第21話 模擬戦終了
昨日、ジャンル別週間ランキング152位まで来ました。
激戦の異世界ファンタジーで、ここまで来たら良いのでは?
☆レビューいただいた方ありがとうございます!
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気を取り直し、我はミカギリに向き直る。
「さあ、どこからでもかかってきて下さい」
「ひっ!!」
ミカギリは悲鳴を上げた。
1歩後退ると、今度は地面に足を取られ、スッ転んでしまった。
完全に戦意喪失している。
どうやら、やっと我との戦闘力の差を理解したらしい。
我は無警戒にミカギリとの距離を詰める。
一瞬にして前に現れた我に、ミカギリは抵抗すらしない。
完全に居竦んでいた。
「ミカギリ先輩、老婆心ながらお伝えしますと、この大太刀がダメですね」
我はまたあっさりとミカギリから大太刀を奪った。
「き、貴様……。何をする? それは聖剣のレプリカだぞ」
聖剣のレプリカ?
これが?
ふーん。まあ、多少は魔力を感じるが。
我に向けられた聖剣の100万分の1もないぞ。
所詮はレプリカか。
だが、それでもミカギリのような輩に持たせておくには、少々持ったいない代物だ。
【
我は風属性系の消滅魔術を使う。
大気を細かく操作し、物体を超震動させて破砕する魔術だ。
一瞬にして、聖剣のレプリカは消滅する。
さらさらと音を立てて、地面に落ちた。
「ああ……」
ミカギリは情けない悲鳴を上げる。
砂になったレプリカを名残惜しそうに見つめた。
我は続いて魔術を披露する。
【
巨大な樹木を生み出す。
さらに【
現れたのは、一振りの木刀だ。
それをミカギリに投げて寄越す。
「あなたには、それがちょうどいい……。それで日に1万……。いえ。毎日十万回素振りをなさって下さい。そうすれば、いつか私と対等に戦うことができるかもしれませんよ」
「…………け…………る、な」
「ん?」
「ふざけんなああああああああああああああああ!!」
ミカギリは激昂する。
どうやら、早速木刀を試したいらしい。
仕方がない。
また先ほどの返し技を使うか。
良かったな、ミカギリ。
さすがの我でも、木刀で首を斬ることはできぬ。
折ることはできるがな。
そこまで…………。
厳かな声が聞こえた。
その聞き覚えのある声に、我は足を止める。
ミカギリも同様だった。
声の方へ視線を向けると、アリアル・ゼル・デレジアが立っていた。
聖クランソニア学院の学院長にして、【大聖母】の異名を持つ老婆である。
我の憧れだ。
「アリアル様」
我は慌てて膝を突く。
それに倣うように、他の者も頭を下げた。
「お久しぶりですね、ルヴルさん。元気そうで良かったわ。少し元気が有り余りすぎているようだけど……」
アリアル様は優しげな声をかける。
だが、あの院長室であった時とは、違う。
雰囲気に何か棘があった。
どうやら、怒っているらしい。
そして、その矛先は我ではなく、ミカギリに向けられた。
「学院長様、ご機嫌麗しく」
「ええ……。ありがとう、ミカギリ君。ですが、すべて聞きました。Bクラスのルマンド君の腕を切り落とし、あまつさえ下級生と私闘を繰り広げるとは」
「それは勘違いしておられます、学院長様。今のは模擬戦でございます」
「それだけではありません。最近、あなたたちの『
「そんなことはありません。『
「それがこの騒ぎですか? 審判や他の教官を脅したとも聞きましたよ」
「それは他の貴族も同じ――」
「今はあなたに言っているのです」
アリアンはピシャリと言い放つ。
なるほど。
アリアン学院長は、優しげに見えるが、怒る時は怒るのだな。
教育者として、さすがの貫禄だ。
「どうやらルヴルさんの言うことが、もっともなようです。あなたは少し頭を冷やした方がいい。あなたから『
「なっ! ちょっと待ってください! 『
「それはあなたが思い悩むことではありません。ただ――――これはあくまで私見ですが、私はルヴル・キル・アレンティリにもチャンスはあるとと思っています」
周囲がざわつく。
「ジャアクが『
「マジかよ」
「でも、実力はあるぜ」
「ああ……。ミカギリ先輩は手も足も出ないんだからな」
周りの陰口にミカギリは反応する。
ギッと睨むと、動揺が静まった。
我はどう反応していいかわらかなかった。
『
アリアン学院長の誘いも嬉しい。
だが、肩書きというのが、我には好かん。
そもそも我には、すでに魔王という肩書きがある。
これに比肩するものなど、何もなかろう。
学校の優良生徒の証をもらうぐらいなら、回復魔術の神髄を教えてほしいものだ。
アリアン学院長の言葉は続く。
「そもそも彼女の入試成績は、歴代でもトップ――――今後の学院の歴史において、塗り替えることはまず不可能といえるほど、素晴らしいものでした。ただ最終試験において、問題があり、検討の結果Fクラスとはしていますが、彼女の実力はAクラスに入ってもおかしくないものでした」
「ジャアクが、Aクラス……」
「そして、ルヴルさんの実力はAクラスにも留まらないでしょう。『
「げ、現役の聖剣使い…………」
「この意味はわかりますか、ミカギリ君。つまり、ルヴルさんはこの学院最強……。おそらく『
「ちょ、ちょっと待ってください、学院長殿。今、聖剣の空きは『
「そう。その所有者にもっとも近いのは、彼女だということです。……とはいえ、彼女は聖女候補生。聖剣使いになれるのは、聖騎士のみです。むろん『
「くそっ!」
「どこへ行くのですか、先輩?」
「あ゛あ゛??」
「今の話はともかく……。また再戦できるのですよね」
「チッ!」
ミカギリは最後に舌打ちだけを残して、その場を去る。
我はその後ろ姿を笑顔で見送る一方、アリアンはやれやれと首を振った。
「暴走がなければ、良い聖騎士になれるのですが……。レプリカとはいえ、聖剣が持つ魔力に当てられたのでしょうか」
「気に病むことはありません、学院長様。その聖剣は私が粉みじんにしておきましたので」
それを聞き、アリアンは微苦笑を浮かべる。
そして我の肩に手を置いた。
「あなたには苦労をかけますね」
「いえ……。これもまた回復魔術を極める道に続いていると信じておりますので」
我が答えると、アリアンはまた何か苦しそうに微笑んだ。
そして、教官たちとともに下がっていく。
何かご病気だろうか。
ならば、いずれ我の回復魔術で癒やしたいものだが……。
「ルーーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーん!」
いきなり後ろから飛びついてきたのは、ハートリーだった。
その目には涙が浮かんでいる。
どうやら、心配をかけたようだ。
我はハートリーの手を取る。
「心配をかけてごめんなさい、ハーちゃん」
「いいんだよ。ルーちゃんなら大丈夫って思ってたから」
ハートリーは涙を拭いながら答えた。
「ルヴルさん、凄かったわ」
「あのミカギリ先輩に勝つなんて」
「首を切るとか言い出した時は焦ったけど」
「学院長にも認められてたよね」
「凄いよね。現役の聖剣使いに匹敵するって
口々に絶賛する。
すると、ハートリーが心配そうに見つめた。
「ルーちゃん、『
質問する。
皆の視線が、我の方に向いた。
どうやら、学院長の言葉が気になるらしい。
我は首を振って、否定する。
「それはありえません。私は聖女。回復魔術を極めたいだけです。『
これは偽らざる我の本心だ。
さっきも言ったが、『
我が欲しいのは、回復魔術の神髄なのだから。
「さすがは、ルヴルの姐さんです。そうこなくちゃ」
続いて現れたのは、ネレムだった。
こうしてクラス対抗の模擬戦は終わった。
色々とあったが、我にとっては収穫の多い戦いであったと思う。
1つ不満があるとすれば、まだまだ我の回復魔術は未熟だということぐらいであろう。
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一先ず区切りとなります。
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