10.1 相手してたら結局寝るの2時過ぎ
上大座で下車して、ペデストリアンデッキをしばらく歩いて駅前のロータリーを越え、小さめのお店が並ぶ通りを抜けてショッピングモールへ。
大きな広場みたいなところにぽこぽことお店が建っている。俺がここに来るのはわりと久しぶりだ。
案内板の前で俺がかがみこんで、小月さんは少し背伸びして、それらしき商品を扱っていそうな店の目星をつける。
「このお店かな。池辻くん入っていい?」
「もちろん」
案内板で見ると遠くに感じるけど実際に歩くとすぐに着く。
ウインドウにひらひらした可愛らしい服を着たマネキンが飾られている。俺一人だとちょっと入りづらいけど今日は小月さんと一緒なので問題なし。
入った右奥にそれっぽいのを見つけて小月さんが向かう。左側に下着があったのが見えたけど気にしない。ほんとほんと。
「これとかかな。どう、池辻くん?」
「うん」
「可愛いけど、もう少し涼しそうなのがいいな」
「うん」
「これは?」
「うん」
「……池辻くん、さっきからうんしか言ってないけど」
「小月さんが着てるとこ想像したら脳がフリーズした」
「うん? どれがいいとかある?」
「全部いい」
「……参考にならないねぇ」
「しょうがないよ、中身が小月さんならなんでもいい」
「またすぐそういう……」
小月さんがもじもじしだしたところでさりげなく寄り添ってくる人影。店員さんが小月さんに話しかけてくる。
「なにかお探しですか?」
綺麗な人だ。大人になった日向さんをちょっとラフにして胸をより平らにしたような。良かった。もし選んでるのが自分だったら色香に惑わされて、言われるがままにいろいろ買わされてしまいそうだ。
「寝るときの服、見たいんです」
「なるほど。そちらは彼氏さんですか?」
「へあっ! え? あ、まあそんなような、です、ね」
小月さんがわたわたしながら答える。ちゃんと肯定してくれて嬉しい。
「素敵ですね」
さすがプロ。「おまえの彼氏いまいちじゃね? ってかなくね?」とか口に出したりはしない。なにが素敵なのかまでは思いつかなかったみたいだけど一応なんとか褒めてくれた。
「そ、そうですか。ですよね! ありがとうございます。それでその、彼に見られてもいいようなのが欲しいんです」
小月さん上機嫌。
お店のお姉さんが若干頬を引きつらせながら質問してくる。
「……見られてもいい?」
「夜、彼が急に呼び出すから準備しておかないといけなくて」
お姉さんがちょっと頬をぴくぴくしながら答える。
「……そうなんですか」
俺を眺める視線が冷たい。なんでだ。説明したほうがいいのかな。
「昨日の夜とか、もうほんと急なんでびっくりですよ。相手してたら結局寝るの2時過ぎになっちゃって。今朝は二人で学校遅刻しちゃいました!」
「……ほー」
さらにお姉さんの視線が冷たくなった気がする。おかしいな。
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