7.6 やっぱりプライベート用だ

「いいから。続けて続けて」


「続けないよ。入って」


「いいじゃん。いいかんじにサカってたからつい」


「そんな動画どうするの」


「そんなって。悪くないと思うよ?」


「確かにちっちゃくなった小月さん可愛いけど」


 ちっちゃくなってなくても元からちっちゃいけど。

 どっちのサイズでも可愛いけど。


「そうじゃなくて」


「?」


「鼻の下を伸ばして美少女フィギュアをおさわりする男子高校生が撮れた」


「フィギュアじゃなくて小月さんだよ! 美少女は合ってるけど!」


「それは視聴者の判断に任せよう」


「し、視聴者って誰!?」


 何言い出すんだこの人。


「ふふん。ではこのへんにしておいてやろう。お茶とお菓子持ってきたよ。あとこれ!」


 ばばーん、と自分で効果音を出してボール紙とクラフトテープを見せる日向さん。

 

「……監禁用?」


「なんでよ。まあいいから見てて」


 いくつかあるドールハウスの家のひとつを持ち上げて床をくりくりやりはじめる日向さん。しばらくして床、というか土台の部分がはずれる。


「外れるんだ」


「普通は接着してあると思うよ。これはまだ仮組みしただけのやつだから」


 外した床の大きさに、段ボールを切る日向さん。つづいて真ん中に丸い穴を開ける。


「ほら! この穴から千穂をだして、他をかぶせればそれっぽくなるかなって。いけそうならきちんと作るから試しに入ってみてー」


 なるほど。

 これなら切らなくても小月さんが家に入れる。


 日向さんがそーっとかぶせるのにまかせて、小月さんも気をつけをしておとなしく待っている。


 小月さんの身体を通す途中で少し小月さんが声を出す。


「いたっ」


「ごめん、だいじょぶ?」


「ちょっと穴きついかも。あと切り口のとこが刺さる」


 日向さんが穴をカッターで調整して再度小月さんにかぶせる。

 刃物を持っている姿を見るとついびくびくしてしまう。

 

 今度はうまく入ったようだ。

 そこに先ほど外した上部をのせて、小月さん入りドールハウスが一応完成。床はまだ段ボールだしいくつかテープで留めてあるだけのところがあるけど、十分かっこいい。


「千穂、大丈夫?」


「うん。すごいよこれ。ちゃんと家ってかんじだ」


 ちっちゃくなった小月さんに合わせた家。

 

「いいな、これ。ちっちゃくなったときいつもこんなならいいのになー」


「作ってあげる。仕上げたら池辻くんに持っててもらえばいいでしょ」


「ほんとに!? それはちょっと楽しみ!」


「まだそれは作り途中だからね。それで完成と思わるわけにはいかんのだよ」


「奈美ちゃんありがと!」


「こちらこそ。はー、千穂可愛い。ほんと可愛い」


 当然のごとくスマホを構えたまま話す日向さん。

 でも、小月さんが本当に可愛いからこれはしょうがない。


 一応懸念を伝えてはみる。

 

「日向さん、でもこれ結構でかいし目立つよね。屋外だとちょっと厳しいかも」


 長いベンチとかあればいけるか。とはいえ美少女フィギュア入りドールハウスを股間のせた男が寝そべっていたらちょっとシュールすぎるな。やっぱりプライベート用だ。


「ふふん。そう思って、携帯用を試作してみたのだよ」


「携帯用?」


「じゃじゃーん。これだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る