ちゃんと確認しましょう

その悲劇は、学園内に設けられた卒業を祝う特設舞踏会場で起きた。

「公爵令嬢ビアンカ、男爵家令嬢ルビーに対する数々の仕打ち、もう我慢がならぬ、今を持って婚約を破棄させてもらう」


「はい、婚約破棄承りました。ここにサインをいただけますか?」

ビアンカが王子に書類とペンを差し出す。


「準備がいいな、まあいい、これでいいんだな」

「殿下書いちゃだめです!!」

突然のことにルビーが止めるのは一歩遅く王子は条件反射でサインをしてしまう。


「ありがとうございます。これで嫌な妃教育や王子からも解放され自由の身に

なれます。」


書類を受け取ったビアンカは満面の笑みを浮かべ、足早にスキップしながら

会場を去って行った。


「なんで王子書いてしまったのですか?」


「ルビーをいじめるような奴とは結婚できないから婚約破棄するのは

当たり前だろう?それにこれでルビーと結婚できるしな」


「殿下、私はあなたと結婚なんてしませんし、ビアンカ様から

何もされていませんよ」


「え?」


「殿下、まず不敬なことなので今まで我慢してきましたが、なぜ

婚約者を持つ私に付きまとうのですか?」


「こ?婚約者がいる?それは俺のことだろ?」


「はい殿下、いいえ違います。貴族ではないためこの学院にはおりませんが、

れっきとした婚約者が私にはいます。」


「いや俺のことを愛してくれてるんだろ?」


「はい殿下、いいえ全く愛していません。貴族として殿下の意思に反する行動は

不敬であるため今まで我慢してきていただけです。」


「いや、俺のイニシャルの入ったマフラーを編んでくれただろ?」


「はい殿下、いいえ、あれは私のフィアンセのためのものだったのです。

たまたまイニシャルが同じなだけです。それを俺のためにありがとうと

出来上がった側から奪って行かれましたよね?」


「え?」


「そのほかにも婚約者のために刺繍をしていたハンカチやその他色々なものを奪われていきましたよね?」


「ちょっとまって、あれは俺のためのものもじゃ?」


「はい殿下、いいえ全く違います。全て私の婚約者のためのものです。」


「そんな照れなくても…」


「いいえ照れてなどいません、そもそも私がいつビアンカ様にいじめられたと

言うようなことを言ったのですか?」


「いや、大事な物を奪われたりして困ってると言う話をしていると聞いて、

私の婚約者が嫉妬していじめてるんだと」


「いじめてるのは、王子あなたですよ!!」


「いやそんなことは…」


「いいえ殿下、もういい機会だから言います。ストーカーのように付きまとったり

人のものを勝手に持っていくはもういい加減にしてください」


「え…」


「まず百歩譲って、仮に王子が私を妃に望んだとしても、私のような男爵家のものは王子と結婚はできません。」


「いやそれは適当な家で養子になってもらうとか…」


「王子、忘れたのですか?そもそも伯爵家以上の御方とそれ以下では血は

混ざらないのですよ?」


「そんなことはない愛さえあれば…」




「心情的にも絶対にありえませんが、仮に私と王子が結婚したとします。そして初夜を迎えます。」




「うんそれはいいことだね」


「はい殿下、その夜私は王族の魔力に耐えきれず風船のように膨らんで爆発して

死にます。」


「え?何それこわい」


「怖いも何も、学園で習ったと思うのですが、伯爵以上と、それ以下では魔力容量が千倍以上違うのですよ!!」


「そんなの愛さえあれば…」


「王族なら男爵家と比べたら1万倍ですよ、1万倍 死ぬだけです。」


「…」


「そして王子! ビアンカ様以外で王族の魔力に耐えられる結婚適齢期の女性は

もういないのですよ」


「ビアンカしかいない?」


「そうです。ビアンカ様と結婚を破棄するということは、子供を作らないと言う

宣言であり、継承権を第二王子に譲り、王族をやめ僧院に入ると言うこと

なんですよ、わかってるんですか!?」


「第一王位継承権を第二王子に譲って僧院に?」


「ええ、サインをしてしまったのでもう後には引けません。」


「いや酒も飲めない僧院になど俺は行かんぞ」


「サインしてしまった以上ダメなのです。もう王位継承権を放棄した殿下は、ただの僧侶になるしかないのです。」


「そんなの嫌だー!!」


「嫌だじゃないです!! 王子は、宦官にされ僧院に入るだけで済むので

いいのですが、私たち第一王子派の派閥のものはどうなるかわかっている

のですか?」


「宦官?なんで?」


「王族から僧院にいくものは、誤ってその尊き血が流出しないようにするため

全て宦官にする規則なのです。まあそんなことはどうでもいいです。

一体私たちの派閥のものの無駄になった努力に対して

そしてこれからについてどう償ってくれるのですか!!」


「いやそれは親父に…」


「もう、あなたは第一王子でもなんでもないのです。せっかく今まで我慢してきていたのにどうしてこんなことに、なんであなたが第一王子だったんですか!!」


「いや俺は第一王子だから」


「違います。もうどうでもいいのではっきりと言いますが、あなたは王子というよりオークです。二目も見えない容姿なんです。もうみんな終わりなんです」


斯くして第一王子派は第二王子派との戦いに敗れ滅びましたとさ、

え?公爵令嬢がどうなったのかって?

あのショタコン令嬢は、腹違いの弟と結婚し末長く幸せに暮らしたとさ


めでたしめでたし

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