王子がかわいそうな婚約破棄

それは、王立学園の喫茶室の個室での出来事




「王子、お話があります。」




「そうか、俺もお前に話がある。」




「はい、おそらく王子のお話について予想がついてはいるのですが、先に私からお話ししてもよろしいですか?」




「ああ、構わん。何だ?」




「それでは失礼します。王子、申し訳ないのですが私との婚約を破棄していただけないでしょうか?」




「え?」




「私は真の愛に目覚めてしまいました。これは大変失礼なことで、王子の婚約者である資格はございません。」




「ちょっと待って、俺との婚約を破棄する?」




「ええ王子、その通りです。」




「いやこっちも都合がいいけど・・・」




「例の件ですね。当然知っておりますわ。王子に好きな方ができたんですわよね?」




「まあ、そうなんだが。」




「壁の影からいつも特定の女子を眺めてばかりいては、誰でも気がつきますわよ。」




「・・・」




「もともと、私はこの婚約を気乗りしていませんでしたので、幸いでした。」




「俺のこと好きだったんじゃ?」




「いえ、全く。まあそこらへんに生えてる雑草よりかは好ましいかな?ぐらいですわね。」




「いや、お前俺のこと大好き大好きと・・・」




「あれは演技です。反吐が出そうでしたが我慢していたので。」




「・・・」




「まあ巷で話題の劇のようにパーティで婚約破棄を申し込んでくることはないにせよ、


いずれ婚約破棄についてご相談が来るとは思っていました。」




「ま、まあそうなんだが・・・」




「そうすると私捨てられた女として傷がつきますわよね。」




「いやそれはこちらで・・・」




「いくら王子が保証するといってもダメですわよ。この手の話題は捨てられた方に問題があることになりますので。」




「・・・」




「というわけで、捨てられる前に先手必勝で相手を作ってこちらから別れようと」




「いや待てそれは何かおかしい。」




「おかしくはないですわよ。」




「王家との約束をお前から反故にしていいと思っているのか?」




「いえ?反故になんてしてませんわよ?」




「え?」




「私の新しい婚約者はあなたのパパだもの。」




「ちょっと待って整理がつかない。」




「もう一夜も共にしたし、あとはあなたに話をしてからいつ結婚式を挙げるか決めるだけ。」




「・・・」




「というわけで、婚約者あらため、あなたのママになるのでこれからもよろしくね。」




「いや冗談だよね?」




「いえ、本当のことよ、ほら証拠に王妃になるものに渡される指輪がここに・・・」




「・・・」




「後、あの子だけどお付きの執事とできてて、卒業後執事の子が入り婿で家に入ることになってるから


無駄だけど頑張ってね。ママ応援してるから。」




「え?そんな?もしかして俺捨てられ損?」




「苦情はパパに言ってね。あーそうそう、私の立っているのか座っているのかわからない体型の妹が


あなたと結婚したいと言ってたから、あの子を落とせなかったら卒業後すぐに妹と結婚してね。」




「いや待って、俺を捨てないで!!」




「捨てないわよ、だっって私はあなたのママなんだから。」

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