6.1 中学の戦績だと9勝1敗5引き分けなんだ
「お似合いだね、千穂と池辻くん」
唐突に日向さんがつぶやく。
「ありがとう」
「千穂が池辻くん気に入ってるのは前から聞いてたけどさ。池辻くんとはあんまり話したことなかったからどうかなって思ってたの。でもすごくいいよ」
小月さんが人差し指を鼻にあててなにか日向さんにアピールしている。
少し元気になったのかな。
「……ちょっとずるいよな」
多分自分たちのことを知ってる人ができて安心したのかもしれない。つい気になっていたことを話してしまう。
「ずるい?」
「小月さんから見れば俺のとこに勃っちゃう時点で俺と付き合うしかないと思ったのかもしれないって」
「そんなことないよ。千穂はもともと池辻くん好きだし」
小月さんが一生懸命日向さんに手を振って、両腕でばってんを作っている。コミカルな動きだけど可愛いとしか言い様がない。
「どうかな」
「さっき興奮したのは私がくっついたからでいいんだよね。でも小さくなったのは私じゃなくて千穂だったじゃん」
「そうだけど。それはほら、おまじないの効果なんじゃないの?」
「そんなの関係あるわけないでしょ。お互いに好きだったからこそだよ」
「そうなのかな」
「池辻くん、千穂のこと好き?」
「ああ」
即答。
小月さんがなんか正座してる。
「千穂も池辻くん好きだよね?」
急に話を振られて、小月さんが手をばたばたさせながらあっちこっち見てごまかそうとする。それでも日向さんがそのまま小月さんを見つめ続けるのに観念したのか、正座しなおして下を向いたまま小さくうん、と答えてくれる。
肯定してくれるのが嬉しいし、一連の小月さんの動作がたまらなく愛おしい。
「だよね。でも千穂、これからも私の相手もしてね?」
今度は力強く、小月さんがぶんぶん頷く。
「日向さんは誰か気になる人いないの?」
「奈美ちゃんは彼氏作る気ないんだって。もったいないよね」
小月さんがミニサイズのまま、3人で話をしようとするとなんとなくみんなで顔を寄せあうかんじになる。日向さんが身体を寄せるのが少し恥ずかしいが今は小月さんだからいいかな。
「これでもそこそこモテるのだよ、池辻くん。君は千穂しか眼中にないから興味ないだろうけど」
日向さんがえっへん、と胸を張って言う。嫌味なかんじにならないようにしているのだろう。真面目な話っぽいのでそのまま黙って聞く。
「中学の戦績だと9勝1敗5引き分けなんだ」
「どういうこと?」
聞き流しそうになったが、恋愛の星勘定としては不自然な数字だ。
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