第2話 赤紙が来たよ

 おれはしんしんとゆきもるなかを、美冬みふゆいえへとかっていた。

 美冬みふゆうのは3、4年振さんよねんぶりになるだろうか?

 おさなころから、組織そしきそだてられてきたおれ美冬みふゆは、やがて組織そしきころとなった。

 おれ射撃しゃげきうで卓越たくえつした魔法まほうかした狙撃手そげきしゅとして世界中せかいじゅうまわり、おおくの人間にんげん暗殺あんさつしてきた。

 そんな海外かいがい生活せいかつなかでも、日本にほん組織そしきおびやかすある人物じんぶつうわさみみにしていた。

 おおくの戦闘員せんとういん工作員こうさくいん暗殺者あんさつしゃたちがかえちにあったという凄腕すごうで魔法使まほうつかい。

 そいつにかって、きてもどったものはひとりもいないという。

 正直しょうじき勝算しょうさんなどまるでなかった。

 うわさつたわるその魔法使まほうつかいは、ファンタジー小説しょうせつにすらてこない桁外けたはずれの能力のうりょくっているらしかった。


 ――宇宙うちゅう最強さいきょう魔女まじょ――


 かりにその表現ひょうげんがすこぶるオーバーであるとしても、そんな異名いみょう相手あいてとはかかわりたくはなかった。

 そして、あたえられた武器ぶきかんがえると、あながち冗談じょうだんでもなさそうだった。


 ――まさか、こんなモノをすなんて――


 いままでの暗殺あんさつ指令しれいとはまるで次元じげんちがう。

 組織そしき本気ほんきめられて切羽詰せっぱつまったかん同時どうじつたわってきた。


 おれゆきってくる夜空よぞら見上みあげた。

 黙々もくもくゆきってくる。それが自分じぶんあたえられた使命しめいだとわんばかりに。


 ふるさと離れた旅立った暗殺者は、元の雲ふるさとへはかえれない。


 美冬みふゆらす住居じゅうきょえてきた。


 ――最後さいご一目ひとめいたかったからな――


 おれはドアをノックした。


 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る