4.2 池辻くんがなんだか鬼畜っぽいんだけど

「なんで? その、いつもしてることでいいんじゃないの?」


 ダイレクトな単語を避けてるせいで話が通じづらいな。これはもうしょうがない、小月さんは嫌がるだろうけどきちんと指そう。

 

「今小月さんになっちゃってるからできないんだよ、オナニー」


 小月さんは最後のオナニー、という単語に少しぴくっとしたけど、真面目に話を聞いてくれた。


「昨日の朝のは違うの?」


「あれは多分夢精みたいなもの。自動で出るかんじ」


「よく分からないけど、む……自動のじゃなくて、手動のときにすることを今の私にすればいいんじゃない?」


「そうなのかもしれないけど」


「じゃあ試してみよう」


「……触らないとできないけど。いいの?」


「え?」


「小月さんを。手で握っちゃうけど」


 小月さん顔真っ赤。ほんと可愛いなぁ。

 

「あの、ほら、わ、私たち付き合い始めてまだ24時間すらたってないんだけど」


「やっぱやだよね」


「体中触られちゃうってことだよね……でもそうしないと駄目なんでしょ?」


「たぶん」


 固まったままあっちこっち目を動かす小月さん。


「……いいよ」


「ほんとに?」


「ち、違うからね? どうしようもないからだからね? 他に人がいないとはいえ駅で私から戻るとかちょっと上級者向けすぎるし?」


 小月さんの覚悟を無にしてはいけない。ならば一刻も早く。


「よし。始めよう」


「や、優しくね?」


「強くしないと終わらないよ」


「あれ。普段優しい池辻くんがなんだか鬼畜っぽいんだけど」


「いつまでも多目的トイレ占拠するわけにいかない。さっさと済ますぞ」


「え、ちょっと、ほんとどうしちゃったの池辻くん、あ、まあでもこれはこれでありっていうか」


 小月さんを左手で優しく包む。

 

「ふあぁ。き、緊張するね」


 小月さんは可愛い。さらに手のひらに感じる柔らかい感触に脳がとろけそうになる。


 目を閉じて小月さんに宣言する。


「いくよ」


「あ。その言い方柔らかくていいかも。うん。そっか、こんなかんじでいいんならいつもこれでよかったね。あ!」


 小月さんが叫んだので一旦目を開ける。


 なにやらスマホでごそごそやってる小月さん。

 スマホは小月さんサイズに縮んでいてちょっと分かりにくいが、いじっているのは昨日と同じアプリだ。


 ……え、録音するの? 別に音とかしないけど。録ってどうするの。


 ボタンを間違えないよう、慎重に確認して赤丸をタップする小月さん。


「いいよ」


 またはいどうぞ、みたいに手を出してくる。


「よし。じゃあ、いくよ」


「……うん♡」

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