おまけ その時王は?

王は、外交交渉の帰りに首都から少し離れた王家専用の保養地で疲れを癒していた。


「すでに王の仕事を全権委任して代行できるくらい我が息子が育ってくれて助かる。この保養地は王家専用と言いつつ、王になる前に1度きて以来、

ようやく2回目の方だからのぉ、このままいけばもしかすると近日中に

正式に王位を相続して楽隠居できるかもしれぬ。うれしいかぎりじゃって、

一人言がでるくらい疲れが溜まっとるとはあかんなぁ」


そこに黒装束の顔を隠した者が現れた。

「陛下、国元で事件が起こりました。」


「なに?事件だと? 一体なんの事件だ?また水利権か?それとももしかして、

また古文書が発掘されて貴族間の王位継承順位の問題でも起こったか?」


「陛下それもありますが、それ以上の問題です。」


「え?それも起こった?そしてその上別の問題? わしもう隠居して息子に

任せたいんじゃがダメかなのぉ?」


「陛下、その息子の問題です。まず長男と次男の母親の血筋に関する古文書が

発見され、継承順位について議論が必要になりました。」


「まあいつものことだな。」


「次に、長男であり第一王位継承権をお持ちだったアトラス様が男爵家令嬢を

見初め、公爵家令嬢との婚約を破棄し、その男爵令嬢と結婚して継承権を放棄し、

冒険者になるという暴挙を議会を巻き込んで承認させたうえに

実行されてしまいました。」


「え?嘘だよね?だってそんな暴挙議会が承認するわけがない。」


「それが陛下、アトラス様はとんでもないものを迷宮で見つけてしまったのです。」


「そういえば、息子は学園を出るまでとの約束で迷宮に潜っていたが

何を見つけたのじゃ?」


「太古の魔法装置、ウェザーコントローラーです。」


「ちょ・・・ちょっとまて、前回の世界大戦の原因となったあれか?」


「ええそうです。それを無償で国に提供するのと引き換えに議員どもに

裏工作を行なったようです。」


「それは今議会は利用権でやばいことになっているのでは?」


「ええ、利用権の取り合いで正直内紛一歩手前です。その上、議会経由でその

情報はすでに他国に流出しています。」


「わし逃げていいかな?」


「ここで逃げられるということは、そういうことになりますがよろしいですか?」


「だよね・・・ それでアトラスは今どこに?」


「それがややこしいことに、男爵令嬢と駆け落ちするはずが、その、

男爵令嬢が悪魔の手先で・・・」


「ごめんちょっと待って、情報量が多すぎてわからん」


「まとめますと、パーティ会場で男爵令嬢は悪魔の手先であったことがわかり、

その場で討たれたそうです。」


「なんでパーティ会場?」


「どうもアトラス様は、真実の愛を貫くという劇をその場で行い、本件を口封じが

できないレベルで国民に広めることで確実に王位継承権を放棄しようと

していたそうです。」


「・・・」


「そして、厄介なことにその場で第5王位継承権を持った公爵家令嬢メリダ様も

悪魔の手先を王子に近づけてしまったのは私にも問題がある。責任を取って

爵位と王位継承権を放棄すると宣言してしまい」


「ま・・・まって彼女も放棄したの?」


「ええ、貴族や議会関係者だけの場であればどうにでもなりますが、

学園の卒業パーティを兼ねておりましたので事情を知らぬ一般の国民も

多く含まれており手遅れで・・・」


「つまり正規に王位を継承できる年齢のものが全て逃げて、いま

わし死ぬ以外では引退できない?」


「はい、陛下そういうことです。内紛を防ぐために急ぎ国元にお戻りください。」


「アトラス!!、全権委任していたとはいえ、うまいことやりやがって、

絶対にお前だけは逃がさんぞ!!」


実はアトラス王子はシャレにならない爆弾を王国にもたらしていたようです。

頑張れ国王陛下、あなたの胃と引き換えに内紛を防ぐのだ!!

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