2.1 学校で小月さんに会って現実だったことが分かる

「小月千穂さんだよね?」


 股間に勃ってる小月さんに思わず確認してしまう。なんでフルネーム。きょどりすぎだろ、俺。


「そうだよー」


 これがオナ禁のご褒美の夢か。夢だな。と、思いたいところだがさすがに夢と現実の区別ぐらいはつく。目の前に勃っている12.9cmの小月さんはどうみても現実の小月千穂さんで、『千穂ちゃん』ではない。

 

「なにやってんの?」


「なにやってんだろうねぇ。朝の支度してたらさー。ここに来てたの。ちっちゃくなって。」


 これは本当にまずい。

 どう考えても俺のせいじゃん。


 相手が小月さんなのは俺が好きで、ちんこの名前を『千穂ちゃん』にしちゃったせいだ。

 今ここに小月さんが来ちゃったのは俺がオナ禁を達成しちゃったせいだ。


「とりあえずごめん」


 いきなり謝る俺に、ぷ、と吹き出す1/12スケールの小月さん。

 

 ん? 12.9cm×12=154.8cmだと150cm越えるからおかしい? いや、計算しなくていいよ。だからちょっと盛ったのは謝るって言ったじゃん。


「池辻くんのせい? 多分私のせいだから気にしないで」


 小月さん優しい。もうほんと好き。

 

「とりあえずそこにいたら危ないよね。降ろすよ」


 そのサイズで転げ落ちたら大けがになりそうな気がする。


「あー、多分無理かな」


「なんで?」


「足の裏つながってるんだよ。池辻くんと」


 つながってるんだよ。池辻くんと。

 

 都合のいい部分だけ頭の中でリフレインして、『千穂ちゃん』に血が貯まる。いまは小月さんだけど。


「……っ」


 小月さんが少し苦しそうな顔をする。

 

 まずいな。これずっとこのままなのかな。

 小月さんさすがに困るよな。


 でもほんと申し訳ないけど、これちょっと幸せだ。小月さんと一心同体。


 ただでさえちっこい小月さんがこんなにちっこい。反則だ。可愛すぎる。このままお世話したり、どうでもいい話をしていたい。


 そんなことを考えていると、どんどん血が『千穂ちゃん』に集まってくる。いや、今はないんだけど。分かってるんだけどそういう感覚。


 っていうか、これ、小月さんに貯まっていってるんじゃないかな、血。とか思ったらもう今度こそ止まらない。俺の血が小月さんを循環して、酸素を届けている。この妄想だけでご飯3杯いける。興奮する。


 小月さーん!


 心の中で叫び、目を閉じる。

 今まで味わったことのないぐらい、幸せな感情。


 おふぅ。


 軽い倦怠感と、頭が研ぎ澄まされる感覚。


 見ると、もう小月千穂さんはいなくなっていた。かわりに、元気のなくなった『千穂ちゃん』が、力なくしおれていた。


 ああ……小月さんが『千穂ちゃん』に戻ってしまった。

 

 ……でも、これでよかったんだ。


 俺は小月さんが好きで、あわよくばお付き合いしたいと願っている。でもこんな状態で手元にいてほしかったわけじゃないはずだ。小月さんの気持ちも考えず、一瞬たりとも幸せだと思ってしまった自分を恥じる。


 随分遅い時間になってしまった。

 ようやく身体を起こして、一日が始まる。


 やっぱり夢だった? そうだな。確かに小月千穂さんがいなくなって、『千穂ちゃん』が戻ってきたこのときには俺もそう思いなおした。


 だが、その日学校で小月さんに会って現実だったことが分かる。

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