第8話stand by me

祖父の初盆も終わった。


日が少し短くなった頃。


私は会社を退職した。


狭いアパートを片して武蔵野のばあちゃん宅へ引越しをする事にした。


仕事に未練は無かったけれど人間関係には恵まれていたから少し寂しい気持ちになった。


ばあちゃんは、じいちゃんの死後

すっかり落ち込んでしまい痩せていた。


食欲がないのだという。


食べた?


って聞いたら


食べたよとしか言わない。


武蔵野に到着して

スーパーへ寄ってからばあちゃん宅へ帰った。


玄関を開けても暗い部屋。


ばあちゃんは、亡くなったじいちゃんが寝ていた1階で過ごしている。


じいちゃんの、仏壇の前に布団をしいて。


薄暗い電気をつけて

急須と湯のみと煎餅がお盆に乗っかっているだけ。


(こんな生活じゃだめだ)


私は苦しくなった。


台所へいき、ネギと豆腐を切る。

湯を沸かしかつお節で出汁をとる。


その間に卵を3つ割ってとく。


卵焼きを焼きながら

豚肉をレンジで解凍する。


鍋にネギと豆腐を入れ味噌をとく。


解凍した豚肉を酒としょうがと醤油とさとうで味付ける。


生姜焼きを焼きながら

味噌汁の火を止めた。


レタスを手でちぎり

トマトを切る。


きゅうりを叩いて梅で和えた。

ゴマをまぶして出来上がり。


しばらく使われていない

ダイニングテーブルを除菌シートで拭いた。


じいちゃんが好きだった皿に

野菜と生姜焼きを盛り付けた。



「ばあちゃん、ご飯食べよ?」


ばあちゃんは、ムクっと起き上がった。


ずいぶん小さくなった。


「上手に作ってるね。美味しそうだよ。」


ばあちゃんは、優しく微笑んで

手を合わせて小さくいただきますと言った。


生姜焼き半分、ご飯半分

きゅうり完食。味噌汁半分を食べてくれた。


「残してごめんなさい」


ばあちゃんは、申し訳なさそうに

茶碗を片した。


「いいの、ばあちゃん。あとはやるから。ばあちゃんと美味しいご飯作って毎日食べようね。毎日話そうね!」


私は涙を堪えて言った。


ばあちゃんは、また優しく微笑んで


うん、うん


と頷いた。

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