5.4 3人で動画鑑賞

 放課後俺、小月さん、日向さんの3人で教室に残る。

 俺の机のまわりを、向かいに小月さん、右に日向さんが椅子をもってきて囲んでいる。

 時節日向さんがなにか話をしてくれるのだが、緊張している俺と小月さんは短く答えるだけだ。


 日向さんはいろいろと小月さんと対照的な女の子だ。


 雑誌とかで見るモデルさんって、よーくみるとわりと浮世離れした雰囲気持ってるだろ。実際に見るとうわ、ほんとに綺麗なんだ、って思う。写真の優劣の話じゃなくて、本物を3次元のまま肉眼で見るインパクトってすごいんだ。そんなかんじ。


 日向さんは160cmをやや越えるぐらいの身長で、すらっとした体型。細くて、足も指もいちいち長いし鼻もすくっと伸びている。美人そのもの。


 髪は全体にゆるっとウェーブがかかっていて、シンプルに後ろでまとめてあるだけなのに美容室の見本みたいにきれいに収まっている。横に垂れた毛や結んだ先の流れがふわっとして、全体のバランスがいい。


 好みのタイプ、みたいなのは誰だってあると思うんだけど日向さんレベルだともうそういう個人の趣向とかどうでもよくなっちゃう。俺も入学当初一瞬憧れてた部分はあるし、多分それは俺だけじゃないはずだ。


 しばらくして小月さんが他の人類を圧倒していることに気付いてからは小月さん一筋だけどな。まあ世論調査的な調査をしてなんらかの順位を決めることがあったら日向さんがトップだろう。学内どころかもっと広い範囲でもこんなレベルの子はそうそういない。


 そのままだったらろくに関わりを持てないめっちゃ美人のクラスメイトAさんだったんだけど、日向さんは小月さんと仲がいい。2人でいつも一緒にいる。小月さんばっかり気になっていた俺には自然と目に入る機会が多くなる。


「そろそろいいかな。とりあえず二人はようやく付き合いだしたってことでいいの?」


 静かになった教室で、話を始める。


「ど、どうかな、池辻くん」


「一応ほら、昨日からそうってことでいいんじゃないかな?」


 曖昧な物言いが気に入らなかったのかスマホを取り出して例の録音を再生しようとする小月さんと、それを阻止する俺。

 俺と小月さんがむにゃむにゃし出すのを見て察したらしい日向さん。


「そっか、おめでとう。池辻くん、とりあえずさっきの動画見る?」


 撮ってたやつか。見たい。


「見たい」

「私も」


 小月さんも自分がどう見えるか気になってたらしい。

 と、いうわけでまずは3人で動画鑑賞。


 小月さんが小テストに真剣に悩む様子から始まる。

 随分前から撮ってたんだな……。

 

 やがて消しゴムを落として俺が貸す場面。


「これ、ここの小月さんが消しゴム使った後の表情がもうほんと可愛いんだ。どうよ日向さん?」


「よく撮れてるでしょ? 可愛いよね」


 小月さんは黙っているが、スマホの画面やら俺と日向さんの表情やらをちらちら見ている。

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