婚約消滅

王城の大広間にて、ほぼ国中の貴族が全て集まった舞踏会会場で

その国の第一王子は高らかに宣言した。


「公爵令嬢パパイヤ、男爵家令嬢チェリーに対する数々の仕打ち、

もう我慢がならぬ、今を持って婚約を破棄し、パパイヤは、

教会に一生幽閉! 一族郎党は国外追放の刑に処す!」


「王子、数々の仕打ちとは何でしょうか?」


「言わなければわからないのか?最後の慈悲で名誉だけは守ってやろうと

思っていたのだが、そこまでいうなら教えてやろう!」


「はいどんな仕打ちですか?」


「まず、お前はチェリーに対して暴言を放ったそうだな!」


「暴言は放っていませんが?」


「チェリーから聞いたぞ、男爵令嬢の癖にとか、泥棒猫など数々の暴言を

放ったと!!」


「まず、王家の者に男爵令嬢ごときが直答は許されていませんので

『男爵令嬢のごときが何をやっているのか!』とは言いましたが

それがなにか?あと婚約者がいる男性に近寄るのを泥棒猫と

呼んで何か問題がありますでしょうか?」


「学園では全ての人間が平等だ!!」


「それは成績や評価についてであって、身分に伴う責務は別ですが?」


「チェリーのドレスに赤いワインをかけて汚したと聞いたぞ!!」


「私がやったという証拠は?」


「チェリーが証言している。」


「それではダメですね…他には?」


「それなら、次にお前はチェリーのノートを捨てたというではないか!」


「殿下、それはどこに私がやったという証拠が?」


「お前が獲ったとチェリーが証言している。そしてお前の部屋からだされた

ゴミの中からノートが見つかったと聞いているぞ、それで十分ではないか?」


「被害者の証言だけでは証拠となりませんが?それと私の部屋から見つかった

と言ってもそれが誰かの仕込みでないと言えるのですか?そして他に何か?」


「ここまで言わんといかんのか!! お前はチェリーを階段から

突き落とし殺そうとしただろう!!」


「それの証拠は?」


「チェリーが証言している。そしてその時チェリーの周りには

お前しかいなかったと証言もある」


「ですから物証もなく、証言だけでは証拠にはなりませんわ」


「チェリーは聖女だ!!彼女のいうことは全て正しい!!」


「聖女の証言でも証拠にはなりませんね」


「そうか、これだけはいうまいと思っていたのだが、ルビー 例の魔法を!!」


「はい殿下、『センスダーク!!』 」

殿下の陰に隠れていたルビーが魔法を唱えた


そうすると公爵令嬢から会場全てを覆うような黒いオーラが漂う。

「お前は、まだ力を取り戻してはないが、伝説の魔王の生まれ変わり!!

これが証拠だ!! ん?チェリーどうした?」


「え?もう力を取り戻している?そんなのシナリオにない・・・」



「シナリオとか言い出すとは、お前は転生者なのね。全く愚かすぎるわね」


「お前たち一体何を言っている?」


「殿下、私が魔法を使えないというのは嘘です。」


「お前の力は封印されていて、使えないのはチェリーに聞いて知っているぞ、

使えるというなら使ってみせろ」


「ならそこの泥棒猫の取り巻きの伯爵家の三男坊さん『消えなさい!』 」

王子の後ろにいた男が透明になっていきそして消えた。


「え?」


「私は、確かに以前は魔法を使えませんでしたが、今は一つの魔法が使えます。

それがこのディスインテグレート 物質消滅」


「物質消滅だと?」


「ええ、任意のものを好きなように跡形もなく消せますわ。

なので何かしようとするなら、ものを隠したり、汚したり、

突き落とすより証拠も無くさず消してしまう方が簡単なのです。」


「少し待て!!」


「待ちませんわ? そうねいい加減我慢してたけど 泥棒猫さん 

『消えてくれる?』」

男爵令嬢は消えた。


「チェリーをどこにやった!!」


「さぁ?おそらくこの世にはいないでしょうね。」


「皆の者!!この魔王を倒せ!! って?あれ?」

会場にはすでに、王子と公爵令嬢以外の人影がない。


「みなさん邪魔なのでさっき消えてもらいましたわ、婚約破棄のお話なら、

都合もいいことですし、何もせずに去ろうと思ってましたのに残念ですわ。」


「まて、話せばわかる!!」


「待ちませんわ?さようならそして私の汚点よ『消えて』」

王子は消えた。


続いて王城も消えた。

公爵家以外の貴族も当主や跡取りが消え滅んだ。


そして公爵家が絶対的な権力を使い新しい国を起こした。

その王国に逆らうものは全て消え、世界の覇者となった時


「もう飽きたわ」


その王国を建国した王女も消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る