通常の婚約破棄もの
「私、アトラス国第一王子、アラン2世は、ここにエスター公爵家令嬢、フローラとの婚約を破棄し、バーデ男爵家令嬢、ネルとの婚約を行う!!」
王は言った。
「息子よ、なぜそんな宣言を今する?」
「いえ、婚約破棄だとこれが正しい作法だと巷で有名だそうで」
「お前小説を読みすぎてるだろ、今は関係者だけだからいいものの・・・」
「だからですよ、流石にこれをパーティ会場で言う度胸はありません。」
「パーティ会場で言われたら、お前の頭がおかしくなったのかと思って
王継承権を剥奪して即病院に押し込めるわ!
まあいい、ここに王家、エスター公爵家、バーデ男爵家により婚約破棄・新規婚約における慰謝料などについての話し合いを始める。」
各家の代表が返事をする。
「「「はい」」」
「まずは王家の代表として我から言う、まずエスター公爵無理を言って
結んでもらった婚約をこのような形で白紙にすることになってすまぬ。
できるうる限りの誠意を見せるつもりだ。」
「陛下、勿体無いお言葉です。もともとこの婚約は、王子が愛するものが
できるまでの虫除けというお話でしたので、あまりお気になさらないでください。
我が娘も、これでようやく王妃教育を受けなくていいし、アランと婚姻を
結ばなくていいと喜んでいましたので・・・」
王子が慌てて聞き返す。
「ちょっとまて、王妃教育云々はわかるが、俺と結婚したくなかった?」
「はい王子、子供の頃から知ってるし、どうやってもできの悪いやんちゃな
弟としか見えないと」
「甲斐甲斐しく世話をしてくれたり、この婚約白紙化は非常に申し訳ないと
思っていたのだが・・・」
「安心してください。その点で言えば王子は娘の好みとは違いますので、
もっと男らしい人と結婚したいなぁと常日頃言っておりました。
あと弟と同じでみてて心配で放って置けないからつい構ってしまったと・・・」
「俺が見ていて心配・・・弟と同じ・・・」
「エスター公爵よ、あまり息子をいじめてくれるな。まあそうは言っても
確かに今回の件以外では、覇気が足りないがな。」
「父上までひどい・・・」
「まあいい、それでエスター公爵よ、白紙化したとして次の相手はもう
決まっておるのか?」
「はい陛下、王子が男爵令嬢に惹かれ始めたという頃からすでにこうなるのは
予想しており、内々に話を進めておりました。」
「それで誰だ?」
「王国騎士団団長のオルトロスです。」
「いや、あいつはもう30を超えている。確かに妻と別れて独り身だが、
流石にそれは娘に対してひどい仕打ちなのでは?もっといい奴がいないか、
俺が国内外を当たるぞ?」
「それが、娘のたっての希望で
『もし選べるなら、王子みたいなお子様のお相手はもう嫌なので、男らしい体、
高潔な精神、そしてあの頼れる感じがする騎士団長さまがいいですわ』
とのことで、あーあと「罰ゲームが終わってよかった」と・・・」
「俺は子供っぽくて、貧弱で、頼れない、罰ゲーム・・・」
「まあそういうわけで、今回のお詫びについては、団長との婚姻を許可して
いただければそれで結構です。」
「・・・お前俺の息子に恨みがあるだろう、まあいい、それでいいなら
こちらも都合がいい。」
「ならそれでお願いいたします。すで騎士団様からは内々諾はいただいて
いますので、許可がいただけ次第、娘が言うには、罰ゲームに戻されないために
明日にでも婚姻をあげたいとのことなので是非お願いします。」
「罰ゲーム・・・戻されたくない・・・」
「お前もひどいな公爵よ、まあ息子が貧弱で頼りないのは事実、
これを機に騎士団長に鍛えてもらうか」
「父上、それはちょっと・・・」
「ちょっとなんだ、たとえ形だけの婚約だったとは言え、そこまで言われるとは
お前にも問題があるのだぞ、一度みっちり鍛えてもらうといい。」
「父上、騎士団長の特訓と言えば、死の森へのペア探索行ですよ」
「それがどうした。いいではないか。騎士団長が一緒なら死ぬことはない。
腕の一本や二本取れたって後で生やせばいい。」
「・・・」
「とりあえずお前が話すと話が長くなる、いいたいことは後で聞くから黙っていろ」
「はい」
「それではバーデ男爵よ、公爵家との養子縁組については同意するか?」
「はい陛下、王家と婚姻し縁戚になるには当家では小さすぎ問題がありますので、
その点についてはよろしくお願いします。」
「本当にいいのか、家族だけで会える機会ができれば別だが、養子縁組後は
娘と言えなくなるのだぞ」
「はい、それが娘の望みのためなら」
「わかった。それではエスター公爵よ、養子縁組の件進めてくれ。
それでこれに関しては、縁組の謝礼として王領になってるミスト港町を
公爵家に下げ渡す。それでいいな」
「はい陛下、これで表向き我が家と王家との婚姻という条件は満たせますので、
それで十分でございます。」
「うむ、なら次の問題だ。お妃教育についてだが確かエスター公爵家で
すでに進めているのだったな。」
「はい陛下、現在進行中です。」
「どの程度の教育が終わっておる?」
「そうですね、我が娘が8歳の時に受けた教育のところまでですね。
このペースでは完了するのは19歳になられたころになるかと」
「そうか、もう少し早くできんか?」
「はい陛下、いいえこれ以上は無理でございます。すでにポーションを使い
睡眠時間を削って24時間体制で詰め込みを行なっておりますので」
「そうか、そこまでやっても終わらぬか」
「本人は王子のためならと必死に健気にやっております。これ以上は我が養女となる娘が壊れますので勘弁してやってください。」
「わかった。それでは王子が21歳、娘が20歳の時に婚姻を結ぶこととする。
その分少し余裕ができるだろうからその分は休ませてやってくれ。」
「はい、陛下」
「えっと・・・父上、私がネルとデートする時間は?」
「我が息子よ、話を聞いてなかったのか?全くなんでこんなダメな息子のために
頑張ってくれている娘にこれ以上の負担をかけようとする?」
「だって、教育が終わらないと会えないって前に聞いて・・・」
「それだけお前は思われているということだ!いい加減甘えるのはやめろ。
それにどうせお前も暇はないぞ」
「え?父上?」
「サボっていた件は聞いている。フローラが妻になってくれるなら彼女に
全部任せれば神輿になるだけでよかったので放置していたが、
ネルという娘では、補佐はできても代行はできぬ、お前もこれから
婚姻が終わるまで眠る暇があるとは思わないことだ」
「ち・・ちちうえ・・・」
「おい、そこの近衛兵、俺の命令だ、王子を騎士団のいる砦に連れて行け!!」
「陛下、念のため聞きますが、王子はこの後どうなるのですか?」
「公爵よ、この後心根を入れ替えさせるために一兵卒として、新兵訓練を
受けさせその後、士官教育課程を行い、騎士団領との死の森でのペア訓練を
予定しておる。
本来寝る時間については、ポーションを使って短縮し、王としての執務が
行えるようにビッチリ教育をするように予定を立てておる。」
「なるほど陛下、それなら王子に代替わりしても大丈夫ですね。」
「公爵よ、本当にお前は痛いことを言うなぁ、まあゴマをすられたり影で
言われるよりかはよっぽどいいわハハハハハ」
「た・・・たすけて・・・」
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