4.1 戻り方が分からない

 多目的トイレに鍵がかかったのをランプで確認して、急いで座り込み、ズボンを下ろしてトランクスのボタンをはずす。


「ふあっ」


 小月さんが出てくる。

 汗だくだ。

 下着の色は絵の具で言うとローアンバーぐらい。ベージュだな。色はあまり透けてないんだけどさすがにラインは分かってしまう。

 

 待てって、いや、これはさすがにしょうがないだろ。必要ならここを出る前に指摘してなんとかしてもらおう。小月さんのえっちな姿は見るのはいいけど見られるのは嫌だ。


「ほんとに死ぬかと思った。池辻くんありがとう」


 こちらこそありがとうございます。


「なんでまたこんなことになったんだろうね」


「なんでって、まあ、そりゃぺったりくっついたし。それで池辻くんが、ってことじゃないの?」


 おだんご髪をくりくりいじりながら小月さんが説明してくれるが若干要領を得ない。


「勃ったってこと?」


「……分かってるなら人に説明させない。え。わざとなの? い、言わせたいの?」


 よく分からないが小月さんのおっぱいに夢中だったのはばれているようだ。


「ごめん」


「いいよ。まあ悪い気はしないし」


 小月さん、それ以上髪いじると学校着く前にしょんぼりポニーテールに移行しちゃう。もうだいぶ末期だからいまさらかな。


「とりあえず小月さん戻さないとね」


「うん。お願い」


「え」


「いや、さすがに池辻くんでももう分かるでしょ」


 小月さんの言うことは分かる。分かるんだけど分からない。


 海綿体に血液が溜まってどうたらこうたら、みたいな。それで普通なら『千穂ちゃん』が元気になるはずだが、昨日からはかわりにちっちゃくなった小月さんに換わる。


 それは分かる。


 だが戻すってどうすればいいんだ。性的に達する、的なことだと思ったんだけど『千穂ちゃん』がいない状態でどうしろと。


 少し恥ずかしいが正直に報告しよう。


「小月さんになるきっかけは分かるんだ。えっちな気分になったときだよね」


「そ、そう。さっきはその、私のせいってことでいいんだよね?」


 頬を手で抑えてむにむにしてる小月さん可愛い。

 

「違う」


「違うの!?」


「あれは俺のせいだ。小月さんは関係ない」


「ふーーーーん。あっそ」


 あれ、小月さん機嫌悪い?


「俺が全部悪い。ただでさえ可愛い小月さんと一緒にいるだけで幸せなのに、べったりくっついていろいろふりきれちゃったんだ。自制できなかった」


「そ、そう。下げといて上げるとか、なかなか卑怯な手を使ってくるね、池辻くん。まあいいや、えへへ」


 小月さんの機嫌が戻った。


「そこまでは分かるんだ」


「うん」


「でも、戻り方が分からない」

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