短編集その2
男爵毛令嬢が理由の婚約破棄
「私、カノン国第一王子、ピクサス2世は、ここにランス公爵家令嬢アデラとの婚約を破棄し、カークランド男爵家令嬢ミノキとの婚約を行う!!」
公爵家令嬢は悲しそうな声で言う。
「殿下なぜ!、私に至らぬところがございましたでしょうか?もしや今他国でも流行っていると言う、悪役令嬢婚約破棄ですか?私は何も悪いことは行っておりません。それどころかミノキさまと言うのはお名前を聞くのですら初めてです。」
「そうだな、確かにお前の行い自体は問題ない。そして私もお前が嫌いになったわけでもない。」
「舞踏会へのエスコート、毎週一回のお茶会、毎日花を贈っていただき、誕生日もちゃんと祝ってくださった殿下がなぜ」
「これは王家の問題だ!」
「王家の問題?私には悪いことはないのですか?」
「強いて言えば、お前の家系に少し問題はある。」
「私の父が何か失礼なことや、王家に反逆するようなことをしたのですか?」
「いやそれはない」
「ならなぜ?」
「それはだな・・・」
「それは?」
「かの男爵家令嬢に途轍もない、世界を変えるような力が見つかったからなのだ。」
「世界を変える力?」
「それは一体・・・」
「それはだな・・そう・・・」
「何の力なのですか?」
「言いづらいのだが言おう! それは絶対に毛が生える毛生え薬を生み出す力だ!!」
「・・・」
「もう一度言おう、絶対にハゲなくする世界を震撼させる力だ!!」
「殿下、すいません頭でもおうちになられましたか?一度医務室にでも行きますか?」
「おれは至って正気だ!!」
「いえ、正気を失っているものほどそう言うんです、さぁ行きましょう」
手を引き医務室に連れて行こうとする、公爵令嬢の手を
手荒にならないによう慎重に離す。
「俺は正気だ、こればかりは言いたくはなかったのだが、お前の実家の産業はなんだ?」
「はいカツラにございます。」
「それでお前、やんごとなき方に捧げる特別なカツラを作っていると父に聞いたことはないか?」
「はぁそう言えばそんなことを聞いたことがある気が・・・」
「それは俺の親父だ!!」
「え、王様が髪が不自由であられる?」
「そうだ!俺の親父たる王は、髪が不自由だ!!」
「・・・」
「これは、ストレスが溜まる王家の者にとっては課せられた使命であり呪いだ」
「・・・」
「そして男爵家の令嬢は、うまれた時から髪がフサフサで、切っても切っても翌日にはもう同じ長さまで戻っている。」
「いや流石にそれは幼児時虐待では?というかダメなのでは?というか奥様は幼女?」
「かの力の前には問題は全て消える。そしてここからが重要なのだが、かの令嬢から出る聖水がかかると不毛な大地であった場所からも毛が生えてきたのだ。」
「いや聖水って・・・なんでそれが」
「オムツを替えてる時にちょっとアクシデントがあったそうだ」
「それってやっぱりあれじゃないですか!!」
「そんな些細なことはどうでもいい。」
「はぁ、なんかもう疲れたのでどうでもいい気がするんですが、一応聞きますがなぜうちの家に問題があると?」
「お前の親父も髪が不自由だろ?」
「いえ?販促のために剃ってるだけで逆に濃いぐらいですが、毎日剃るのが面倒だと・・・」
「・・・」
「・・・」
「なら訂正する、お前の家に問題はない!これは王家の問題だ!!」
「いや・・・もうどうでもいいんですが・・・」
「それでその子何歳なんですか?」
「ちょうど1才だな」
「えっと、17歳の年の差ですか」
「年の差なんてあの神の力に比べれば些細な問題だ!」
「一応聞きますが妾って手もあったのでは?」
「そんな神の力を持つものを妾になどとんでもない」
「はぁ」
「と言うわけでお前との婚約は申し訳ないが破棄し俺は男爵家令嬢、いや毛の神様だからな
男爵毛令嬢と結婚する!!」
公爵令嬢は疲れ切った顔で言った。
「なんと言っていいのかわかりませんが、お幸せに・・・」
その後、その王子王位を継承したが、「最低ペド王」「変態王」「鬼畜王」と言われ
大きくなった男爵令嬢には嫌われ結局離縁して髪の毛がとても不自由になりましたとさ。
え?その男爵家令嬢のその後はどうなったのかって?
薬の採取はやむを得ないとしてもそれ以上王子の毒牙に
かけないようにするために公爵令嬢が後ろ盾になり、
頑張っていたところ令嬢の10歳離れた弟と仲が良くなり、
再婚したとさ。
なお公爵家の新しい産業にとある薬が追加されたが
原料は絶対に機密とのことめでたしめでたし。
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