第5話ホットケーキ物語
爺ちゃんと
ジョンの散歩を終えて帰るとばあちゃんはホットケーキを焼いていた。
「やった!ホットケーキや!」
私は手も洗わずに台所へ行った。
「手を洗ってらっしゃい」
とばあちゃんに言われた。
私は洗面所へいき、
水を出して洗ったフリをした。
なんでそんなことしたのか忘れちゃったけど。
走って台所へいきホットケーキにシロップをかけた。
「しずか、今日はホットケーキ無しだよ」
ばあちゃんは、皿を取り上げた。
「いやや!いやや!食べる!」
私は皿を取り返したくてばあちゃんの腕を叩いた。
あいたたた!
皿は床へひっくり返った。
ばあちゃんは、手を擦りながら
あーあ、と床を拭いた。
心がチクチクする。
爺ちゃんの方を見ると
腕組みしてこちらを見ていた。
私は、いたたまれなくて
シクシク泣きながら2階へあがった。
布団を被り泣いた。
その日の朝
母から電話があったのだ。
「お母さんね、お父さんと”離婚”することになったんよ。」
「離婚」が何かをばあちゃんに聞いた。
私は、ふーんと言って爺ちゃんとジョンの散歩に行ったのだけど。
落ちたホットケーキと
痛がるばあちゃんを見て
心がチクチクして
ズキズキして
悲しくて寂しくなった。
「しずかは、お母さんと暮らす?」
母に問われた。
そんな決断を迫るのは
ひどく酷な話だった。
溢れ出す不安や孤独が
わんわん涙で溢れ出した。
下から私を呼ぶ声がした。
私は泣きながら
1階へおりた。
「手と顔を洗っておいで。ホットケーキ食べよう。今度はちゃんと洗っておいで。」
ばあちゃんは、ニコっと笑った。
手首に氷を当てながら。
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