異世界転移令嬢怖い

「公爵令嬢ビアンカ、今日こそはお前に引導を渡してくれる!!」


「はい殿下、その前に私から言いたいことがあるのでよろしいですか?」


「なんだ?言ってみろ!」


「はい殿下、数々の不埒な行為や、不名誉な噂の流布、いい加減私も限界です。

この場を以て王子との婚約を破棄させていただきます。」


「え?いや…」


「この婚約破棄は、すでに王や王妃、宰相、枢密院議会、前国王夫妻、

我が公爵家一同全ての同意を得ています!!」


「ど…どういう?ことだ?」


「はい殿下、婚約者があるにも関わらず、夜会へのエスコートもせず、何処の馬の骨

ともわからない平民出の男爵令嬢を連れての参加」


「いや、お前のような悪女を連れて行くわけにいかんだろう!! 

ミカのような心優しく美しい令嬢こそが次期王妃にふさわしい!!」



「何が美しいのやら。次に次期王妃向け予算の流用疑惑というより、

窃盗ですね。私が夜会に参加するにあたって必要なドレスやダイヤ、

宝飾品のための予算を使い込みましたね!!」


「毎回ドレスを作るなんてもったいない、ミカと一緒に貧民への炊き出しに

使ったのだ。これこそ正しい使い方であろう!!」


「殿下まず、なぜドレスや宝飾品を毎回変えるのか理由について

覚えていらっしゃらないのですか!!」


「え? お前が欲しがるからだろう?」


「違います! これは国内のドレス市場、宝飾品市場を活性化させるための政策で、次期王妃候補がコンテストでもっとも優秀であったものを褒め称え、

次の夜会で使うと共に報奨金を払うことで切磋琢磨してもらうためのものです。」


「え? そんなこと聞いたことがない」


「それはないはずです。ちゃんと書類は王子にも回ってきていますし、

サインも以前いただいてます!!」


「え? それじゃあ、そのコンテストは?」


「すべて我が公爵家の持ち出しで今までなんとかしてきましたが、

これは全て我が公爵家の領民の血と汗と涙の結晶、婚約破棄とともに

全て払っていただきます。」


「いや仮にそうだとしても、お前はミカのものを奪ったり

数々の悪事を働いただろう!」


「それは規則のためです。」


「何の規則を以て人の物を奪うというのだ!!」


「学園内で使う文房具、ノートなどは全て規定のものを使い、規定のもの以外は全て風紀委員が一旦没収し、卒業時に返却すると言う規則をご存知でないのですか?」


「え?規則違反?」


「はい殿下そうです。規則違反の物品の没収です。それを王子は男爵令嬢のものを

奪う悪の公爵令嬢と非常に不名誉な噂を流されていますよね」


「いや、その…」


「次に、これがいちばんの問題ですが、どこの出身の者かわからない

男爵家の養女であるミカ様と不適切な関係を持ちましたね」


「いいではないか! 最終的に結婚するのであれば問題ないであろう!!」


「はい殿下、まず、このようなお話をお聴きになったことはありませんか?」


「なんだ?」


「難破した船で、この国に渡りついた人たちの中に、とても美しい女性がおり、

その美貌に目が眩んだその土地を治めていた伯爵が、妻に迎えたという話を…」


「よくある話だし玉の輿でいい話ではないか?」


「殿下、この国のものは全て女神の加護で病気から守られています。

これはご存知ですよね?」


「ああ、偉大なる女神の加護だな。それがどうした!!」


「この女神の加護の唯一の穴と欠点はご存知ですか?」


「穴や欠点などないだろ! 女神は偉大なのだ」


「殿下ここまで言って思い出せないなら、非常に破廉恥な話なので

私の口から直接言いたくなかったのですが言います。お互いが

愛し合うときには子供を作るために体を守る聖なる結界が解かれるのです。」


「それがどうした?」


「つまり、相手がなんらかの病気を持っていた場合は、その病気をもらい

感染してしまうのです。そして先ほどの伯爵は三日で体がただれ

呼吸困難になり死亡したのです。」


「え?ちょっと待ってそれって…」


「事態を重く見た当時の王家を含めた上層部は、その病気の蔓延を防ぐために、非常に困難な判断をしいられました。そして最終的に、流れ着いてきた者と

それと性的な接触をした者全てを抹殺、焼却処分としました。」


「そんな話は聞いた覚えがない。」


「上級貴族向けの教育の歴史で必ず学ぶ必須事項ですよ!!

そして病気の治療に関しては、この聖なる結界のため、理由は不明ですが

自分で自分にかけるしかなく、他人の魔法では治療ができません。 

そしてその悲劇の事件の後からこの国の外の者との婚姻は、

自分に聖魔道を掛け病気に対応できる一部の者のみと定められたのです。」



「それがどうした? ミカは男爵家の養女とはいえれっきとした

我が国民だろう!!」


「はい殿下、いいえ違います。昨日ようやく男爵が白状したのですが、

彼女は異世界からの渡り人です。」


「異世界からの渡り人?」


「ええそうです。この世界にない治療不可能な病気を持っている可能性が高いため、

何があっても婚姻は認められることはなく、隔離施設で生涯を送ってもらう。

あの異世界の渡り人です。」


「いや、それはおかしいだろう!! 同じ人間なのにその扱いは不当である!!」


「いいえ、残念ながらこれは病気から国民の生命が守られる、我が国だから

であって他国であれば即時抹殺焼却対象です!」


「そんな決まりなど聞いたことがないぞ!!」


「ちゃんと授業で習ったはずですよ。殿下」


「それなら一体ミカはどうなるのだ?」


「ミカだけではありません。殿下も対象です。」


「え?俺も?」


「不適切な接触をしてしまったため、殿下であっても同じ処置を受けることに

なります。」


「いや俺は王族だぞ!!」


「はい殿下、いいえ、正確には少し違います。この夜会の直前に私の手元に王家からの書面が届きました。」


「王家からの書面? 父からだと? 一体何が?」


「読み上げます。王子は検査の結果、すでに異世界の致命的な病気に汚染され、

なおかつ異世界の病であるため治療および除去のめどが立たない。

よってそのため王家および議会の承認を以て王籍からの離脱および

基本的人権の停止を行い。異世界の渡り人とともに隔離施設にて

死ぬまで永久禁錮とし、死後全て焼却処分とする。」


「父がそんなことを言うはずがない!!」


「はい殿下いいえこの通りちゃんと記載されております。」

その書類には王、宰相、議長全てのサインが揃っていた。


「なんでこんなことに…」


「殿下あなたが不適切な行為をしなければ叱責で済んだのです。

そして禁固刑というのも最後の温情です。さあ、検疫官は王子を早く隔離施設に」

白い隙間のない全身鎧を着た者に連れられ元王子は消えていった。


そして元王子はその二週間後に謎の病気にて死去、灰すら残さず完全焼却され

異世界の渡り人は生涯を隔離施設にて過ごすこととなった。


めでたしめでたし。

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