後日談その2

とある新人市民議員

「うちって議会主義的君主制に移行してるんだし、いっそここまで

継承権の問題が出るなら議会民主主義に移行したらいいんじゃ?」


古参市民議員

「お前はまだ議員歴も浅いし勉強不足だな。まあいい、よく新人議員がかかる

はしかのような物だ。それについてはすでに議論され尽くされていてな。

やれば最後国が滅ぶのだよ。」


「国が滅ぶ?まさか、王は基本的に議会が作成した法案などにハンコを押したり、

貴族連中の機嫌取りだけでしょ?」


「まあ確かに平時には、市民議員の立場から見れば、そう見えるかもだな。」


「平時は?って外国との戦争だって今時戦時国際法があるんだから、

そんな無茶なことはないですし」


「これだから市民議員はダメ、短期的にしか見えないと貴族議員に

言われるのだぞ。」


「いやだって、何の問題があります?」


「100年周期で発生する魔物の大発生にはどう対処するのだ?」


「いや軍を出して終わりでしょ?」


「お前は王国史の意味をわかってないのだな…」


「軍で対処できないと?」


「議員になったら利用可能になる王国議員図書館に行ってあとで詳しくみるといい。

基本的に軍で対応すること自体は間違いではない。ただその際にどこで発生

するかわからない魔物の軍勢相手にどう軍を配備する?」


「いやそれなら各都市や村に分散して…」


「それは悪手だ。とある国の例で説明しよう。その国は愚王が過去治めていた。

そして愚王のあまり横暴さに民衆が怒り革命が起こり、王は倒され

議会民主主義制度の国となった。」


「それはいいことではないですか?ただそんな国が今あるとは他聞に聞きませんが」


「それはな、魔物の大進行時にどこに軍を配置するかで議会でもめて

その間に国が滅んだ」


「いやそれは軍の使い方が間違っていただけですよね?」


「問題は軍の使い方だけではない。刻一刻と変わる状況に合わせて

即時判断し果断な判断と行動ができる指導者がいないと魔物の大進行

には対応できぬ。」


「それは、緊急時には議長が強権をもって動けるようにすれば…」


「それは今の王を頂きとする議会主義的君主制となにが違う?」


「民主主義的に選ばれた国民のリーダーになるわけだからいいことなのでは?」


「そのリーダが優れた人間であることを誰が保証してくれる?」


「いや王族だって、優れた人間である保証はないですよね?」


「ここだけの話だ、今代の王家や王位継承権持ちには幸い起こっていないが、

あまり適切ではない性格のものや、能力がない継承者がいると

不思議と事故で死ぬことが多いのだよ」


「まさか…」


「それ以上は言うな。彼らは権利もあるがそれ以上に義務を負っているのだ。

あとな、それ以上に厄介なのは水利権だ」


「え?ただの水の分配問題ですよね。」



「水利権問題がらみはあまりにおぞましすぎてわしも説明をしたくない。

議会図書館で水利権についての資料を見せて欲しいと司書に言うといい。

おそらく本当に見るのですかと聞かれるだろうがな。」


「全く冗談はやめてくださいよー」


その後議会図書館から出てきた若手議員は、入るときは真っ黒だった髪が

真っ白になり蒼白の状態で帰っていった。


水利権はアンタッチャブルな問題のようです。

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