善人令嬢
王城の大ホールで行われていた舞踏会で王子は高らかに宣言した。
「公爵令嬢ティスよ、私は真の愛に目覚めた!!お前との婚約を破棄し
子爵家令嬢ノアと新たに婚約を結ぶ!!そしてお前はこの首都から追放だ!!」
「王子なぜでしょうか?」
「それは、お前がノアをいじめたからだ!!」
「殿下、ノア様を私がいじめたという事実はありません。」
「事実がないだと!!お前はノアの大事にしていたハンカチを無理やり奪ってその場で燃やしただろ!!」
「殿下、誤解がありませんか?」
「誤解とはなんだ!!俺もその時目の前にいたのだぞ!!」
「殿下、あの後ご説明をしましたよね?」
「なんかグダグタ言っていたがどうせ言い訳であろう」
「殿下、ちがいます。彼女のハンカチに毒が塗られていたのを私が身につけていた毒探しの宝具が見つけ、
反応からして毒無効の宝具をつけてない人間であれば、触るだけで死にかねない接触性の毒が
含まれていたためです。」
「へ?」
「殿下、念のため城付きの司祭にその場で確認してもらいましたよね。」
「・・・そんなこともあったのかな?まあいい、ならお前はこの前ノアの教科書に
インクをかけたというではないか!!」
「殿下・・・もしかしてそれも忘れてますか?」
「本に毒なんて聞いたことがないぞ!!」
「殿下・・・表紙の裏に謎の魔法陣が書かれており、後もう一歩でその本の持ち主の命を吸い取り
悪魔を召喚するところだったのですわよ・・・」
「…」
「殿下、その際もちゃんと王国魔法師団の方に来てもらって、確認の上非常に危険なので
魔道士団総がかりでその本の封印をかけましたわよね・・・」
「なんかそういえば大規模な儀式が・・・」
「殿下、ですのであれは、インクで魔法陣を汚して発動を抑えるための行為ですので
命を救ったと言われることはあってもいじめではありませんわ。」
「とにかくもうそれならそれはいい!、お前はノアの飲んでいたワインに何かをいれたというではないか!!」
「殿下、いい加減ちゃんと人の話を聞いて覚えておいてもらえませんか?」
「なんだ?毒々しい色に変わったのだ!お前が毒を入れたのだろう。」
「殿下、逆ですわ。毒らしい反応があったのですが、確証が取れなかったので
毒が入っていれば色が変わる毒探しの薬をいれただけですわ。」
「・・・」
「殿下流石に言いがかりは、いい加減にしてもらえますか・・・」
「まあいい。なら、ノアをこの間階段から突き落とした事件!これはお前のせいだろう!!
流石にこれは助けるためという・・・」
「殿下、それも命を救うためですわよ。」
「え?え?え?」
「殿下、確かに階段から私が落としました。ただ、落ちたとはいえ5段程度
そしてつき落としていない限り、飛んできた矢で彼女は死んでましたわ。」
「・・・」
「飛んできた矢は、対人利用はご禁制の対大型魔獣用マジッククロスボウの直径3cm長さ1mの
超高速徹甲鏃。もし落としていなければ体のどこかに当たって死んでましたわ。」
「いやそれでも落としたことは・・・」
「あの時私も一緒に落ちて、私が下敷きなることで彼女には傷一つつけませんでしたが?」
「え?いやあの事件で入院した生徒が・・・」
「それは私ですわ、流石に防御しきれずにひと月ほど入院しました。」
「ならこの舞踏会にくる前に馬車が襲撃され、破壊され、代わりにとみすぼらしい馬車が用意された件はどうだ!!」
「あれは、爆弾テロ対策で、そもそも私はこれには関わっておりませんわ。」
「え?」
「通常王城に馬車で直接乗りつけられるのは、伯爵以上なのはご存知ですか?」
「昔からの慣習だな」
「いえ違います。馬車に何かを仕掛けられた場合、被害が大きくなるのでそれがない様にちゃんと管理しきれる
家格のものだけに許可しているというものです。」
「・・・」
「そして案の定、余計なものを仕込まれた馬車で王城に来ようとしたそうですわ」
「それにしてもみすぼらしい馬車・・・」
「それは何も仕掛けができない様にしたためですわ」
「殿下、もう私も王子や王子の周りのトラブル対応係は飽きましたので、婚約破棄はありがたく受け入れます。」
「え、ちょっとまって!!」
「殿下、王族の言った命令は絶対なのです。従って婚約破棄は成立しております。
これから守ってくれる方もいないので、王子お気に入りの子爵家令嬢は
多分1日も持たずにお亡くなりになるでしょうし、王子も数日持てばいい方だと思います。」
「え?俺も狙われている?」
「当然でしょう。第二王子派、王弟派いろんなところから狙われておりますわ。
短い人生になると思いますが、悔いのなきよう頑張ってくださいね。」
そして子爵家令嬢はその夕方の晩餐会で毒の塗られた何かで刺され死亡
王子も3日後、突然幼児退行を起こし幽閉されることになった。
「あー自分の身だけ守ればいいって最高!!」
そして元公爵令嬢は冒険者として今も世界中を旅しているという。
10000OV突破記念おまけ
婚約破棄から冒険者へ
公爵家王家屋敷
そこには王都屋敷にいる全ての奉公人が集まっていた。
「みなさん、今まで仕えてくれてありがとう。今夜我が家は、爵位を返上し私もこの王都を去ります。」
「「お嬢様」」
「今まで仕えてくれたお礼に、できるだけのことはします。」
執事長が一歩前に出て行った
「お嬢様、私どもの力が及ばすこのような事態になり、申し訳ありません。この責任はこの皺腹をかっさばいて・・・」
「爺、お前は悪くはないわ、私が甘かったのです。いくらなくなった父や母の遺言とはいえあの愚か者と
婚約していたことが悪かったのです。」
「お嬢様…」
「爺、この屋敷の処分をお前に頼みます。少ないとは思うけど、皆にこの家に残った財産を分けて、
領地の方はもともと、私の手も足りず王家から借りていた代官が差配していたので、何も問題ないし」
「お嬢様はどうされるのですか?」
「鍛える気は無かったけど、王子のお守りのおかげでかなりの実力がついたと思うから、まずは隣国に向かい、
冒険者にでもなって悠々自適の人生を送るつもりよ」
「何も爵位を返上することはないし、隣国にまで行かなくても・・・」
「爺甘いわね。絶対大粛清が今晩にでも始まるわ。」
「・・・」
「今まで王家の婚約者という立場で一応、王家関連以外からの攻撃はなかったけど
それがなくなった今、いつ刺客にこの屋敷が襲われたって不思議ではない。
有象無象どもとはいえ流石に数で押されると守りきれないわ。」
「・・・」
「それから身を守るには、爵位を返上し権力闘争から身を引くしかない。」
「・・・」
「せめてお父様や弟が生きてさえいてくれればなんとかなったのですけどね。さあ皆さん、大粛清の前に逃げるわよ。」
メイド服の少女が恐る恐る一歩を踏み出していう。
「お嬢様、お嬢様についていくのはダメなのですか?」
「過酷な旅になるし、ただの庶民になるのだから、あまり何もしてあげられないわよ」
ほとんどの者が声を揃えていう。
「「私もついていきます。」」
「もうみんな馬鹿なのねぇ。そうとなったら、遅くとも明日の昼までには皆で王都を出るわよ!
さあみんなお金になりそうなものは全て売って資金にするわよ。」
かくして公爵令嬢は爵位をすて、王国を去った。
王国の暗部を司っていた公爵家が暗部ごと逃げた、この国の未来はどうなるのか?
それはまた次回の講釈で・・・
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