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今までの生活の中で、天才と呼べる人とは何人も会ってきました。坂之上もそうでしょうし、あの金髪もそうでしょう。他にも大勢思い出せます。思いの他、天才は多いのです。
でも、天才というだけは勝てない人間など、見た事がありません。想像すらもできません。
この時私は、勘違いをしていた事に気付きつつありました。
坂之上は、確かに天才です。BIG3でも飛び抜けた能力があります。今まで、数々の賞レースでも坂之上は優勝しています。世界的にも有名な人物です。そんな彼女に、もしかすると勝ったかもしれないですし、最低でも五分くらいだったと自覚していました。
そんな彼女が、同学年で勝てない人間がいるのか?
いるはずです。既に私達から見れば天上人である息子さんですら闘志を滾らせ、あの先生ですら、才能という枠を超えていると言い切る人物。
三津谷 朋。
でも、そんな人間が、私などを相手にするのでしょうか?
いや、する! 絶対!
根拠など何もありません。でも、こう直感したのです。
彼女風に言えば、
「なぜなら、私がそう言ったから」
ゾッと背中が震えた。
私は、昨日、怪物に出会いました。
とてつもなく賢い人で、言葉の全てが理解できなくて、それでも意味は分かったような気がするように説明してくれる人。
明らかに私の知能を超えていて、果てしないほど……。
これでも勉強や人生経験値には自信があった方ですが、彼女を前にすると、まるで無知な赤子のようになってしまいました。私が、何も知らない馬鹿でしか無いと自覚させられました。
何をどう学んでも、一生、この人には追い付かない。
そう、感じさせた化物に、私は昨日出会っているのです。
この順番で良かった。
周囲の意見を纏めれば、三津谷朋という人間は、そうした次元の存在です。しかも、音楽という私の存在空域での化物です。
でも彼女は、数学とか、哲学とか、学問という空域での怪物です。ああいう人に、同じジャンルの怪物と出会う前に遭遇し、あまつさえ味方に付けているというのは、運が良かったと……。
……。
あぁ、そう……。
そういえば、もう既に言われていました。
「貴女は運がある。私に出会えたから」
とは、そういう事だったのです。
化物め。化物達の掌の上で転がされているようで気分は良くなかったのですが、私は、保健室のベッドの上で、冷静に、ふつふつと闘志を燃やす事ができたのです。
そう言えば、彼女、なんて名前なんだろう。
今更、そんな事を考えている程、冷静でした。
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