5.5 1/1スケールの女の子とくっついて

 やがて動画は小月さんがシャツをはだけてくれた場面へ近づく。先ほどの小月さんの台詞が日向さんのスマホから再生される。

 

『戻るために仕方なくだからね?』


「そうそう、これ。どういうこと? あ」


 動画の小月さんがシャツのボタンを外そうとした場面で、日向さんのスマホに手を伸ばして再生を止める。


「お、池辻くん紳士じゃん」


 えっちな場面にさしかかったので小月さんを気遣って止めた、と思ってくれたのだろう。そうなんだけどそれだけじゃないんだ。


「……この先見ると多分また小月さんが勃っちゃう」


「たっちゃうってなに? ……あ、なるほど。ほほぅ」


 日向さんが若干目を細めて微笑む。この表情はちょっとずるい。なにをしているわけでもないのに色気がすごい。


 スマホに手を伸ばして動画を再生し直す日向さん。

 すぐ止める俺。


「これ見たらまた千穂がちっちゃくなるってことなんでしょ? みーたーいーっ」


「駄目だって!」


「もう教室誰もいないし。私はもう見ちゃってるし。池辻くんはちっちゃい千穂嫌いなの?」


「大好きだよ! ちっちゃくてもおっきくても!」


「じゃあいいでしょ」


「だめ」


「……んー」


 考え込む日向さん。

 しばらく小月さんを眺めてから再び俺のほうを見て、椅子から立ち上がる。


「ふふん」


 また目を細めて一歩こちらに近づく。普段上から見てる日向さんだが下から見てもやっぱり美人だ。


 そのまま近づいた日向さんが俺の膝の上に向かい合わせでそのまますとん、と座る。


 は?

 

 俺と小月さんはしばらく思考やら動作やらがいろいろ停止する。

 なんだこれ、日向さんのお尻あったかい。っていうか柔らかい。

 

「奈美ちゃん! ちょっとまってなにそれー」


 小月さんの抗議は無視して、日向さんはそのまま身体を前に少しずつ倒してくる。


 この、日向さんの顔を正面から見る視界がやばい。 

 女の子をこんな真ん前から見る機会なんてほとんどなかった。しかも超絶美人の日向さんだし。つい顔から目をそらす。日向さん胸は普通だ。さらに視線を外した先にも首やら鎖骨やらが見えてさらにどきどきする。……いや、鎖骨大事だろ。


 逃げるように身体を反らしたものの、顔が少しずつ近づいてきて横髪が俺の顔に触れる。くすぐったさに若干身をよじると、くす、と笑った日向さんが手で自分の髪をどけて、そのまま俺の短い髪をさわさわと撫でる。


「だめだよ、急になんなのっ!」


 小月さん、今いいとこだからちょっと静かに。

 じゃなかった、一瞬意識が飛んだけど小月さんの前だった。いや、小月さんいなくてもだめだった。


 日向さんにどいてもらわなきゃ。

 あーでもなー、おんなのこをおしとばすわけにいかないしなー。やーもーこまったなー。


 とか思いつつもさすがにこのままじゃだめだな、って立ち上がろうとしたところで日向さんにぺたってくっつかれた。


 小月さん好きすぎて忘れてたけど俺もともとおっぱい小さい子好きなんだった。いや、別に日向さん別にぺったんことかじゃなくてごく普通なんだけど。


 1/1スケールの女の子とくっついてみて、俺の趣向が間違っていなかったことが今証明された。


 なんかおっぱいとお尻だけ柔らかくて他の場所は自分と一緒、みたいなイメージだったけどそんなことはなかった。


 女の子って全身がやわらかい。もう指先やら胸やら足やら、全てがとろけてる。

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