2.5 オナニーしない女子高生なんていないからっ!

「そりゃそうだよな。小月さんがオナ禁なんて意味分からないことしないよね」


「……禁?」


「うん。オナニー禁止」


「耐久じゃなくて?」


「耐えるって意味ではあってるけど。ずっとオナニーしないってこと」


「……じゃあなに。池辻くんは私のことが好きなばっかりに操を立てて性欲を我慢し続けた結果、今朝のことが起こったって思ってるの?」


 若干きれいに変換されてる気はするが事実関係に異議はない。


「ああ。それしか考えられない」


「ピュアすぎるでしょ……」


「小月さんはそもそもオナニーなんてしないよね……ほんとなんかいろいろごめん」


「……っ! オナニーしない女子高生なんていないからっ!」


「え?」


「違うの、私がおかしいんじゃないの、これが普通なの! 24時間耐久だって、奈美ちゃんがそそのかすから試してみただけでいっつもやってるわけじゃないの! あと24時間って言っても休憩とかごはんとか挟むんだからね? ノンストップってわけじゃないんだからね?」


「う、うん?」


「女子高生はみんなオナニーしてるから。いい? それだけは信じて。私だけじゃないから」


「分かった」


「……じゃあ私ちょっとこれから死んでくる。今までありがとう池辻くん」


「ちょ! まって、それは困るよ」


「いいんだよ、池辻くん。とんだエロ女でごめんよ」


「だめだって!」

 

「……じゃあ引き取って」


「引き取る?」


「彼女にしてくれるんならもうちょっと生きてみる」


「なってくれるの?」


「私でよければ」


「是非! 小月さん、俺と付き合って下さい!」


「ほんと? ……はい。こちらこそよろしくお願いします。……えへへ。あ、ちょっとまって録っときたい。」


 またごそごそとスマホを弄る小月さん。

 緑の三角ボタンを押して俺にスマホを向ける。


 緑の三角? さっきと違うボタン?


「今の、もう一回言って――」


 言いかけた小月さんが手に持つスマホから、先ほどの小月さんの叫びが大音量で再生された。


『オナニーしない女子高生なんていないからっ!……違うの、私がおかしいんじゃないの、これが普通なの! 24時間耐久だって、奈美ちゃんがそそのかすから試してみただけでいっつもやってるわけじゃないの!』


 ぷしゅーっ、てなる小月さん可愛い。

 

 明日は一緒に学校行こうね、あと死ぬのはなしだよ、って約束だけしてその日は別々に帰った。




 ……どうだ?

 もう分かったろ?

 

 何の話、じゃないさ。

 オナ禁だよ。


 今すぐに始めるべきだ、って俺が言った理由だ。


 オナ禁を達成する。

 朝、君の好きな女の子が勃ってる。

 学校に行くとその子が彼女になってくれる。


 な? 完璧だろ。

 友達に教えてあげてもいいぞ。隠すことじゃないからな。みんなで幸せになろう。


 君が首尾良くオナ禁を達成して彼女ができたら。

 

 そのときこそ、君のちんこの名前を俺に教えてくれ。

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