一体何の関係が……?」


「そうですね。ズバリ言わせてもらいますけど……。中峰くん。あなたは今現在、好きな人、もしくはがいますね?」


「……っは?てっ……。えぇ!?」



 大橋さんからの驚愕の質問。現在の俺は、今まさに憧れの女子に対面しているのだが……。まさかのその子本人からそのような確認にも似た質問を投げかけられていた。


 そもそも、大橋さんが俺の事を信用出来る理由のもう一つを聞いていた筈なのに、この問い掛けは一体どういう事なのだろうか?


 俺は完全に思いもよらない彼女からの確認に、全く動揺を隠しきれず、思わず素っ頓狂な声を上げてしまっていた……。



 すると、俺のその反応を見た大橋さんは何やら納得したように頷き、「やっぱりこの反応そうでした。--ちゃんが言っていたように……。」と、ぼそぼそと呟いている。


 俺は大橋さんのそんな様子に少しの疑問を抱きながらも、とりあえずは、彼女の話の続きを聞こうと思い直して、『もし、そうであったとすれば……。どうなのか?』を、そのまま彼女に尋ねてみると……。



「いえ……。そうであったとすれば、益々の朗報であったと言わざるを得ません。

 中峰くん!お願いします!あなたが私の友達のの事をずっと遠くから見る位大好きな事を重々承知していますが……。その上でどうかお願いしたいんです!

 どうかそれが……。実は私の事が好きだったという事にしてもらえませんか?」


「えっと……。ゆりちゃん?って、えっ?」



 正直、大橋さんに俺が彼女を憧れていたという事がバレてしまっていたのか?と、内心ドキドキしていたのだが……。何これ?


 色々と言いたい事があるのだが……。まず第一に、ゆりちゃんって……。どこの誰だ?



 現在俺の頭の中は、そんな誰であるかも分からない人物を気になっている前提で話を進められていて、その上それが憧れの女子から言われてしまっているという現実に、言葉以上の衝撃が混乱を持ってもたらされていた。


 しかし、一旦謎のゆりちゃん氏の事を置いておくとしても……。先程の話で色々と聞き捨てならない事を言っていた気がする。



「あ、あの……。色々と疑問に思う事があるんですが……。根本的な話として、俺が大橋さんの事を好きだったことにしてくれって、一体どういう意味なんでしょうか……?

 それと、もしそれをしたとすれば、大橋さんに何か都合の良い事があるんですか?」


「はい。勿論、中峰くんにお手伝いしてもらえれば、とても助かってしまうんです!

 ……っと、すいません。少し声が大きすぎましたね。それで……。もし中峰くんが初めから私の事を気になっていて、ゆりちゃんじゃなくて私の事を見ていたって事にしてくれれば、私も運命の相手との同居をどうにか回避する事が出来るかもしれないのです!」



 そして、根本的な疑問について大橋さんに尋ねてみた所、その解答はある意味で俺の予想通りの行動理由であった。


 なぜそれが、俺の協力で成立するかが疑問ではあるが……。大方、現在思いを寄せる相手がいる事を理由にその決められた相手との同居を避ける事が出来る、一部例外措置の適用を想定しているのだろう。



 そもそも、この『AIによる運命の相手を知らせてくれるシステム』には、それが適用される条件として二つの条件が存在するのだ。


 一つはその対象が物事を自分で判断できるようになる高校生以上である事。そして、もう一つはその対象に現在交際している相手もしくは、意中の相手の存在が確認できない事などが挙げられているのだ。


 そこで彼女は、その二番目の条件の例外。意中の相手の存在を理由に、この決定からどうにか逃れようと考えているのだろう。


 だからこそ彼女は、俺にその相手役をお願いしたいと俺に頼んだという訳だ。



 しかし、そのような行動理由に気付いた俺であるが、大橋さんの想定の問題点についても同時に気付いてしまっていて……。



「でも……。そんな事をしたとしても、学校からの事実確認でバレてしまうのでは?

 確か前にそんな事例があって、『第三者への調査で、そのような事実を確認出来なかった。』と言われたんじゃなかったですか?」


「はい。その事も承知しています。確か私たちから二学年上の先輩で、当時は結構な話題になったと聞いています。それに関しては、自分で詳しく調べましたので理解しています。」


「じゃあ……。やっぱり、そんな事を成功させるなんて……。俺たちってほら、今日初めて会って話した訳ですし、それで意中の相手だと言い張るのは難しい……。

 それにさっきの事例のように、俺たちにはが存在しないじゃないですか?

 やはりその事も踏まえて考えると、この計画にはどうしても無理が……。」



 このように俺はこの計画の無理がある点を指摘して、あまりに荷が重すぎるこの話を終わらせようと考えてたりしたのだが……。


 よく考えてみれば、全く縁のなかった大橋さんと俺との間に、偽りとは言え何かしらの関係が出来るのは、俺にとってプラスな出来事では?と、そんな風にも思えた。



 そして、俺が自分の頭の中でどうするべきか頭を働かせていた所「ふふふ……。」と、なぜか俺に対面する形で座る大橋さんが、先程の上品な微笑みとは違うイタズラが成功する事を確信したときのような、そんな見事なまでのドヤ顔をその顔に浮かべていて……。



「ふふふ!それがまさに、この計画は理由になるんですよ!

 それにつきましては、ゆりちゃんにも既に同意を得ていまして……。」



 などと、色々と最初の印象からかけ離れた様子(主に現在見せているドヤ顔など)の大橋さんは、正直、それまでの男性が少し怖いと言っていた話からは、まるで考えられないような……。アホの子が考えたような計画を俺に(ドヤ顔で)話してきたので。


 自分とはかけ離れた存在だと思っていた彼女に対して、親近感のような感情を持つ事は出来たが……。色々と彼女に抱いていた幻想がガラガラと崩れていくような、そんな不思議な感覚に陥ってしまったのだった……。



 そうして、思わぬ偶然から始まったこの出会いは……。結果として、俺と彼女の間に不思議な縁と関係を作り出してーー



 ーー回想終了、次話へと続く。ーー

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