3.4 小月さんが消えた
ほんのちらっと一瞬だけちょこっと小月さんの胸元を見ちゃった後、小月さんと目が合う。
これは見てたのがばれてる展開。
しくじった、と思って中吊りの広告を読んでいるふりをしてたらぐいっとへそが押された。
「小月さん?」
「えへへ。暇だからちょっかい出してみた」
小月さんが俺のおなかを指でくりくりして遊んでいる。
ついちょこっとおなかに力を入れる俺。
……ほっとけ。ちょっとかっこよく見せたいんだよ。むきむきのふりをする気はないけど、引き締まった印象を持ってもらいたい。
「ぷにぷにー」
……だめだった。今日から筋トレしようと心に誓う。
そのうちずりずりと字を書き出す小月さん。何書いたかあてろってことかな。
「『す』?」
「あたり」
横線を引っ張って次の字を書きかけてたところでやめて、またつんつんくりくりして遊び出す小月さん。
これはあれだ、少しは鍛えろってことだな。正直俺も小月さんつんつんしたいけどさすがにこれはアウトだ。
そんなこんなで特に何を話すでもなくじゃれているが、一向に電車は動かない。車内放送も同じ内容を繰り返すばかりだ。これ車掌さんにも情報入ってきてないんだろう。大変だな。
そんな中、さらに車内は密度を増していく。さっきスペースを空けたときはまだこちらにも余裕があったが、今はもうひたすら圧力を受けてどうにかつぶれないようにしているだけにすぎない。
ふんばりつつも劣勢を余儀なくされる中、柔らかな感覚を胸の下に感じてしまう。これはあれだ、その、小月さんのおっぱいがあたってるな。
正直感触をじっくり楽しみたいところだがこれはアンフェアだ。やはりこういうのは時と場所を踏まえた上で合意を以って是とすべき案件だろう。ぐっ、と力を入れ直して強引に隙間を作る。
……いや、作ったんだよ、ほんとほんと。でもさー、これだけ圧迫されるとほんとどうしようもなくってー。やーまいったまいった。
とかなんとか頭の中で言い訳しながらくっついているようなくっついていないような状態でいたんだけど、足を踏み換えたところでバランスを崩し、小月さんと完全に密着してしまった。
待って、これはほんとにわざとじゃないんだ。
さっきまで? それは、うん、まあ、ちょっとは……出来心なんですほんとすんません。
小月さんのスペースをどうにか確保するためにぎりぎりでこらえるが、もうおっぱいが触れないようにとか言ってられる状況じゃない。おっぱいに密着、というかもう押しつぶしてる。
こんな状況で最低なのは分かってるんだが、ほら、俺が大好きな美少女小月さんとゼロどころかマイナス距離なんだ。いろんな何かがふっとんでいくわけですよ。
多分苦しいんだと思うけど小月さんが赤くなってて。少し汗かいてて。これがなんかもうエロく見えちゃう。顔見ないように目を閉じたんだけど、かえっておっぱいの感触がよりはっきり感じられる結果に陥る。
今、俺の頭には小月さんのおっぱい、下着、シャツの断面図が描かれている。それらの柔らかさを合計した値を計算するのに必死だ。これと今あたっている感触をイコールで結べば小月さんのおっぱいの柔らかさや下着の形が弾き出せるはずなんだ。
だめだ、変数が3つだから等式が3ついるな。いまおっぱい2つつぶしてるところだからもう一個おっぱいがないと解けないな。あれ、でも小月さんの3つめのおっぱいどこだろ。見つからない。どうしよう。
……そうだな、分かってる。何言ってるんだろうな。今俺頭おかしい。おかしいことぐらいは分かってるんだから大丈夫だ。いや、大丈夫じゃないな、どどどうしようこここれ。
とか昨日小月さんが勃ってた朝ぐらい慌てふためいているうちに、突如おっぱいが消えた。
……じゃなかった、小月さんが消えた。
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