生きる、とは
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まず前提として言いたいのは、「生きるとは?」という命題は、哲学的要素が皆無である。これはあくまで「文学」であり「思想」である。
私の論理は哲学に傾倒していて、思想にはあまり興味が無い。
哲学と思想は、全く逆の性質を持っている。
何やら哲学と聞くと「蘊蓄」だの「屁理屈」だのとマイナスイメージで雁字搦めになっている人が多いのだが、それは「思想」側の持つ性質である。
「思想」とは、自分が思い、想ったものを綴っているだけのポエムであり、一定数の共感者が得られなければ、糞を拭うチリ紙以下の存在だ。
「共感を得る事」を第一主題に置いているジャンルであり、それは即ち倫理化であり営利化だ。
だから私は、文学と思想をさほど区別していない。
それとは真逆に、「哲学」とは、合理性の塊である。誰がどう屁理屈を述べようとも、覆す事ができない、完璧な論理形態を追及する。
有名な例を挙げよう。
「私がこの世の全てを否定しようとも、私が否定しているという考えが生まれた事だけは、覆せない事実だ」
さて、これを否定できるだろうか?
この世の全てが嘘だ、まやかしだ! と否定してみたところで、そう考えた私は、ここに確実に存在する。私が「思った」という事実には、虚実の入り込む隙間が無い。
こうした「絶対に」否定できない事実を探求する。何人が何を言っても覆らない事実、それを「真理」と呼ぶ。
※余談だが、先の例文を、私は否定している。
絶対に覆せない100%の真実を探す学問。100%しか認めない学問。
それが哲学であり、これらを証明する為に、数学が生まれた。
先の例文はデカルトのものだが、デカルトの一番の発明は「デカルト座標」だと思っている。みんなお馴染み「X軸、Y軸」と十字を引いてグラフ化する、あの作業。あれが、デカルト座標。
数学とかやる意味が分からない。四則演算だけ分かっていれば社会では通用する。数学とかパズルでしょ? ……とか言ってる奴等をぎゃふんと言わせたのが……いや、たぶん言っていないが、言わせようとしたのがこの図式だ。
数学は、決して妄想パズルの話をしているのではない。
絶対的に正しい論理を導く為の論理手段であり、絶対に正しいのだから、それは具現化する。
つまり「数式の見える化」。それこそがデカルト座標の素晴らしい点であり、革命だった。
数学と哲学の歴史は深く、大よそ同時に生まれている。あのピタゴラスの定理だって、本来は哲学用の武器の一つとして開発されている。(厳密には宗教だが)
本質的に、数学は哲学の一種である。
数学を馬鹿にする哲学者は居ないだろうし、哲学を否定する数学者も居ない。事実、ピタゴラスだってデカルトだってニュートンだって、本業は哲学者なのだ。
ガチガチの合理性こそ、哲学である。
一つの間違えすらも許さない絶対的真理を求めるからこそ、「生きる」という緩いテーマを取り合わない。
哲学的に取り合う命題は、「死」である。
これが最大最強の命題(テーゼ)なのだ。
人は、死からは逃れられない。仮にゲノム解析が発展を遂げて一億年生きられるように細胞の培養を繰り返す事が可能になったとしても、一兆年後には死んでいる。
そんな科学技術が進歩を遂げるまでもなく、今日眠っている最中に脳溢血になったら、明日の朝には目覚めない。
宇宙からの一メートル規模の隕石が地表に落下する確率は0.3%くらいだが、その0.3%が今日、この瞬間に私に降り注ぐ確率はゼロじゃない。
ある大学の研究によれば「一年間で隕石に当たる確率は25万分の一」。
因みに「飛行機墜落の可能性」は3万分の一で、「自動車事故の確率」は90分の一だ。
宝くじに当たる確率よりも遥かに高い確率で、今年一年以内に、あなたは自動車事故で死ぬ。
よって、生きる事より、死ぬ事を考える方が合理的だ。
今生きている事より、今死んでいない事の方が「奇跡」には近いのだ。
だったら、今、何をする?
生きている事は、偶然だ。
明日死ぬとしたら、今、何をする?
私の定義する賢い人間とは、何時だって、死を想定している人間だ。
生きようとして未来を想像する事で得られるモチベーションよりも、死を覚悟するモチベーションの方が果てしなく大きい。
明日世界が終わるのなら、なんだって出来るでしょ?
今すぐ自分を動かしたいのならば、死を想像するべきだ。
私など、毎夜毎晩、死の恐怖で発狂している。
奇跡的に目覚めたのならば、一分一秒だって無駄を省きたい。
残された時間は、もう数秒なのかもしれないのだから。
私は、何より無駄が嫌いだ。
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