第9話武蔵野lover
ばあちゃんの痩せた手を握りしめ
幼少期の思い出話をした。
ゆっくり時間をかけて。
ばあちゃんは、深く息を吸った。
「しずかと父さんと過ごした時間はかけがえ無い時間だったよ。
しずかは2回目に色んな事を乗り越えて現れた。
立ち向かったね自分自身と。
ばあちゃんの誇りだよ。
ありがとう」
ばあちゃんは、また息を吸い込んだ。
そしてもう、息をしなかった。
看取ることが出来た。
悔いがないようにと最期寄り添わせてくれた。
「2回目に」
私はやり直しが出来た。
葬儀を終え
私は武蔵野で生きていくときめた。
いつか、おじいちゃんといった喫茶店。
もう看板の文字は剥がれてしまってる。
テナント募集の看板がかけられていた。
私は、いつか褒めてもらった
お茶を出す店を始めた。
煎茶と紅茶とコーヒーの
素朴なお店を始めた。
朝7時から昼までの数時間だけの店。
6時に起きて
愛する人の弁当を作り見送りをして。
祖父母の仏壇に茶を供えて。
常連さんが新聞片手に
おはようと入ってくる。
カウンター横のスペースに
ベビーベッドを置いて
私の娘が眠っている。
武蔵野の優しい風が今日も
さわやかに吹いている。
美味しいお茶をいれよう。
当たり前の時間を大切に生きよう。
この街で。
美味しいお茶の煎れ方 Jua @jua
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