正しい婚約破棄 ざまぁもちょっとあるよシリーズ

本編

王城の大広間にて、ほぼ国内全ての貴族が集まった舞踏会の会場で

その国の第一王子は高らかに宣言した。


「公爵令嬢メリダよ、私は真の愛に目覚めた!!お前との婚約を破棄し

男爵家令嬢ビアンカと新たに婚約を結ぶ!!」


「殿下…なぜ?」


「私は愛に目覚めたのだ、それに伴いお前に言い渡すことがある!!」


「はい、殿下何でしょうか?」


「まず婚約破棄に伴う慰謝料のひとつとして、公爵家に隣接している王領を

公爵家に下げ渡す!!」


「え?、断罪するのでは?」


「断罪とはなんだ? まあいい、次に公爵家に課している国境の砦への

常駐義務を10年間にわたり免除する。」


「えっと殿下?」


「何か言いたいなら後で聞く、まだまだあるぞ。お前個人への詫びとして、

先先代の女王陛下が使っていた宝飾品をまとめて下げ渡す。

これについては王宮から後で目録を送る。」


「・・・」


「次に今まで婚約者として利用を許可し、婚約破棄により使えなくなる、

王家の者だけ利用できる緋色の服飾品の利用を特別に許可する。」


「・・・」


「そして、これが一番大きなものだな。俺との婚約破棄いや婚約の白紙化に伴い、

現第二王子との婚約を許可する。ただしこれはお前が望んだ時のみ有効とする。」


「殿下、私は、第二王子殿下と婚約してもしなくてもいい、

選んでもいいのですが?」



「それはお前の自由だ、そしてこれは俺への罰だな。俺はこの時をもって

王位継承権を放棄しなおかつ放棄した場合に与えられる公爵の位も返上する。」


それまで王子の陰に隠れていた女性が声をあげた

「王子様、そんなことを聞いてないのですが!!」


「これは当然だ! 王家を支えてくれていた公爵家の顔に泥を塗るのだこれでも

生ぬるい。本来なら証として利き腕を切って差し出すところだ!!」


公爵令嬢メリダは悲しそうな顔で聞いた。

「王子はこの後どうなされるのですか?」


「俺か? 俺はもともと王など向いてない。学園で迷宮探索にはまってな。

これからは男爵家から追放され同じく庶民となったビアンカとともに

冒険者になるつもりだ。」


「そんなの聞いてない!! 私は王妃になるの、庶民になんてなりたくない!!」


「ビアンカよ、公爵家を敵にしてはこの国はなりたたぬ。さあ俺とともに

真実の愛を貫き、冒険者となって一旗あげようではないか!!」


「いやよ絶対いや!! そんなことのために私は王子に転生特典の神様特製の

チャームの秘薬を飲ませたんじゃないわ!!ってあ!!」


「「「チャームの秘薬?」」」

会場がその時騒然とした。




会場にいた高位の聖職者が王子の前に進んできた。

「殿下、そのような魔法がかかっているのであれば大変な事態です。

全ての情報をつまびらかにするため、本来であれば罪人などに

利用するものなのですが、失礼ながら高位の鑑定魔法を

おかけしてもよろしいでしょうか?」


「ああ、かまわぬビアンカへの愛は、真実の愛、

そして俺には隠すことは一切ない!!」


「それでは失礼します。鑑定神ボッタクルよ、

その神の御技をここに パーフェクトサーチ!!」


「どうだ!!何も出ないだろう!!」


聖職者は真っ青な顔をしている。

「で・・で殿下、あなたは名前を出すのも禁忌とされる

邪神の呪いにかかっております。」


「そんなはずはない!! 俺のビアンカへの愛は真実の愛!!」


聖職者は問答無用で呪い返しを唱えた。

「創世神の加護を持って退け 邪悪なる呪い キュア!!」

王子にキラキラとした光が舞い降り、王子の体から黒いもやが

染み出しそして消えていった。


そして王子は崩れ落ちかけたがなんとか体勢を立て直し言った。

「俺は一体?」


「殿下、どこまで覚えておられますか?」


「どこまでというのはなんだ、そしてこれはなんだ? 俺は新春の舞踏会に参加していたはず。これは秋の舞踏会ではないか?」


「やはり殿下、呪いに操られていたのですね。

聖なる騎士団のものよ!この男爵令嬢を騙る邪神の手先を討て!!

捕縛など考えてはならぬ。全ての責任は私が取る。

これ以上呪いを広げさせる前に討つのだ!!」


会場を警備していた騎士団が聖職者の言葉にしたがい男爵令嬢を囲む!!

「王子様助けて!!」


「お前は誰だ? 男爵家? なぜ男爵家のそれも当主でもない者が

俺に直答が許されると思う?」


「本当に魔法が切れたの? 神様そんな話聞いてない!! いやー」

男爵令嬢はその場で騎士団に討たれ、その後燃やされ灰とされ、

聖職者による浄化ののち永久に蘇ってこないようにするため、

火の神の山の噴火口に投げ込まれることとなった。



そして数日後。


「メリダ、お前まで爵位や王位継承権を捨てて、ついてくる必要なぞないのだぞ!」

「いいえ殿下、いえアトラス様、あの悪魔の手先よりアトラス様を

守れなかった私も同罪です。」


「神の山までの道のりは過酷なんだぞ!!」


「ちょっぴり楽しそうかなって?」


「何を言っている?」


「正直に言うとアトラス様と一緒になりたいとは思っていましたが、

王妃になんてなりたくなかったのです。」


「え?」


「そんな面倒なことは妹にポイです。さぁ一緒に神の山までの

冒険の旅を始めましょう!!」

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