2.4 2週間って! 死んじゃうでしょ!?

「あ、ああ。それでさ、小月さんと少しでも仲良くなりたいと思っていたところにこうするといいかな、みたいなのを見つけてさ」


「違うよ。いいよそんなの」


「え」


 小月さんが冷たい。どうしよう。心が折れそう。


「その前から。ほら、私のことが、ってやつ」


「俺が小月さん好きだってこと?」


「それ! ああ、いきなり言っちゃだめだって。録音始めてからお願い」


 アプリの赤い丸ボタンをタップして、こっちに付き出してくる小月さん。

 はいどうぞ、みたいに右手を下手で出してくる。


「小月さん、好きだ」


 言い終わると、俺を見ながら親指を立てて喜ぶ小月さん。

 このあと俺なにされるんだろう……。


「あ、あとついでだから『おはよう、朝だよ起きて』って言って」


 なんだそりゃ。だが今は従うしかない。


「おはよう小月さん。朝だよ、起きてね。……これでいい?」


 なんかスマホ両手でもって天に掲げている小月さんが謎の踊りを始める。こっちの話は聞いてないっぽい。


「ありがとう池辻くん! なんの話してたんだっけ、もうどうでもいいや。ど、どうしよう、ちょっと恥ずかしいけど、い、一緒に帰っちゃおっか?」

 

「今朝の話だよ」


「それまだいる?」


「その話してたんでしょ」


「そっか。じゃあ一応続き聞くね!」


「あのさ……もしかして小月さんも俺のこと好き?」


 あ、固まった。

 謎の踊りの微妙な姿勢で止まる小月さん可愛い。


「……チガウヨー? カンチガイシナイデクダサーイ」


 ……だめか。なんか反応見てるとそんな気がしたんだけど。やっぱり勘違いなのか?


 まあそうだよな。

 自分が好きな子も自分のことが好き、なんてことは現実にはめったに起こらない。

 ましてや俺のスペックで、相手が小月さんレベルの美少女となるとなおさらだ。


「本当に言いにくいんだけど。その、願掛けっていうかやったことっていうのがオナニーのことでさ」


 顔面蒼白小月さん可愛い。


 ……うわ。

 蔑まれてもしょうがないとは覚悟していたけどここまで絶望的な顔をされると思わなかった。やっぱりオナニーって単語がもうアウトなんだよな……。


「……なんで知ってるの?」


 オナ禁、で調べればいっぱい出てくるよ。


「ネットで」


「ネットに出てるの!?」


「検索すればすぐ出るよ」


「出てきちゃうの!?」


 へたりこむ小月さん。

 いや、さすがにショック受けすぎじゃないかな。俺もうこれ生きてちゃだめかな。でも正直に最後まで言おう。


「ずっと続けてると、その、好きな人とえっちなことしてる夢が見られるっていう噂があって。さすがに信じたわけじゃないんだけど。でもやってみよう、って思っちゃったんだ」


「ずっとって……池辻くんも? 丸一日頑張れば好きな人と、ってやつだよね?」


「いや、大体2週間ぐらいだったかな?」


「2週間って! 死んじゃうでしょ!? 私だって今日ずっとぐったりだしちょっと痛いしでへろへろなんだけど! 違うの? 男の子だと大丈夫なものなの!?」


「待って、落ち着いて小月さん。小月さんもしてたの?」


「し、ししししぃーてぇーまぁーせぇーんーっ! だいたいネットってほんとなに! 私の部屋に隠しカメラとかあるの!?」


 あっちこっち目が動く小月さん可愛い。

 汗びっしょり。

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